『初心者にこそ説明したい!音楽講座』です。この講座では、音楽をより深く理解し、楽しむための基礎知識を学んでいきます。
最初の講義テーマは『音名』です。また、それに付随する形で日本で使われている音名の種類についても解説します。
今回は覚えていただくのは、「音名とは、音の絶対的な高さを表す名前のこと」となります。
音について
まず、『音』について説明します。音(おと)とは、空気などの媒質を通じて伝わる振動のことです。音は耳で聞くことができる物理的な現象であり、私たちは日常生活で常に音に囲まれています。
音楽における音
音楽における音とは、特定の目的や感情を伝えるために意図的に組み合わされた音の連なりです。
これには歌、ピアノ、ギター、そしてドラムのような打撃音やターンテーブルのスクラッチなどの効果音も含まれます。
音楽を表現するためにはさまざまな手法があり、それらを効率的に理解するために音楽理論が存在します。
音名について
それでは音名についてです。
音名 | 音の高さを表す名前(何があっても変わらない) |
音名とは、音の絶対的な高さを表す名前です。例えば、ピアノの特定の鍵盤を弾けば、その音名で記された音が響きます。これは何があっても変わることがありません。

各国の音名
音名は世界各国でさまざまな呼び方がされています。日本では、主にイタリア式音名、英米式音名、ドイツ式音名、日本式音名の4つが使われています。以下にそれぞれの音名について説明します。

イタリア式音名
一般的に音楽をしていない人にも知られているのが「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」です。これはイタリアの音楽理論家グイード・ダレッツォによって、11世紀に聖歌の歌詞の各文節の最初の文字を用いて考案されました。

最初は「ウト(Ut)・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」の6音から始まりましたが、後に「シ」が追加され、さらに「ウト」が発音しにくいということから「ド(Do)」に置き換えられました。
Ut 発音
こうして現在のド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドの形に整い、音楽教育や楽譜の読み書きに広く採用され、世界中で使われるようになりました。
イタリア式音名 | 読み |
---|---|
Do | ド |
Re | レ |
Mi | ミ |
Fa | ファ |
Sol | ソル→ソ |
La | ラ |
Si | スィ→シ |
英米式音名
イタリア式音名の「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」と同じくらいポピュラーな音名が、英米式音名の「C・D・E・F・G・A・B・C」です。
楽器を弾く方なら楽譜や、バンドマンであればバンドスコアに書かれている「Em」や「B♭m7/E♭」といったアルファベットの大文字で使われているのを見たことがあるでしょう。そのアルファベットの大文字が英米式音名です。
音名にアルファベットを使い始めたのは、ボエティウスというローマ人でした。約1,600年前、最低音から順番に「A・B・C・D・E・F・G・H・I・J・K…」と、すべてのアルファベットを使用し、その中で近い音をまとめた結果、「A・B・C・D・E・F・G」が残りました。
では、なぜ「ABC…」が残ったのに、順序が「CDE…」になったのかというと、簡単に言えばCから始まった方が取り扱いやすかったからです。それが標準となり、現在の音楽理論が確立されました。
英米式音名は国際的に広く使われており、多くの楽譜や音楽理論書でも標準的に使用されています。
英米式音名 | 読み方 | イタリア式音名 |
---|---|---|
C | シー | ド |
D | ディー | レ |
E | イー | ミ |
F | エフ | ファ |
G | ジー | ソ |
A | エー | ラ |
B | ビー | シ |
ドイツ式音名
クラシック音楽ではドイツ式音名がメインで使われます。

ドイツ式音名はC・D・E・F・G・A・H・Cと表記されますが、英米式音名のB(ビー)に相当する音名がH(ハー)となる点が異なります。また、ドイツ式音名のEは「エー」、Aは「アー」と発音されます。
ドイツ式音名 | 読み方 | イタリア式音名 |
---|---|---|
C | ツェー | ド |
D | デー | レ |
E | エー | ミ |
F | エフ | ファ |
G | ゲー | ソ |
A | アー | ラ |
H | ハー | シ |
実は、ドイツ式音名にもBはあります。
最初はドイツ式音名でもシはB(ベー)と呼ばれていました。
しかし、当時のヨーロッパでは、ファとシの間にできる三全音(トライトーン)が不協和で嫌われており、ラとシの間に「もう一つのB」を作り、その音程を回避する方法をとりました。
この「もう一つのB」は元のシよりも柔らかく聞こえたため、「柔らかいb」と呼ばれ、元々のBは「硬いb」と呼ばれるようになりました。
そのうち、「硬いb」がHに似ていることや、音名で使われるのはAからGまでで、Hが空いていたこともあって、いつの間にかシはHと表記されるようになったのです。
ちなみに、この柔らかいbが『♭(フラット)』、硬いbが『♮(ナチュラル)』という変化記号になりました。この変化記号の意味や、文字から記号に変化した話は変化記号の講義で取り上げます。
同じく三全音(トライトーン)や不協和も後の講義で取り上げます。

ドイツ式音名B / 英米式音名B♭
日本式音名
音楽の中では誰でも知ってるベートーヴェンの『運命』などは、正式な曲名は「交響曲第5番 ハ短調 作品67」となります。
クラシックの曲名って難しそうな名称で、曲名がスラスラ言えると何だか頭が良くなったみたいに感じませんか?
それはさておき、このハ短調の”ハ”が日本式音名のハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ・ハです。
日本式音名 | イタリア式音名 |
---|---|
ハ | ド |
ニ | レ |
ホ | ミ |
ヘ | ファ |
ト | ソ |
イ | ラ |
ロ | シ |
日本語音名「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ・ハ」は、平安時代に中国から伝来した雅楽の影響を受けているそうで、その後日本独自の音楽理論に発展していったそうです。
しかし、音楽教育の一環として「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」のイタリア式音名が音名体系に導入されました。このことによって日本式音名が英米式音名に置き換えられ、日本式音名を見る機会が少なくなってしまいました。
ハ短調の『短調』とは音楽の調性(音楽の中心となる音の関係性)の一つで、哀愁や悲しみを感じさせる音階(音の並び)のことです。
ただし今回の「ハ短調」は、あくまで曲名として取り上げただけなので、深く理解しなくても大丈夫です。
この調整や音階については、後の講義で取り扱います。
まとめ
ドイツ語式音名はクラシックや吹奏楽などで使われることが多く、日本式音名も例え音楽をやっている人でもクラシック音楽の曲名以外で見かけることはまずありません。
なので音名として、圧倒的に普及しているのはイタリア式音名と英米式音名となります。
さて、今回は音名が“音の絶対的な高さを表す名前”のということが分かりましたね。
次回は「音名と何が違うの?」と疑問を持たれる方の多い『階名』について学びましょう!
第1回目:おしまい
