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ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ

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 皆さん、ご機嫌よう! タカミックスです。

 今回は第2期ディープ・パープルとしてライブ盤ですが最初のアルバムとなる『ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』についてです。

 最後にこのアルバムの見解もありますので、それでは行ってみまShow!

ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ

 第2期ディープ・パープル最初のアルバムはオーケストラとの共演となるライブ版『ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』になります。このアルバムカバーを良く見るとホールの客席に第2期ディープ・パープルのメンバーが座っております。

 このオーケストラとの共演は1969年の9月にライブレコーディングで行われました。そしてディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラの発売は同年12月となります。

 アルバムでの演奏はロックバンドの曲にオーケストラを被せたのではなく、ジョン・ロードが作曲したクラシック曲をオーケストラが演奏する形態となっています。内容は合奏協奏曲、協奏交響曲、管弦楽のための協奏曲の3楽章からなり、譜面の全てはジョン・ロードのペンによる曲となっております。

 オーケストラの団員はロックバンドとの共演に乗り気ではなかったそうですが、指揮者であるマルコム・アーノルドは偉い乗り気で、バンドとの共演に消極的な団員を叱り飛ばしたと聞きます。

 このアルバムは観客を前にした世界初のロックバンドとオーケストラの共演とか色々評価はあるのですが、純然な音楽アルバムとしての評価は微妙な所です。

ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ

リッチー・ブラックモアの本音

 この時のオーケストラの共演に関し、後年リッチー・ブラックモアは乗り気ではなかった旨を伝えています。このアルバムはジョン・ロードとオーケストラと共演をする代わり、自分本位のハードロックアルバムを作らせて貰う約束をしていた手前、仕方なく参加したが二度とやりたくないと語っています。

アルバムの評価は?

 肝心のディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラの評価はどうだったのでしょうか?

 実際にアルバムはディープ・パープルとして初めてイギリスでチャートインし、26位と言う快挙を成し遂げています。

 ではアメリカのチャートではどうだったかと言うと、これが芳しくない出来で何とチャート圏外と散々な結果となっています。もっともオーケストラとの共演はリスナー側が何を求めているのか? と言う国民性も関係しているのかな、とも思います。

 なので迂闊なことは言えませんが、イギリスでBBCの持ちかけからロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共演したので、イギリスでの評価が高いのではないでしょうか?

 そして第2期ディープ・パープルはディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラからアメリカとイギリスでのヒットチャートの売上が逆転してしまう現象が起きてしまうのです(ライブ・イン・ジャパンは除く)

 話を戻してディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラがイギリスで初のチャートインしたので第2期ディープ・パープルの評価が上がったのか? と言えば決して、その様なことはありませんでした。

 あくまでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共演したバンドと言う物珍しさから話題になったのであり、第2期ディープ・パープルの音楽性が評価された訳ではなかったのです。

 また偏見になってしまうのですが、ロックミュージックを聴く人間、いわゆるリスナーがクラシックミュージックに対する造詣があるのか? と言う疑問点もあります。

 ロックもクラシックも同じ音楽ではありますが、料理に例えるならラフな格好で河川敷で食べる豚汁とフォーマルな格好で食事に行くフレンチの様な違いがあると思います。これは決してどちらが優れていると言うことではなく、同じ音符を扱う音楽で括られていても中身は違いますよと言う話なのです。

アルバムの見解 〜 バンドとオーケストラの違い

 僭越ながら一往はクラシックを学んでいたタカミックスの見解を述べたいと思います。このアルバムはロックとクラシックの共演、もしくは融合と言われてますが、実際はロックとクラシックを並列させただけです。

 元来ロックバンドに限らずバンド形態というのはオーケストラと合わない物なのです。何故なら楽器の発音形態が違うからです。まずギター、ベース共に撥弦楽器であるため音が出る前に弦を撥く(はじく)ので必ずアタック音が入ります。なので必ず打撃音があるのです。そしてドラムも打楽器なのでブラシで擦る以外は必ずアタック音によって音を出します。

 純粋な意味でのアタック音と定義は違いますが、ここでは分かりやすくアタック音 = 鳴らした音の最大音量と捉えて下さい。

 ではオーケストラで使われているギターと同じ弦楽器であるバイオリンやコントラバス等はどうなのか? となりますがバイオリン等は自励振動と言って弓による摩擦によって音を出しています。

 バイオリン等でもピチカート奏法と言って指で弦を撥く場合もありますが、それを言ったらギターもボリュームペダル奏法やバイオリンの弓を使ったボウイング奏法でアタック音を出さずに音量を調節する奏法があります。この場合どちらも飛び道具みたいな奏法なので一般的な演奏方法ではありませんので除外します。

ピチカート奏法
ボウイング奏法

 話を戻して自励振動であれば1音によるロングトーンを小さい音から入っても弓での摩擦を強くしていけば摩擦の強さに比例して音も大きくなっていきます。しかしギター等の撥弦楽器はアタック音が音量を決めてしまうので1音によるロングトーンのボリュームを徐々に上げて行くことはできません。

 だったらオーケストラが撥弦楽器に合わせた曲を作れないの? となりそうですが、ここでオーケストラの編成を考えてみましょう。オーケストラの編成は詳しくは省きますが木管、金管、打楽器、弦楽器となります。弦楽器と言っても撥弦楽器ではなく自励振動によって音を出しているヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスになります。

 早い話がオーケストラの編成はどの楽器でもロングトーン内で音量の調節ができる楽器なのです。なのでギターの様な撥弦楽器が入ると撥弦楽器の音がオーケストラの各楽器の音を掻き消してしまうのです。これでは撥弦楽器に合わせた曲を作れと言われても、耳の鼓膜が減衰の強烈なアタック音がある撥弦楽器の方をオーケストラの各楽器よりも先に捉えてしまうので難しいのです。

 またオーケストラにおける打楽器は基本ティンパニですが、バンドのドラムの様に四六時中音を鳴らしている訳ではないのです。

 ここで唯一バンドサウンドにもあってオーケストラでも使われることのある楽器が鍵盤楽器になります。オルガンとオーケストラの作品もありますので、ジョン・ロード的には自分のオルガンパートの譜面は描きやすかったのでは? と思われます。

サン=サーンス : 交響曲 第3番 ハ短調 Op.78 オルガン付き

 しかしバンドパートのバックで流れるオーケストラの譜面となると正直オーケストラがあってもなくても大差ない響きに聞こえてしまします。

これが間違いなく1番分かりやすい評価

 そしてコレが評価の全てなのでは? と思える意見があります。その意見とはこのアルバムの評価がクラシック関係者から一切聞こえないことです。

 決してロックとクラシックを聴く層の違いを語りたい訳ではないのですが、もしディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラが素晴らしい作品であるならば、間違いなくクラシック界隈の人間からの評価もあるはずなのです。

 しかしディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラに対するクラシック業界からの評価は聞こえてきません。

 これと似た話ですとレッド・ツェッペリンの『天国への階段』に対し、楽壇の帝王と呼ばれた指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが「これ以上のアレンジを必要としない名曲」と評価した、との話があります。

 が、コレも一切クラシック界隈の人間からは聞いたことがない出所不明の話なのです。

ジョン・ロードの気持ち

 ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラでクラシックとロックを融合させようとしたジョン・ロードの気持ちは分かります。音楽をする人間はどこかクラシックをロックよりも高貴な物と捉えがちです。元々音楽として意図している物が違うのでジャンル分けされているのですが、世間は同じ『音楽』と言うカテゴリーで捉えてしまいます。

 ジョン・ロード自身はオーケストラとの共演により、自分のプレイスタイルのアレンジの幅は広がった物と思います。持ち合わせていたクラシックへの素養がバンドとオーケストラの譜面を書くことによって更に理解が深まったことでしょう。

 なのでプレイヤーとしてのジョン・ロードにとってオーケストラとの共演は決して無駄ではなかったのです。

リッチー・ブラックモアの気持ち

 反対にリッチー・ブラックモアは物珍しさからくる興味本位の作品と答えてることからも、おそらくジョン・ロードのペンによる譜面を渡されただけのギターパートについて、リッチー・ブラックモアは意義を見出せなかった様に感じます。

 ただしリッチー・ブラックモアはディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラに参加したことにより、己のミュージシャン生命を賭けたハード・ロックアルバムの作成に取り掛かることができたのです。

つづく

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