DTMを始める上で、MIDIキーボードの選び方は重要なポイントの一つです。しかし、「お金をかけずにDTMを始めたい」という気持ちと、「快適な制作環境を整えたい」という気持ちのバランスを取るのは難しいものです。
そこで今回は、「お金はかけたくないが、音楽のためには最低限の投資をするべき」という視点で、MIDIキーボードの選び方を解説します。
目次
DTMにMIDIキーボードは必須か?
MIDIキーボードは、DTMでのメロディ入力やコード進行の確認をするために重要なツールです。
もちろん、マウスやDAWソフトに付属している仮想MIDIキーボード(Logic Proならミュージックタイピング)で打ち込みを行うことも可能です。しかし、直感的にメロディやコードを作るには、鍵盤で実際に音を確認しながら作業できる環境が理想的です。
また、音楽理論を学ぶ際にも鍵盤の存在は大きな役割を果たします。スケールやコードの構成を視覚的に理解するのに、鍵盤ほど便利なものはありません。そのため、DTM初心者ほどMIDIキーボードを用意することをおすすめします。
25鍵盤は使えるか?実際の運用を考える
「とにかく安くDTMを始めたい」と考えると、真っ先に選択肢に挙がるのが25鍵盤のMIDIキーボードです。しかし、実際に使用してみると、「思っていた以上に使いづらい」と感じることが多いです。
その理由として、下記のような問題があります。
- 単純に鍵盤が足りない
- メロディと伴奏を同時に確認できない
- オクターブシフトを頻繁に切り替えなければならない
特に「音の確認が取れない」という点は大きなデメリットです。DTMでは、コード進行やメロディラインを実際に鍵盤で弾いて音を聴きながら作ることが多いですが、25鍵盤ではそもそも確認できる音域が狭すぎるため、頻繁にオクターブボタンを押す必要が出てきます。
この操作がストレスになることが多く、「結局49鍵盤を買い直す」というケースもよく見られます。
もしくは上記のような不具合を承知した上で、最初から単純作業用と割り切って25鍵盤を購入する人もいます。
25鍵盤で完結する曲はあるのか?
結論から言うと、「伴奏込みで25鍵盤内の音だけで完結するフレーズ」はほぼ存在しません。
なぜなら、25鍵盤の音域内でベース、コード、メロディをすべて収めるのは現実的に難しいからです。
シンプルなリードシンセフレーズやパーカッシブなリズム演奏といった用途なら、25鍵盤でもある程度対応可能ですが、実際の楽曲制作ではベースとコードが分離していることがほとんどであり、25鍵盤内で完結させるのは難しいです。
特に、クラシック、ジャズ、ロック、ポップスなどの一般的な音楽制作では、オクターブシフトなしで演奏を完結できる鍵盤数が求められるため、最低でも49鍵盤は必要になります。
鍵盤数は49以上で!
「DTMでは演奏しないから小さい鍵盤でいい」と考える人もいますが、実際には打ち込み時に音を確認することも考え、49鍵盤以上あった物をオススメします。
特に、オクターブシフトを頻繁に行わなくてもベースからメロディまで自然に配置できる点が49鍵盤の大きなメリットです。
また、コードを押さえながらメロディを弾く場合にも、最低限の音域が確保されるため、ストレスなく作業を進めることができます。
音楽理論の学習にも適している
DTMを続けていくと、自然と音楽理論を学ぶ必要が出てきます。
スケール、コード、ボイシングなどを理解する上で、鍵盤があると視覚的に把握しやすくなります。
25鍵盤では音域が狭いため、スケールの展開やコードボイシングを試す際にも制限が生じます。一方、49鍵盤以上あれば、オクターブシフトなしでスムーズに確認できるため、より直感的に音楽理論を学ぶことが可能です。
持ち運びの問題は本当に気にするべきか?
「49鍵盤は持ち運びが大変」という意見もありますが、実際のところ、DTMで使うMIDIキーボードを頻繁に持ち運ぶ人はほぼいません。
そもそも、MIDIキーボードはあくまでDTM環境に固定して使うものです。
ライブでの演奏を考えるなら別ですが、DTM用途で持ち運びを考慮する必要はほとんどありません。
また、本職のキーボーディストであれば、MIDIキーボードとは別にライブ用のシンセや電子ピアノを持っているため、DTM用のMIDIキーボードに「持ち運びやすさ」を求める必要はありません。
ワイヤレスMIDIキーボードは使えるのか?
ワイヤレスMIDIキーボードは、DTM環境をスッキリさせる選択肢の一つになりつつあります。
しかし、メーカー側がDTMの打ち込み専用としてワイヤレスMIDIキーボードを開発する意義を見出していないため、製品の選択肢は限られているのが現状です。
そのため、市場に出ているワイヤレスMIDIキーボードの多くはライブ用途を想定したモデルが主流です。
しかし、ワイヤレスの最大の利点は「卓上にケーブルがないことによる快適さ」にあります。
MIDIキーボードの周囲に余計な配線がないことで作業スペースが広がり、ストレスなく制作に集中できるのは大きなメリットです。
そのため、安定性とリアルタイム入力(クォンタイズをかけない)を行わない限りは、作業環境の物理的な快適さからワイヤレスを選ぶという考え方ができるでしょう。
おすすめの安価なMIDIキーボード
「お金をかけずにDTMを始めるなら、最初から49鍵盤を買うべき」と述べましたが、では実際にどのようなMIDIキーボードが選択肢になるのでしょうか?ここでは、手頃な価格でDTM環境を整えられる49鍵盤のMIDIキーボードを紹介します。
M-AUDIO ( エムオーディオ ) / Keystation49 mk3 USB MIDIキーボード 49鍵
Keystation49 mk3は、シンプルで使いやすい49鍵盤MIDIキーボードです。
ピアノタッチではないものの、鍵盤の大きさは一般的なキーボードと同じフルサイズで、DTM初心者から上級者まで扱いやすい設計になっています。また、USBバスパワーで駆動するため、余計な電源アダプターを用意する必要がないのも利点です。
ROLAND ( ローランド ) / A-49-BK MIDIキーボードコントローラー
RolandのA-49は、軽量ながらも演奏性を重視したMIDIキーボードです。
高品質な鍵盤アクションに定評があり、DTMだけでなく、シンセや音源モジュールとの組み合わせにも最適です。特に、ベロシティ(強弱)をしっかりと表現できるため、リアルな演奏感を求める人におすすめです。
KORG ( コルグ ) / microKEY 2 Air 49鍵
個人的にお勧めするのがKORGのmicroKEY 2 Airです。
「Air」とは、Bluetooth接続に対応したワイヤレスMIDIキーボードを指す単語となっています。ケーブル不要でスッキリとしたデスク環境を作れる点が魅力で、MIDIケーブルやUSBケーブルの煩わしさを軽減できます。また、バッテリー駆動も可能なため、持ち運び用途にも対応可能です。
まずDTM作業であるので演奏テクニックを磨く訳ではありません。DTMとしての確認や演奏を「機能」として捉えるなら、microKEY 2 Airは素晴らしい鍵盤だと思います。
商品名にmicroと付いてある通り、鍵盤のサイズは若干小さくなっております。とは言え感覚的にはミニギターのような物であり、DTM作業に支障をきたす物ではありません。
何よりワイヤレスなので、DTMを行わない時はデスク上から移動させられる快適さは最高です。
⚫ どれを選ぶべきか?
「シンプルに49鍵盤でDTMを始めたいならKeystation49 mk3」「演奏性を重視するならA-49」「ワイヤレス環境を求めるならmicroKEY 2 Air」といった基準で選ぶとよいでしょう。どのモデルもDTM初心者から扱いやすい設計になっており、長く使えるMIDIキーボードです。
結論:最初から49鍵盤を買うべき
DTMを本格的にやりつつ、鍵盤を一つしか所有できないのであれば、最初から49鍵盤以上のMIDIキーボードを選ぶのが賢明です。
- 25鍵盤は「音の確認」すらまともにできない
- 打ち込み時のストレスを考えると、49鍵盤は最低限必要
- 音楽理論の学習にも鍵盤の広さが影響する
- DTM用のMIDIキーボードを持ち運ぶ機会はほぼないため、大きさを気にする必要はない
これらの点を考慮すると、「最初は安い25鍵盤で始めて、後から買い替える」よりも、「最初から49鍵盤を選んで長く使う」ほうが結局はコスパが良いといえます。
DTMを始める際の投資は慎重に考えるべきですが、最低限の快適な環境を整えることも大切です。最初から49鍵盤以上のMIDIキーボードを選ぶことで、DTMをよりスムーズに楽しめるはずです。