前回の講座で、DTMに必要な機材は揃いましたね。では、早速曲作りを始めてみましょう!そうは言っても、何から手を付ければ良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで、最初のステップとしておすすめなのが、自分の好きな曲をDTMでコピーしてみることです。この方法はとても分かりやすく、気軽に始められます。
音楽制作やDTM、バンド活動において、日本では「曲をコピーする」という表現がよく使われます。
一方で、海外、特に英語圏の音楽制作では「コピー(copy)」という表現は一般的ではありません。「コピー」という言葉が「複製」や「盗作」を連想させ、不適切とされるためです。
日本で「コピー」と呼ばれる行為は、英語圏では「カバー(cover)」「リクリエイト(recreate)」「リプリケート(replicate)」などの表現が使われています。
なお、このブログでは分かりやすさを優先し、あえて「コピー」という表現を使用しています。
目次
既存曲のコピーで何が学べるのか?
皆さんが好きな音楽はなんですか?ロックですか?ヘビーメタルですか?ポップスですか?ダンスミュージックですか?
どんなジャンルでも良いのでDTMのはじめの一歩として、好きな既存曲をコピーしてみませんか?
せっかくDTMの機材を揃えたんだから、少しでも早く作曲したいと思うのは良く分かります。
しかし、それでも最初は既存の曲をコピーするのが作曲への近道だと思います。何より既存曲のコピーをすることで得られる利点を挙げてみたいと思います。
目標が明確で取り組みやすい
初心者にとって「1曲を完成させる」や「音色作り」といった抽象的な目標よりも、具体的に「この曲を再現する」というタスク(=目標)は取り組みやすく、ゴールが明確だからです。
実践的なスキルが身につく
既存曲をコピーすることによってDTMでの楽曲制作に必要な操作方法を自然に覚えることができます。具体的には以下の方法が取得できます。
耳を鍛える | 楽曲を聞き取り、打ち込んだ音がDTMで再生されることで音感が磨かれます。 |
操作に慣れる | 再現作業を通じてDAWの機能を自然と覚えます。 |
楽曲構成を理解する | 好きな曲のコピーを通じて、作曲者がどのように楽曲を構築しているのかを学べます。 |
モチベーションを維持しやすい | 好きな曲だからこそ楽しく取り組むことができ、モチベーションの低下を防げます。 |
コピーといえども曲を完成させた後には達成感が得られ、それが次の制作意欲につながります。
最初から曲作りはしないの?
正直に言えば、初心者が取り組む最初のステップとして「既存曲のコピー」以上に適切な案はほとんどないと思います。理由は以下の通りとなります。
曲作りのハードルが高すぎる | オリジナル曲を作るには、音楽理論や構成力、音色作りなど、 多くのスキルが必要で初心者には負担が大きいです。 |
他の学習方法は実践性に欠ける | 例えば、音楽理論を学ぶことや、DAWの機能を片っ端から覚えることは役立ちますが、 初心者にとっての実践性が低いため、長続きしにくいです。 |
コピーから派生できる | コピー作業は単なる模倣に留まらず、 アレンジやリミックスなどの応用作業に自然と発展していきます。 |
曲を探そう
自分の好きなアーティストやバンドの曲をコピーしよう!そう思っても、上級者でもない限り楽器パートの耳コピなどできるはずもありません。そこで役に立つのがバンドスコアとなります。
ただし、バンドスコアは有料です。
無料のバンドスコアもありますが、基本的に無料バンドスコアではギターソロやドラム、ベースの楽譜までは記載されてないことが多いです。初心者のうちはバンドスコアに頼るのがおすすめです。
バンドスコアの価格は一曲800円~アルバム単位で3,000円〜6,000円程度ですが、自身のDTMでの能力アップを考えると決して高くない価格だと思います。
なぜならバンドスコアをDTMでコピーすることにより、初心者が学ぶべきDTMに必要な能力が身につくからです。
曲のテクニックを学ぼう
コピーする曲が決まったら、さっそくバンドスコアを使いDTMでコピーしてみましょう。
既存曲をコピーする際には、初心者でも取り組みやすい方法で進めることがポイントです。以下の手順を参考にしてみてください。
ここでは一般的なバンド演奏を例にしてみます。
1. ドラムパターンを作成する
まずは曲のリズムパートから始めましょう。ドラムは楽曲の基盤となる重要な部分です。
バンドスコアに記載されているドラム譜をもとに、キックやスネア、ハイハットをMIDIで打ち込んでいきます。もしくはバンドスコアのドラム譜をDAW上に書き込みましょう。
バンドスコア上のドラム譜が非常に難しくても、その楽譜通りに手入力でドラム譜面を作成すれば、DTM上でバンド演奏と同じように再生されます。
最近のDAWには、自動で簡単にドラムパターンを作成できる機能が搭載されています。
この機能を活用すれば、数分でそれらしいビートを作ることが可能です。
しかし、初心者のうちはこれらの機能に頼らないことを強くおすすめします。
なぜなら、DAW任せにしてしまうと、自分でリズムや構成を考える力が衰えてしまうからです。
リズムの基礎を理解し、自分の手で一つひとつの打ち込みを経験することは、音楽制作のスキルを伸ばすうえで非常に重要です。また、自分で打ち込むことで、ドラムの役割やグルーヴの作り方を体感的に学べるようになります。
例えば、最初はシンプルな8ビートを打ち込むだけでも、どの音をどこに配置すれば良いかを考える経験が得られます。
こうした経験を積み重ねることで、リズムに対する理解力が向上し、オリジナルのビートを作れるようになるのです。
初心者の段階では、多少時間がかかっても、自分の手でリズムパターンを作成することを心がけましょう。
それが例えドラムの譜面をDAW上に落とし込むだけであっても、必ず将来のスキルアップにつながります。
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2. ベースラインを再現する
次に、楽曲の土台を支えるベースラインを打ち込みます。
ベースはコード進行をサポートし、曲全体の雰囲気を決定づける重要な要素です。バンドスコアを参考に、正確に音を入力していきましょう。
また、ベース音源の選び方で曲の質感が変わるので、いくつか試してみるのも良い練習になります。
3. コード進行を入力する
楽曲のハーモニーを形成するコード進行を打ち込みます。
スコアを参考にMIDIキーボードを使って入力すると、楽曲の骨組みが見えてきます。音源はDAWソフト内の物を利用するだけでも十分効果的です。
4. メロディと装飾音を追加する
主旋律となるメロディを再現します。もっともバンド曲であればボーカルの場合が多いのです。ボーカルのメロディを無料のボカロソフトで歌わせる方法もあるのですが、ここでは楽曲の雰囲気を壊さないような楽器を使って代用させましょう。
初心者の場合、楽譜に記載されたメロディラインを忠実に入力するだけでも良い練習になります。
5. ミックスで音を整える
最後に、各トラックの音量やパン(定位)を調整し、楽曲全体のバランスを整えます。さらに、リバーブやEQ(イコライザー)を使って、曲に立体感やまとまりを持たせましょう。
ミックス作業は初心者には難しく感じるかもしれませんが、基本的な調整だけでも十分に良い練習になります。
コピーで学べるDTMのスキル
既存曲のコピーには、初心者がDTMを始めるうえで学ぶべき技術が詰まっています。例えば、以下のスキルが自然と身につきます。
- DAWの基本操作:トラックの作成やMIDI入力、エフェクトの適用などの基礎が身につく。
- 耳を鍛える力:楽曲のリズムやコード、メロディを聞き取る力が養われる。
- 楽曲構成の理解:プロの楽曲がどのように構成されているのかを実践的に学べる。
- ミックスの基礎知識:音量バランスやエフェクトの使い方を学ぶことで、楽曲の完成度が向上する。
完成を目指さなくても大丈夫!
コピーをする際に重要なのは、必ずしも1曲を完璧に仕上げる必要はないということです。
初心者の段階では、イントロやサビといった短い部分だけでも十分な練習になります。最初からすべてをやろうとすると挫折してしまうこともあるため、まずは「適当に再現できた」程度でも十分なのです。
コピーを楽しみながら次のステップへ
既存曲のコピーを通じて得たスキルは、オリジナル楽曲制作の基盤となります。最初は難しく感じるかもしれませんが、コピーを繰り返すうちに音楽制作の流れやDAWの操作にも慣れていきます。コピーを完成させるたびに少しずつ自信がつき、次は自分のアイデアを加えたアレンジやオリジナル曲に挑戦する意欲が湧いてくるはずです。
DTM初心者の最初の一歩として、ぜひコピーに挑戦してみてください。楽しく学びながら確実にスキルを伸ばせる最適な方法です!