皆さん、ご機嫌よう! タカミックスです。
今回は第2期ディープ・パープルとして実質1枚目のアルバムである1970年6月に発売された『ディープ・パープル・イン・ロック』についてです。
それでは行ってみまShow!
目次
アートロックからハードロックへ
リッチーが主体で作曲を担当した第2期ディープ・パープルのアルバム『ディープ・パープル・イン・ロック(以下イン・ロック)』ですが、実際のレコーディングはオーケストラ共演前の1969年の8月から行われていました。
イン・ロック以降のアルバムについては発売のタイムスケジュールを見ると分かることなのですが、1976年までのディープ・パープルはワーナー・ブラザース・レコードとの契約の際、1年に2枚のアルバムを出さねばならないと言う契約条項があったのです。
なのでワーナー・ブラザーズ・レコード時代のパープルはツアーの合間にレコーディングをしなくてはならず、ディープ・パープルのメンバーは納得の行くアルバム制作ができなかったのです。
しかし、イン・ロックに限っては、ハードロック・アルバムを制作できるリッチー・ブラックモアの入れ込みようは半端なく、全勢力を注ぎ込んだガチのガチで制作されたアルバムであったのです。
イラン・ギランは我水を得た魚(うお)なり! と叫びまくり(フハハハ… と笑いまでする)、白玉キーボーディストと言われながらも時に激しく、時に穏やかにハモンドオルガンを操るジョン・ロード!
そしてエレキギターをかき鳴らすリッチー・ブラックモア!
この3人のプレイがイン・ロックを輝かせ、このアルバムは発売後、あれよあれよと売り上げを伸ばしました。最終的にイギリスのアルバムチャートでは4位を記録しました。
当時の第2期ディープ・パープルはアメリカよりも本国イギリスの方が知名度がありませんでした。なのでイギリスでの知名度を上げるため、イギリス国内を隈なくツアーした結果がアルバムセールスの好調に繋がったそうです。
そのせいかアメリカではチャートでは143位と全く振るいませんでした。
プロモーション用シングル、ブラック・ナイトを同時発売
第2期ディープ・パープルはレコード会社側から、イン・ロックのプロモーション用にシングル盤を出せと言われました。
アルバムのプロモーション用と言われてもピンとこないかもしれませんが、当時の時代背景としてアルバムの宣伝するならラジオやテレビでのオンエアが必要でありました。
ラジオやテレビでオンエアを考えると、イン・ロック内の曲には一般視聴者の耳に残る様なポピュラリティーのある作品がなかったのです。それでレコード会社がアルバムのプロモーション用に、と第2期ディープ・パープルに新たなシングル盤の製作を提案したのです。
しかし、第2期ディープ・パープル側はレコード会社から新たにシングル盤のレコーディングをしろと声をかけられた時点でイン・ロックのレコーディングは終わっております。そんな中でもレコード会社からの要請に対し、第2期ディープ・パープルは更に2曲を追加してレコーディングを行います。
最初に録音されたのはクライフリーと言う曲でしたが、シングル盤としてはボツとなりました。
そしてジョン・ロード曰くパブで飲んだくれて作った曲、リッチー・ブラックモア曰くリッキー・ネルソンの『サマータイム』をパクった曲である『ブラック・ナイト』ができあがり、1970年6月にアルバムと同日にシングル盤として発売されたのです。
テレビやラジオでオンエアされたブラック・ナイトはイギリスのチャートで2位に食い込むヒットを記録しました。ハード・ロックの体裁を取るバンドでのヒットシングルが珍しかった時代です。
しかし、発売後に一部のファンからはサマータイムのリフパクってんじゃん! とか、この曲ブルース・マグースの『恋する青春(We Ain’t Got Nothin’ Yet)』と同じじゃねぇか? と至極ごもっともな指摘を受けておりました。
晴れてハードロックバンドへ方向転換!
アルバムのプロモーションシングルとして発売されたブラック・ナイトのヒットと併せ、イン・ロックもヒットしました。
確かに第1期ディープ・パープルのハッシュもシングル盤として全米4位とヒットしましたが、今回はシングル、アルバム共にのヒットです。
このイン・ロックのアルバムコンセプトは第2期ディープ・パープルが掲げる反ドラックと、外向的な確かな実力に伴うハードなプレイスタイルによって今まで第2期ディープ・パープルに見向きもしなかった人達をとりこにしました。
イン・ロックもヒットしコンサートも大盛況! イアン・ギランのシャウトにリッチー・ブラックモアのギタープレイに対して、ジョン・ロードもハードロックバンドとしての第2期ディープ・パープルに確実な手応えを感じたのです。
そしてジョン・ロードは自分が行ってきたアートロック路線のプレイスタイルを封印し、イン・ロック以降のディープ・パープル内では自分のプレイもハードロックスタイル(鍵盤タッチや音色など)に変えて行くのでした。
何気に目立たないベース
高い演奏能力を誇るリッチー・ブラックモアとジョン・ロードが各々のソロを対立させ、ボーカルの叫び、何気にスピーディーに叩き続けるイアン・ペイス! そしてベースは、ベースは… え〜と、堅実にバンドのボトムを支えてます!(汗)
ロジャー・グローバー
第2期ディープ・パープルのベーシストであるロジャー・グローバー、彼はベースプレイヤーとしての特徴があまりない人なんですよね。
これ、語弊がありまくりなんですが、何か強烈な個性があるとか、凄いテクニシャンだとか、ファンキーなグルーブを持っているとか、ゴリゴリの特徴的なサウンドとかが一切ないんです。
が、とにかく堅実なプレイをするベースプレイヤーです。
ロジャー・グローバーはスピード感やグルーブを大事にし、ノリを崩さない様に弾くベーシストです。イン・ロックではグルーブ感ではなく、スピード感の方を重視して、前のめりに突っ込む感じでプレイをしています。
ロジャー・グローバーは基本ピック弾きの人ですが、稀に(ホントに極稀に)指も使います。が、基本ピック弾きの人と思って結構です。
このピック弾きのみで速い曲や静かな曲も堅実にプレイするのって結構難しいんですよね。指弾きと違ってピック弾きは指に比べるとピックを通しての力の強弱が付け辛く、どうしてもエッジの立った鋭角的な音になるからです。
それをどんな曲でも可もなく不可もなく弾くって結構大変なんですよ。決して貶しているのではなく、究極の没個性プレイヤーなんですね。
ちょっとだけ違うイギリス盤スピード・キング
さて、輝かしいアルバムであるイン・ロック一発目の曲は『スピード・キング』です。この曲は頭からリッチー・ブラックモアのギターとイアン・ギランのシャウト系ボーカルから始まって…
と言うのは日本版とアメリカ場合の話です。
実は本家イギリス盤では1分半くらいの前奏があるんです。
日本では、いきなりリッチー・ブラックモアとイアン・ギランで曲が始まり… と言われてましたが、イギリスでは結構長めの前奏があったのです。
スピード・キング
まぁ、スピード・キングなんですがタカミックスは『Doing Their Thing』と言うビデオ(まだビデオテープだった時代)でのスタジオライブの演奏を見たことあったんですね。
スタジオライブなので若干音質は劣るのですが、リッチー・ブラックモアの暴れ具合に驚きました。
チャイルド・イン・タイム
第2期ディープ・パープルの中での有名な曲の一つでもあるチャイルド・イン・タイム。
今では有名な話でリッチー・ブラックモア自身も「パクったんだ」と告白していますが、この曲は『イッツ・ア・ビューティフルデイ』と言うバンドの曲『ボンベイ・コーリング』を、そのまんまパクってます。
チャイルド・イン・タイムを聴いた時は、イアン・ギランの訴えかける様な叙情的な歌い方にシンガー(イアン・ギランは自分はシンガーだと強く主張する人です)としての大きさを感じましたが、これボンベイ・コーリングのメロディをなぞってるだけだったんですね。
まぁ、その後のシャウトはマジでビビりましたけど…
ES-335でのラストレコーディング曲
蛇足ですが、チャイルド・イン・タイムではリッチー・ブラックモア自身のトレードマークとなるフェンダーストラトキャスターにメインギターを乗り換える前、第1期ディープ・パープル時代に使っていたギブソンES-335でレコーディングを行った最後の曲となります。
フライト・オヴ・ザ・ラット
イン・ロックの4曲目に収録されている『フライト・オヴ・ザ・ラット』は個人的に大好きな曲です。曲後半でプレイされるギターのミュート気味のカッティングソロと、鍵盤をまとめて手のひらで叩きギターカッティングの様に聴かせるオルガンソロの対比が面白いです。
プロデューサーは誰?
このイン・ロックから、と言うか実際には『ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』からなのですが、プロデュースがディープ・パープルになっています。
これまでの第1期ディープ・パープル時代のプロデューサーはデレク・ローレンスであったので、サウンド面全てのイニシアチブを第2期ディープ・パープルが握ったこととなります。
イン・ロック成功後の第2期ディープ・パープル
ディープ・パープルにはリーダーというものが存在しませんが、第1期ディープ・パープルのサウンド面のイニシアチブはジョン・ロードが担っていました。
しかし、このイン・ロックからはリッチー・ブラックモアがサウンドのイニシアチブを握ることとなりました。
そしてハードロックバンドへとジャンル変更した第2期ディープ・パープルはイン・ロック発売後に怒涛の全国ツアーへ出ることとなったのです。
まとめ
これまでのアート・ロック路線から一気にプレイジャンルを変えた第二期ディープ・パープルのイン・ロックですが、その荒々しい曲の流れには一種の感動すら覚えます。
そんな第二期ディープ・パープルのイン・ロック。是非、御一聴を!
おしまい