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意外と早かったリッチー脱退話 〜 ファイアボール

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 皆さん、ご機嫌よう! タカミックスです。今回は1971年7月に発売された第2期ディープ・パープルのスタジオアルバム2作目となる『ファイアボール』についてです。

 それでは行ってみまShow!

これでベストデザイン賞?

 その前にですね、このファイアボールのアルバムカバーなんですが、ニュー・ミュージカル・エキスプレス紙でベスト・デザイン・ナンバー・ワン・アルバム賞を獲得してるんですよ。

 これはレコードを入れてるレコードジャケットのデザイン性を評価する賞であります。

 今や配信がメインの音楽業界ですが当時の音楽媒体はレコードです。このアルバムであるLPレコードのサイズが30cmで、それを梱包するレコードジャケットのサイズは31cmから35cmくらいになります。

 昔はジャケ買いと言ってジャケットを見てレコードを買うという文化もあった程です。なのでレコードにおけるジャケットというのも非常に重要なファクターでありました。

確かにデカイ…

 そんな重要なポジションを占めていたレコードジャケットですが、このファイアボールのジャケットが素晴らしい! とのことでベスト・デザイン・ナンバー・ワン・アルバム賞が授与されたのでした。

ニュー・ミュージカル・エキスプレス紙

 またニュー・ミュージカル・エキスプレス紙と聞いてピンと来ない人も多いでしょうが、ここは音楽メディアとして世界的な影響力を誇る癖に、正式名称の認知度が極端に低い(笑)NEMのことです。なのでいい加減な団体どころか権威ある団体に認められたアルバムジャケットのベストデザイン賞なんですよね。

 〜ん、それでもタカミックスにはファイアボールのジャケットの良さが分からんのですよ…

制作過程について

 このファイアボールですが、前作ディープ・パープル・イン・ロックのヒットによって人気バンドとなり、忙しくなった全国ツアーの合間を縫ってレコーディングされたアルバムでした。当時のディープ・パープルはレコード会社との契約で1年に2枚のアルバムを出さねばいけない状態だったのです。

 この様な制作過程であったので、第2期ディープ・パープルのメンバーからファイアボールは一様に嫌われております。唯一イアン・ギランだけがファイアボールを気に入ってるとのことです。

 なおファイヤアボールが完成した直後、リッチー・ブラックモアはディープ・パープルから脱退したいと言い出したほどです。

 後年音楽性の違いで脱退したリッチー・ブラックモですが、ファイアボールの時点でバンド脱退の話は出ていたのです。リッチー・ブラックモアは忙しいツアーの合間を縫ってレコーディングしたファイアボールに対し、満足な作曲もギタープレイもできずにストレスとなっていたのでしょう。

 こう考えると堪え性がないリッチー・ブラックモアの性格って、この頃から頭角を表し始めていたのですね。

だが英国初のチャート1位

 そんな制作過程も含めてメンバーに嫌われているファイアボールですが、皮肉なことにイギリスのチャートではバンド史上初のチャート1位を記録しています。また米国のチャートでも32位にランクインするなど、米国でも健闘したアルバムとなっております。

ストレンジ・ウーマン?

 そんなファイアボールですが、ライブでは結構使われている曲があります。当時のライブではイアン・ペイスのドラムソロで使われていた『らば(分かり辛いな『ミュール』のことです)』や、ライブでは重要なポジションを占めたナンバーである『ストレンジ・ウーマン』が収録されています。

 と、言いたい所ですが、ストレンジ・ウーマンが入っているのは日本と米国だけなんですね。本国イギリスではストレンジ・ウーマンではなく『デモンズ・アイ』が収められています。

デモンズ・アイ

 これは当時ファイアボールの前に既にストレンジ・ウーマンがシングル盤として発売されていたことが影響しています。

 ブラック・ナイトの次にアルバムの先行シングル盤として発売されたストレンジ・ウーマンですが、ヒットしたのはイギリス国内のみ! アメリカや日本ではチャートインすらしていません。

 しかしストレンジ・ウーマンは第2期ディープ・パープルにとって重要な楽曲となります。曲のラストでのイアン・ギランとリッチー・ブラックモアのボーカルとギターの掛け合い、特にイアン・ギランの人外なシャウトが聴たりする魅力たっぷりのナンバーです。それらを考慮し、当時の日本とアメリカでネームバリューのないストレンジ・ウーマンをアルバム曲として収録された様です。

ストレンジ・ウーマン

イアン・ギランの歌唱力

 話を戻してバンドメンバーから一様に嫌われているファイアボールですが、唯一このアルバムが気に入ってると言ったのがイアン・ギランです。

 その理由はファイアボールのボーカルスタイルにあるのでは? と思われます。イアン・ギランと言うとパワーシャウターを連想する人が多いでしょう。しかしイアン・ギランは歌唱力があるボーカリストです。

 良くイアン・ギランは歌唱力が低いのをスクリームで誤魔化してるとか言われますが全然違いますよ!

 イアン・ギランはディープ・パープルでは歌いませんが、カントリーやオールディーズの曲でも非常に味わい深い歌を聴かせてくれるシンガー(イアン・ギランは自分をボーカリストではなくシンガーと言う)です。1976年に結成したイアン・ギラン・バンドなんかはジャズ・ロック・バンドですしね。

 タカミックスはイアン・ギランにはハードロックよりオールディーズのロックンロール・シンガーの方が合ってるんじゃないか? と思っているくらいです。

 そんなイアン・ギランにとって今回のファイアボールではシャウトこそあれど、意外と歌いこむ系統の楽曲が多く感じるのです。その辺がイアン・ギランがファイアボールを気に入っている理由なのではないでしょうか?

 決してファイアボール以外のアルバムで歌いこむ曲がない、という訳でもないですけどね…

ファイアボール

 アルバムのオープニングを飾る楽曲はツーバスのドラミングから始まるアルバムタイトル曲でもある『ファイアボール』です。

ファイアボール 当て振りなのでワンバス

 この曲は録音時に隣のレコーディングスタジオに居合わせたザ・フーのツーバス使いのドラマーであった 壊し屋 キース・ムーンのドラムセットを借用してレコーディングされた曲です。

ワンバスとツーバス

 イアン・ペイス自身はファイアボールでのドラムに対して「あの程度のスピードならワンバスで叩けないこともないんだけどね」とサラッと恐ろしことを言ってたりもします。

 イアン・ペイスは左利きのドラマーで、ワンバスのドラムセットを使用しています。イアン・ペイスは非常にスピーディーなドラマーで、ワンバスでも速いペダル・ワークを誇ります。なのでイアン・ペイスはファイアボールをワンバスで叩けないこともなかったのですが、ワンバスだと音量が低くなってしまうので借りてきたツーバスでプレイしたんだ、と答えております。

 そんなファイアボールは第2期ディープ・パープル唯一のツーバス曲なので、アルバムには収録できてもライブのセットリストに組み込むことはできませんでした。なので第2期ディープ・パープルがファイアボールを演奏する時はアンコール曲としてのみの演奏だった模様です。

 因みに冒頭の「ガー」と言う効果音はエアコンのコンプレッサーが起動する音だそうです。

ツインペダル

 ファイアボールのレコーディング当時、既にツインペダルは発明されていました。しかしツインペダルは市民権を得ていない時代でした。なのでイアン・ペイスもツインペダルがメジャーになってから、ディープ・パープルのライブではなく、ジャム・セッション等で稀にファイアボールのイントロをツインペダルで演奏していたこともあった様です。

ノー・ノー・ノー

 ハードな曲でオープニングナンバーを飾ったアルバム、ファイアボールですが当時のファンは2曲目で肩透かしを食らいます。それが『ノー・ノー・ノー』です。

ノー・ノー・ノー

 別に曲に対する批判よりも、ハードロックバンドが2曲目に収録する曲じゃないだろ? と言った批判が多かったのです。

 ハードロックバンドが2曲目に収録する曲じゃない、と言うのは所謂ファンキーな曲作りなんですよ。今のディープ・パープルにとっては「これでファンキー?」と思われるでしょうが、当時のファンからすれば充分にファンキーな曲作りだったんですね。

誰かの娘

 そしてアルバム4曲目に入っているのは『誰かの娘』です。

 何だコレ、カントリーソングか?

誰かの娘

 しかし前作イン・ロックにてハードロックスタイルに方向転換したのに、良くこの曲をアルバムに納めたなと思います。イアン・ペイスなんかタンバリン叩いてるし。

 タカミックスはこの手の曲は大好きなんですが、この曲も当時はバンドに合わないと偉い文句言われたそうです。

B面

 LPレコードであればB面に当たる5曲目の『らば』からは第2期ディープ・パープルっぽい曲が続く様になります。

 現在は配信がメインなのでアルバムはズラッと曲が並びますが、当時のレコードではA面B面でアルバムカラーを変えると言うのは意外と使われていた手法でした。

 ただLPレコードのA面に並んだ曲が第2期ディープ・パープルっぽくないとの理由でファイアボールのアルバムとしての評価は余り高くはなかったのでした。

録音彼是 〜 反響音

 どんなバンドでも録音時のトラブルは付き物です。そしてアルバム、ファイアボールも録音時のトラブルがありました。

 特にドラムのイアン・ペイスはスタジオ内でのドラム反響音に納得いかず、何とスタジオの廊下にドラムセットを持ち出し、ドラムパートを再録音したそうです。

 この話って実際のレコーディングスタジオでの録音経験者でないと理解し辛い物なんですけど(タカミックスも一往は録音スタジオでのレコーディング経験がある)、反響音って結構重要なんですね。たかがスタジオって問題ではないんですよ。

 ギターやベースはアンプを介在して音が出ます。極端な話ですがギターであればエフェクターでリバーブ等を掛けたり、アンプを通すことで出音の調整ができます。

 そして出音をマイクで拾ってミキシング等を行い録音するのです。

エフェクターやギターアンプ等、介在する物があるので出音を弄れる。

 しかしドラムは違います。マイクで介在する物がないまま、直接生の音を拾うのです。なのでエフェクターやミキシング等で調節できないまま、ダイレクトに生音の録音となります。

ドラムは生音を介在する物がないので出音弄れない

 それらを考えるとイアン・ペイスがスタジオの廊下へドラムセットを持ち出し、おそらく反響音を考慮してドラミングしたのが分かる気がします。

反響音

まとめ

 アルバム、ファイアボールは売り上げこそ前作より良かった物の、第2期ディープ・パープルのメンバー及びレコード会社等を含む関係者は(イアン・ギラン除く)一様にアルバムの出来に不満を感じていました。

 なのでアルバム制作での反省点を活かし、次アルバムはよりハードな作品を作ろうと考えたのです。それが第2期ディープ・パープルの代名詞とも言えるアルバム『マシン・ヘッド』となるのです。

 とは言えフラットな視点で見ると(聴くと、か…)第2期ディープ・パープルのファイアボールは非常に面白い作品であります。タカミックスの様にイアン・ギランの歌を楽しむには持ってこいのアルバムでもあります。

 次回は第2期ディープ・パープルの代名詞とも言えるアルバム、『マシン・ヘッド』についてです。

つづく

      マシンヘッド
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