皆さん、ご機嫌よう! タカミックスです。
今回はディープ・パープルのデビューアルバムである『ハッシュ』についてです。
目次
弱小レコード会社
さて、リッチー・ブラックモアの人脈からディープ・パープルはアメリカのレコード会社であるテトラグラマトン・レコードと契約できました。
しかしテトラグラマトン・レコードとは弱小レコード会社であり、プロモーション費用も多くは出せない会社でありました。
また販売網もアメリカのみで他国での系列会社は持ち合わせておりませんでした。この様なことからデビューアルバムの完売網はアメリカのみ、若干他国での発売もあった様なのですが、残念ながら本国イギリスからすれば“輸入盤として”ディープ・パープルのデビューアルバムが発売されたと言う位置付けだったりします。
恐ろしく速いレコーディング
レコード会社と契約できたディープ・パープルは早速デビューアルバムの制作に入ります。
が、レコーディング期間は何と2日間のみ! 恐ろしく速いです。これはブラック・サバスのデビューアルバムである『黒い安息日』と同じ短さです。
またレコーディング期間が恐ろしく速かったため費用もさほど掛からなかったそうです。
デビューアルバムのハッシュ
テトラグラマトン・レコードから発売されたデビューアルバム『ハッシュ』ですが原題は『Shades of Deep Purple』です。
ハッシュ(原題:Shades of Deep Purple)
日本では最初『紫の世界』との邦題で発表されましたが、その後邦題が変更され『ハッシュ』のタイトルで発売されています。
このアルバムでは全8曲中の3曲がカバー曲となっており、その中にはジョー・サウスのカバー曲である『ハッシュ」もあります。
このハッシュはデビューアルバムに先駆けてシングル盤として発売され、アメリカではチャート4位に入るヒットとなっております。
その他のカバー曲としてはビートルズの「ヘルプ!」もあります。この曲では大胆にもバラードアレンジをし、ロッド・エヴァンスが切々と歌い上げます。
そしてジミ・ヘンドリックスの… と言いたいところですが実際はビリー・ロバーツの… でもなくて、元々は伝統音楽だったと言われる「ヘイ・ジョー」もカバーされております。
シングル盤ハッシュについて
第1期ディープ・パープルのデビューシングルであったハッシュなんですが、デビューアルバムの1ヶ月前に発売されております。
ハッシュの詞は女性に対することなんですが、この女性をある物に置き換えると…(後は自分で調べてね)
このジョー・サウスの「ハッシュ」なんですが、正確に言うとジョー・サウスがカントリーソウルシンガーであったビリー・ジョー・ロイヤルのために1967年に書いた曲となります。
なので実際はジョー・サウス作のビリー・ジョー・ロイヤルが歌った「ハッシュ」をディープ・パープルがカバーした、となるんですね。
これ正しい例えかどうかは分かりませんが、日本で言うなら「木枯らしに抱かれて」と聞いて連想するのは小泉今日子(SpringSとか言うなよ…)の曲ですよね? 誰も作曲者である高見沢俊彦がセルフカバーしたアルフィー盤「木枯らしに抱かれて…」の方を連想する人は少ないでしょう。
若干話が逸れましたが、ジョー・サウスの… と言われているハッシュですが、こんな感じでオリジナル盤(?)ビリー・ジョー・ロイヤルのハッシュをドイツのハンブルグでの修行時代に聴いていたリッチー・ブラックモアは、第1期ディープ・パープルがラウンドアバウトだった時代にハッシュをカバーしたいと言い出したクリス・カーティスの提案に賛成した訳なのです。
なおビリー・ジョー・ロイヤル盤ハッシュと同時期にオーストラリアのバンドであるサムバディズ・イメージもセカンドシングルとしてハッシュを発売しております。
とは言えオーストラリアチャートで15位に入ったサムバディズ・イメージ盤ハッシュを第1期ディープ・パープル(及びラウンドアバウト)のメンバーが聞いていたとは思えません。アメリカ&イギリスでオーストラリアで発売された楽曲なんぞ聞かないでしょうし、今の様にSNSが発達している時代でもないですしね…
肝心のジョー・サウス盤のハッシュはどうであったかと言うと、彼が1968年8月に発売した(第1期ディープ・パープル盤ハッシュの発売1ヶ月後)セカンドアルバム『ゲームズ・ピープル・プレイ』内でセルフカバーをしております。
アルバム盤ハッシュについて
アートロックバンドとしてデビューした第1期たディープ・パープルですが、第1期デープ・パープルはキーボードをメインとして楽曲が作られております。
ジョン・ロードのキーボード
第1期ディープ・パープルはジョン・ロードが主体のグループであったため、ジョン・ロードが好むヴァニラ・ファッジの様なサウンドにリッチー・ブラックモアのギター、イアン・ペイスのドラムがインタープレイ的に合わされて作られる音楽でした。
ミックスも明らかにキーボードが主体のミックスがされております。
これはジョン・ロードのプレイスタイルがヴァニラ・ファッジのボーカル兼キーボーディストであったマーク・スタインから大きな影響を受けており、ヴァニラ・ファッジは大きくキーボードもフューチャされたバンドだったので(ヴァニラ・ファッジのメンバーの実力は異常だけどね)納得の話ではあります。
なので第1期ディープ・パープルのサウンドの指針となるバンドがヴァニラ・ファッジであったのでキーボードがメインに出てくるのは当然のことだったのです。
また第1期ディープ・パープルのシングル盤ハッシュを聴いて頂けば分かるのですが、この曲ソロがキーボードのみなんです。また曲全編に渡ってギターって鳴ってる? と思われても仕方ない作りになっています。
このシングル盤ハッシュはデビューアルバムの1ヶ月前に発売されているので、ハッシュだけを聞いたメディアがキーボード主体のバンドと紹介するのも仕方ないことなのでした。
リッチー・ブラックモアのギター
ではリッチー・ブラックモアのギターはどうであったかと言うと、デビューアルバムから結構ギターソロは弾いてるんですね。
ただしギターリフに限って言えば、デビューアルバムでは弾いていないに近いです。
デビューアルバム1曲目「アンド・ジ・アドレス」はギターリフで始まります。しかしリフが始まる都合1分10秒前までキーボードの効果音が続きます。
アンド・ジ・アドレス
その他の曲に関してはキーボード、もしくはギターのユニゾンでのイントロになります。これではキーボード主体のバンドと思われても仕方ないでしょう。
ニック・シンパーのベース
ディープ・パープルって第3期を抜かすと(第3期はベーシストというよりボーカル面でだけど)ベーシストの評価ってされてないんですよね。
ですがニック・シンパーのベースってメロディアスでタカミックスは好きなんですよね。あとベースサウンドもカッコ良くないですか? 微妙にサウンドのエッジがゴリゴリ鳴ってますし。
特別フレージングが奇抜とかではないんですが、非常にツボを突いたベースを弾きます。なので“この曲の”と言うのはないのですが、全曲通して良いベースを弾くプレイヤーだと思います。
この人、何でベーシストとして評価されてないんですかね?
イアン・ペイスのドラム
第1期ディープ・パープル時でのイアン・ペイスのドラミングって、完全に私見なんですが何かインタープレイ的な叩き方なんですよね。
インタープレイの捉え方って人それぞれなのですが、第1期ディープ・パープル時のイアン・ペイスのドラミングは言い方は悪いんですが伴奏じゃないんですよ。
自分の個性を叩き付けるプレイなんですよね。言い換えれば伴奏ではなくドラムソロ的な叩き方で、それに対抗するべくジョン・ロードやリッチー・ブラックモアもソロを叩き付けると言った感じです。
だから良い意味で非常に緊張感のある演奏になる訳です。そんなインタープレイ的な叩き方が第1期ディープ・パープルでは特に強かった様に感じます。
ロッド・エヴァンスのボーカル
この人のボーカルの良さって上手く表現できないんですよね。ただポップシンガー的な人で世間で言う程プログレッシブロック的な声でもないですし、ロックシンガーでもない。声域も広くないですしね。
ただ声の響きは甘いです。
デビュー直後の音楽性
第1期ディープ・パープルのデビュー直後はヴァニラ・ファッジの様な音楽性とクラシック的なアプローチ、そして其々のメンバーによる(ニック・シンパーはイマイチ分からんが)インタープレイ的な演奏が合わさっております。
なのでアメリカでの評価はイギリスのヴァニラ・ファッジ(ヴァニラ・ファッジはアメリカのバンド)でした。
第2期以降のディープ・パープルの様なサウンドはまだ見られず、強いてこじ付けるならばアドリブプレイに第2期以降のディープ・パープルの片鱗が見えると言った所です。
そしてリッチー・ブラックモアのギターは大人しいです。ギターが主張し出してくるのはデビュー後、2枚目のアルバムとなる『詩人タリエシンの世界』からとなるのです。
つづく