皆さん、ご機嫌よう! タカミックスです。今回は第二期ディープ・パープルの代表作である1972年3月に発売された『マシン・ヘッド』についてです。
それでは行ってみまShow!
目次
マシンのヘッド?
いや〜、アルバムタイトルからしてカッコ良くないですか? マシン(machine)のヘッド(head)ですぜ? 何てったってアルバムがライブでもオープニングナンバーとなったハイウェイ・スターから始まるんですもの。きっと英語の意味はバカでかいモンスターマシンなんかのエンジンのことなんだろうな?とか英語の分からない人間は思うのですよ。
しかし実際のマシン・ヘッドの意味はペグに使われている歯車のことなんですね。ギターやベース、コントラバス等の弦楽器の糸巻きに使われている歯車です。ただバイオリンの場合は同じ弦楽器でも歯車を使ってないのでマシン・ヘッドは使われていません。
永らく純粋な少年だったタカミックスは(今でも少年の心は持っている)トップクラスの化け物エンジンのことだと思い込んでましたよ。
レコードジャケットには載っていた
とは言え少年タカミックスがマシン・ヘッドを聞いた時(『見た』時か…)は気付かなかったのですが、実際レコードジャケットの裏にしっかりマシン・ヘッドの現物が写ってたんですよね。
それも歯車と分かりやすい様にベースペグの写真で! ギターでも良いのですが、ギター用のペグは歯車がカバーで覆われているのが多いので基本的に歯車が見えないんですよ。
ただマシン・ヘッドのアルバムカバーのデザインはベーシストであるロジャー・グローバーとディープ・パープルのマネージャーであるジョン・コレッタによる物なんだそうです。
なので歯車が見える見えないじゃなくて、デザインの発案者がベーシストだからベースの写真を使ったのか…?
録音環境
前作ファイアボールではドラムをスタジオの廊下で録音した所、面白い音響効果が生まれましたので今作マシン・ヘッドもレコーディングスタジオ以外での録音を試みました。
パープルファンであれば今更説明の必要もないと思うのですが、今作マシン・ヘッドは当初スイスのモントルーにあるカジノ・バリエール・ドゥ・モントルー、通称モントルー・カジノを貸し切り、ライブに近い形でのレコーディングが予定されていました。
しかし1971年12月4日、モントルー・カジノで開催されていたモントルー・ジャズテンフェスティバルに出演していたフランク・ザッパ・アンド・マザーズ・オブ・インヴェンションのコンサートにて、偏執的ファンが隠し持っていた信号拳銃を天井に向けて打っ放し、着弾した天井から炎がアッという間に燃え広がり、建物全体(日本武道館を丸ごとくらい)を焼き尽くすと言う大惨事に発展してしまったのです!
天井に着弾した程度で火が一気に燃え広がるか? と疑問もあるでしょうが、この天井が何と竹製の天井だったんですね。なので一般のコンサート会場の様な石膏ボードとかを使った天井ではなかったのです。
この火事によってレコーディング予定地であったモントルー・カジノを失ったディープ・パープルですが、レコーディング予定日を変更する訳にも行きませんでした。
なのでディープ・パープル側は急遽パビリオン劇場を貸し切りレコーディングを行うこととなりました。が、ここで近隣住民がディープ・パープル側の余りに爆音のレコーディングに対しクレームを入れ、警察まで介入する始末となってしまいました。
もっともディープ・パープルのレコーディングの時間帯は午前3時からとか凄まじい時間帯に始まるので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれません。この様なクレームが入ったことによりディープ・パープルはパビリオン劇場でのレコーディングを諦めることとなったのです。
そして再々度のレコーディング場所は古い空きホテルとなり、真冬の凍える様な寒さの中、暖房も効かないホテルの廊下でのレコーディングとなったのでした。
モービル・ユニット
このレコーディング時にローリング・ストーンズが使用してたレコーディング機材一式を積んだ移動式録音機材を装備したトレーラー、モービル・ユニットを借りて録音された、とあります。
これは決してレコーディング場所が変更になったためにモービル・ユニットを借りた訳ではなく、録音場所の変更に拘らずモービル・ユニットを使用して録音は行われていたのでした。
この移動式録音スタジオであるモービル・ユニットなのですが、当時の録音事情を知らない人には移動式と聞いて簡易的なスタジオを想像しまいがちです。
しかし実際は本格的な機材を積んだレコーディングスタジオで、このモービル・ユニットからは数々の名盤が生み出されております。ディープ・パープルの代表作でもあるマシン・ヘッドは元より、なんとレッド・ツェッペリンの『レッド・ツェッペリンⅣ』もモービル・ユニットを使いレコーディングされたアルバムなのです。
信号拳銃について
ここで信号拳銃、フレアーガンについてなんですが、あんまり銃火器に詳しくない人間からすると信号拳銃って運動会で使ってる号砲のこと? とか思う人もいるそうですが、とんでもない!
基本的に空に向けて発砲するの信号拳銃ですが、万が一人や物に着弾したら火が点きます。
信号拳銃とは救難用、救難信号拳銃です。なので山や海で遭難した人が捜索に当たっている空の航空機等に自分の居場所を知らせるため、照明弾や採光弾を撃ち放つ銃なのです。
信号拳銃は天候や銃の性能によって効果が左右されますが、昼間でも新宿駅から発砲された信号拳銃は渋谷駅からでも確認できるそうです。
実際に戦時中、相対した敵兵に信号拳銃を発砲し、着弾した兵士が火に包まれた亡くなられています。
実際の火元は?
これ、実際の火元はフレアーガンじゃなくて火炎放射器だったのでは? と言われたこともありました。しかし火炎放射器の可能性は限りなく低いです。何故ならフランク・ザッパ・アンド・マザーズ・オブ・インヴェンションのコンサートを、何とイアン・ギランが客として見ており、現場証言をしていたからです。
おそらくイアン・ギランはレコーディング会場の下見を兼ねてコンサートを見ていたのだと思います。実際ディープ・パープル側はライブ並みの音量でレコーディングするバンドなのでフランク・ザッパ・アンド・マザーズ・オブ・インヴェンションのライブを見るのは丁度良かったのでしょう。
では実際のイアン・ギランの発言です。
「誰かが俺の後ろからフレア・ガンを打ちやがった! 小さな炎の固まりが2つホールの中を飛んで行き、天井にぶつかったんだよ。大したことないだろうな? と思ってたら、フ○ッキン! アッという間に炎が燃え広がり辺り一面火の海さ!」
まぁ、イアン・ギランの証言はこんな感じなんですが、小さな炎の固まりと言うからには火炎放射器ではないでしょう。とは言えイアン・ギラン含め、証言を照らし合わせると火元が信号拳銃だったであろうと言われてるだけで、誰も直接火元を見ていないんですよ。
なので火事の原因が信号拳銃だったかどうかも分かっていない!
別の検証では火事の原因は偏執的ファンが打っ放したローマン・キャンドル説もあるんです。ローマン・キャンドルとは花火の乱玉のことです。
個人的にはライブ会場に信号拳銃なんか持ち込むか? とも思っているので、ローマン・キャンドルの方がバカ騒ぎしたい偏執的ファンが持ち込んだ説の方が有り得る話かな? とは思うんですけどね。
ただローマン・キャンドルで2発のみってあるのかなぁ…
レコーディングは順調?
マシン・ヘッドはレコーディング前からの紆余曲折を経て、寒風吹きすさぶホテルでのレコーディングとなりました。このマシン・ヘッドはレコーディングスケジュールの都合もあり、曲作りも含め24日間で終了したそうです。
シングルカット曲
マシン・ヘッドからシングル・カットされる曲は最初はネヴァー・ビフォアのみの予定でした。
ディープ・パープルはマシンヘッドの、いわゆるアルバムのA面にあたる曲ではハイウェイ・スター以外は殆どライブで演奏されないまま終わっております。そんな演奏されなかった曲の一つがネヴァー・ビフォアです。
ネヴァー・ビフォア
まぁ、確かにこの曲はディープ・パープルの中でもポップと言うか、なんちゅうか本中華(by大橋巨泉)、イアン・ギランの力が抜けた歌い方とか、悪くはないのですが表現し辛い曲ですね。
ハイウェイ・スター?
なおディープ・パープルを代表する曲の一つであるハイウェイ・スターもシングル・カットされています。と、言いたい所ですが、この曲のシングル・カットは日本のみです。理由については如何せん曲が長い!
シングル曲はプロモーションするためにラジオやテレビでオンエアする必要があります。その際の標準的な曲の長さが3〜4分程度が限界と言われているからです。なので日本以外の国ではシングル・カットされなかったのです。
スモーク・オン・ザ・ウォーター
では、もう一つディープ・パープルの代表曲であるスモーク・オン・ザ・ウォーターですが、この曲も5分40秒とラジオやテレビ向けではありませんがシングルカットされています。では何故シングルカットの予定がなかったスモーク・オン・ザ・ウォーターが選ばれたのかと言うと、アメリカでラジオ局のDJがこの曲を気に入って頻繁にラジオで流したことがキッカケで曲の人気が出たらしいんですね。
そしてラジオ局経由で人気に火が付きシングルカットされたスモーク・オン・ザ・ウォーターですが、何とソロとエンディングがバッサリとカットされてます。シングル盤は3分50秒弱の長さと、まさに今流行りの「ギターソロ飛ばす問題」を先駆けております(絶対違う!)。
数合わせ? スモーク・オン・ザ・ウォーター
そんなスモーク・オン・ザ・ウォーターですが、マシン・ヘッドに収録された曲の中では最後に数合わせで作られた曲でした。
ロジャー・グローバーがスモーク・オン・ザ・ウォーターって思い付いたんだけど… とイアン・ギランに伝えると「何だ、そりゃ? ドラックの歌か?」と言われたとか。
するとロジャー・グローバーは俺達はジャンキーじゃないだろ? 俺達がはまってるのはアルコールだ! と言い返したとか。
こんな感じで数合わせで作られたスモーク・オン・ザ・ウォーターでしたが、前述のモントルーカジノの事件をそのまま歌詞とし、ギター、キーボード&ドラム、ベース、ボーカルと徐々にアンサンブルを重ねられて行く曲です。
ただし当時のディープ・パープルにとってスモーク・オン・ザ・ウォーターはあくまで数合わせのために作られた曲であり、ライブのセットリストにすら入っていませんでした。
それがギタリストが試し弾きでプレイする曲にまで有名になるとは思わなかったでしょう。
スモーク・オン・ザ・ウォーターの発売日
さて、数合わせで作られたスモーク・オン・ザ・ウォーターですが、アメリカのラジオ局を通して人気が出ており、実際にアメリカでシングル・カットされて発売されたのは何時なのでしょうか?
何とコレがマシン・ヘッドが発売されてから1年2ヶ月後の1973年の5月なんですね。
しかもマシン・ヘッド後のスタジオ・アルバム『紫の肖像』よりも2ヶ月遅れの発売なのです。まさかの現行アルバムからではなく、前アルバムからのシングル・カットと言う現代ではちょっと考えられないことをしております。
それでもスモーク・オン・ザ・ウォーターはロックファンだけではなく、一般リスナーの魅力も得て、アメリカチャートの初登場85位から2ヶ月後には最高4位と売り上げを伸ばし、最終的はにゴールドディスクを獲得しております。
なお本国イギリスでスモーク・オン・ザ・ウォーターがシングルカットされたのは1977年のことでした。※因みに1977年は既にディープ・パープルは1回目の解散をしております。
シャッフルとリッチー・ブラックモア 〜 レイジー
さて、リッチー・ブラックモアと言えばシャッフルを連想する人も多いでしょう。
有名な話だとディープ・パープルを脱退したリッチー・ブラックモアが結成したレインボーのドラムオーディションに現れたコージー・パウエルですかね。
彼に対しリッチー・ブラックモアは「シャッフルを叩いてくれ」と言い、コージー・パウエルは延々20分以上もシャッフルを叩き続けたそうです。いつまで経っても終わらないシャッフルに対しコージー・パウエルが「いい加減にしろ!」とリッチー・ブラックモアにキレて怒鳴り付けたんだとか。
そんなコージー・パウエルにキレられるくらいリッチー・ブラックモアはシャッフルを大事にしているのです。シャッフルとはリズムパターンの一種で所謂ハネるリズムのことです。
で、意外とシャッフルのドラミングって叩けない人は叩けないんですよ。
音楽に詳しくなくても知ってる有名なドラマーだと某バンドの人、彼はドラマーでありながらクラシックピアノの出身で、作詞作曲にオーケストラの譜面も書き、タクトまで振ります。またバンドに置いても自分のドラムを含めて全て譜面に起こしてから演奏する人です。
が、彼は全くシャッフルが叩けない! メジャーデビューのアルバムにシャッフル曲があったのですが、全弾フルスイング(シャッフルは強弱が命なのだ)で少しもシャッフルしてないと言う… 敢えて誰とは言いませんがね…(けどタカミックスは全曲持ってたりします)
そんなシャッフルの曲にレイジーがあります。
ボーカルパートが滅法少ないレイジーですが、イアン・ギランはハーモニカでソロを取っていますね。
リッチー・ブラックモアが言うには、エリック・クラプトンのクラプトンの『ステッピン・アウト』を基礎にして曲作りをしたんだとか。
この曲を参考にしたと言われてみれば「分からなくもない」程度の感想で、参考よりもインスパイアされた、と言うのが正解の様な気がしますね。
宇宙のトラック野郎
マシン・ヘッドのラストを飾るのは『スペース・トラッキン』です。この曲中でのソロなんだか間奏なんだか分からないギターとドラムが好きです。ライブではスピード&パワーがアップした間奏なんだかソロなんだか分からないギターとドラムが聴けます(笑)。
で、タカミックスはこのスペース・トラッキンが大好きです!
ただし… まとめ
皆さん、ハードロックの入門編としてマシン・ヘッドはオススメです。ただし中には「マシン・ヘッド? 聞いてみたけど、言われる程良いか? 音も凄くないし…」との感想を持つ方も結構おられます。
これはある意味当たっています(実はタカミックスもそう思ってたからだ)。何故ならディープ・パープル、それも特に第二期ディープ・パープルはライブでこそ魅力を発揮するバンドだからです。
そのライブの魅力を十二分に詰め込んだアルバムが、あのディープ・パープルのメンバーですら出したくないよ、と思っていたライブ・アルバム『ライブ・イン・ジャパン』なのです。
ライブ・イン・ジャパンはアルバム全7曲中の4曲がマシン・ヘッドのナンバーです。
なのでライブ・イン・ジャパンの予習という意味でも、マシン・ヘッドはオススメのアルバムです。もっともライブ・イン・ジャパンの予習でなくともマシン・ヘッドがオススメのアルバムあるのは変わらないで是非ご一聴を!