ここまでの第1回と第2回ではiPhone Duoの基本的な機能やiPadとの違い、そして折りたたみ式スマートフォンが今後、新しいデバイスの形として定着する可能性について考えてきました。
そんなタカミックス自身も、この記事を書いている最中にiPhone Duoが欲しくなってしまった!
普段は通常のスマートフォンとして持ち歩き、必要なときだけ画面を広げられる。特に外出先でWebサイトの閲覧やブログの編集を行うことを考えると、この使い方には大きな魅力を感じたのです。
しかし、そこで問題となったのが364,800円(税込)からと言う価格だったのです。
この36万円を超える金額となれば、もはや一般的なスマートフォンの価格帯という感覚ではありません。
同じApple製品で考えても、この予算があればMacBook Proを購入することができます。
では、なぜiPhone Duoはこれほど高額になったのでしょうか?
第3回となる今回は、折りたたみ式ディスプレイの製造コストや、MacBook Pro、iPadとの価格・用途の違いを含めて考えていきたいと思います。
※本記事は2026年10月23日の一般発売前に公開されている情報をもとにしています。そのため、実際の耐久性や長期使用によるディスプレイへの影響については評価していません。
iPhone Duoはなぜ36万円超え?
最初にいきなり結論を言いますが、iPhone Duoの最大の問題は“価格”だと思っています。
日本国内での開始価格は364,800円(税込)から。スマートフォンとして考えると、決して気軽に購入できる金額ではありません。これだけの予算があれば、Appleの高性能ノートパソコンであるM5 Pro搭載のMacBook Proすら、ほぼ同じ金額で購入できるのです!
この価格にはタカミックスだけでなく、おそらく多くの人が「たかがスマホに36万円以上も払うのか?」と感じたのではないでしょうか?
しかし、iPhone Duoには価格が高くなるだけの理由もあります。
それが通常のiPhoneにはない折りたたみ式ディスプレイや、それを実現するための複雑な構造が、製造コストを高める要因となるからです。
と言うことで、まずは製造コストに関係する要素のみを確認してみましょう。
折りたたみ機構が価格に与える影響
iPhone Duoには、通常のiPhoneとは異なる折りたたみ機構が採用されています。
第2回では、フレキシブルOLED(有機EL)や画面を保護する素材、ディスプレイの開閉を支えるヒンジについて解説しました。
これらの技術には、繰り返し開閉しても正常に表示できる耐久性や、画面への負担を抑える構造などが求められます。
そのため、通常のiPhoneと比べて部品の構造や組み立て工程が複雑になり、品質検査にも高い精度が必要になります。こうした製造上の負担が、製造コストを高める要因の一つと考えられます。
フレキシブルOLEDの製造コストと歩留まり
フレキシブルOLEDは、一般的な硬い基板を使用したディスプレイとは異なり、薄く柔軟な素材を組み合わせて製造されます。

さらに折りたたみ式ディスプレイでは、繰り返し曲げられることを前提に、保護層や接着層なども含めた設計が必要です。そのため、製造工程が複雑になり、製造コストが高くなる要因となります。
ここで重要になるのが、「歩留まり」という言葉です。
歩留まり(ぶどまり)とは、一般にはあまり馴染みのない言葉ですが、作った製品のうち、何個が合格品になったかを示す割合のことです。
例えば、100個作って90個が合格なら、歩留まりは90%です。
100枚のディスプレイを100万円(1,000,000万円)かけて製造した場合、
そのうち90枚が良品、歩留まり90%であれば、良品1枚当たりの製造コストは約11,111円になります。
しかし、70枚しか良品、歩留まり70%なら、製造コストが約14,286円に上がってしまいます。
つまり、同じ100万円をかけて製造しても、不良品が増えるほど、販売できるディスプレイ1枚当たりの製造コストが高くなるのです。
そのため、不良品を減らして歩留まりを改善することが、製造コストを抑えるうえで重要になります。
ディスプレイ100枚を100万円で製造した場合
歩留まり90%
良品90枚・不良品10枚
良品1枚当たり:約11,111円
歩留まり70%
良品70枚・不良品30枚
良品1枚当たり:約14,286円
※金額と歩留まりは説明用の仮定であり、実際のiPhone Duoの製造データではありません。
なお、参考情報として、英国系のテクノロジー市場調査会社Omdia(オムディア)は、ノートパソコン向けOLEDの分析において、フレキシブルOLEDの製造工程の複雑さや歩留まりが、コストを高める要因になると説明しています。
ただし、これはノートパソコン向けOLEDに関する分析であり、iPhone Duoに採用されたディスプレイの具体的な製造原価を示すものではありません。
専用ヒンジの構造と製造コスト
折りたたみ式スマートフォンでは、ディスプレイだけでなく、本体の開閉を支えるヒンジも重要な部品です。

Appleによると、iPhone Duoには100以上の部品で構成された専用ヒンジが採用されています。
このヒンジは本体を滑らかに開閉させるとともに、開いた状態ではディスプレイ中央部分を支える役割を担っています。
Apple関連の著名なアナリスト、ミンチー・クオ氏は、ヒンジ1個当たりの価格を70〜80ドル程度と予測しています。
これは1ドル150円で換算すると、約10,500〜12,000円に相当します。
これは、あくまで予想価格ではあるものの、36万4,800円というiPhone Duoの販売価格を考えると、ヒンジが約12,000円であれば、それほど大きな負担ではないようにも思えます。
しかし、ヒンジの価格だけで、製品全体の製造コストを判断することはできません。
ヒンジを採用するには、開閉を繰り返しても正常に動作するための設計や耐久試験、精密な組み立てなども必要になります。また、ヒンジの構造に合わせた本体内部の設計や、折りたたみディスプレイとの調整も求められます。
つまり、ヒンジそのものの価格が約12,000円だったとしても、折りたたみ構造を実現するために必要な費用が、それだけで済むわけではないのです。
こうした複雑な機構を搭載することも、iPhone Duoの製造コストが高くなる要因の一つとして考えられます。
開発費と販売台数が製品価格に与える影響
ここまでは、折りたたみ式ディスプレイや専用ヒンジなど、主に機械的な構造と製造コストについて説明してきました。しかし、製品の価格には、部品代や製造費用だけでなく、設計や技術開発に必要な費用も関係します。
iPhone Duoのような折りたたみ式スマートフォンでは、通常のiPhoneとは異なる構造の設計に加え、ディスプレイの開閉を繰り返す耐久試験なども必要になります。
また、広げた画面で2つのアプリを同時に使用できるSplit Viewや、撮影される側も画面を確認できるDuo Previewなど、折りたたみ式ディスプレイを生かすためのソフトウェアの開発にも費用がかかります。

こうした開発費をどれだけの販売台数で回収できるかも、製品の価格を考えるうえで重要になります。
例えば、同じ100億円の開発費でも、100万台販売できれば1台当たり1万円、10万台しか販売できなければ10万円に相当します。
これは開発費を販売台数で単純に割った場合の計算ですが、同じ開発費でも、販売台数によって1台当たりの負担が大きく変わることが分かります。
つまり、iPhone Duoの価格を考える際には、部品や製造工程のコストだけでなく、販売台数によって1台当たりの負担が変わる開発費にも目を向ける必要があります。
そもそもiPhone自体が高額になっている
ここまでは、iPhone Duoが高額になる技術的な理由について考察してきました。
しかし、少し視点を変えてみましょう。
実は、折りたたみ式ではないiPhone 18 Proでさえ、最低容量の256GBモデルの価格が219,800円(税込)からとなっています。

つまり、現在のiPhoneは、折りたたみ式ではないモデルでも20万円を超える製品が存在するのです。
ここで注目したいのが、スマートフォンそのものの価格差です。
実際、Androidスマートフォンであれば、電話やLINE、メール、Web閲覧、YouTubeの視聴といった一般的な用途に対応できる製品が、1万5,000〜2万円程度でも販売されています。

もちろん、処理性能やカメラ性能などには大きな違いがありますが、日常的な用途に限れば、必ずしも20万円以上のスマートフォンが必要というわけではありません。
こうして考えると、iPhone 18 Pro自体が、スマートフォンの中でも非常に高額な製品であることが分かります。
とは言え、iPhone Duoの256GBモデルは364,800円(税込)から。
その価格差は145,000円にもなります。
これは最新技術を搭載した高性能なiPhone 18 Proと比較しても、iPhone Duoは14万円以上も高くなっているのです。
この価格差を考えると、折りたたみ式という新しい機能に、どれだけの価値を感じられるかが重要になってくるのではないでしょうか?
同じ予算で購入できるMacBook Proとの用途の違い
次に、価格ではなく用途の違いに注目してみましょう。
比較するのは、iPhone Duoとほぼ同じ予算で購入できるMacBook Proです。

Appleが2026年3月に発表した14インチMacBook ProのM5 Pro搭載モデルは、369,800円(税込)からとなっています。
一方、iPhone Duoの256GBモデルは364,800円(税込)です。
両者の価格差は、わずか5,000円です。
| 比較項目 | iPhone Duo | 14インチMacBook Pro |
|---|---|---|
| 比較する構成 | 256GBモデル | M5 Pro搭載モデル・最小構成 |
| 税込価格 | 364,800円 | 369,800円から |
| 搭載OS | iOS | macOS |
| 主な操作方法 | タッチ操作 | キーボード・トラックパッド |
| 携帯電話としての音声通話 | 対応 | 非対応 |
| Mac用Logic Pro | 非対応 | 対応 |
| 本体の特徴 | 折りたたみ式の大画面を備えたスマートフォン | 14インチの画面を備えたノートパソコン |
※iPhone Duoの価格は2026年10月1日に確認した日本公式ストアの税込価格です。MacBook Proの価格は2026年3月3日の公式発表時の開始価格であり、10月1日時点の同一構成の販売価格として確認できたものではありません。
この比較で注目したいのは、価格が近いにもかかわらず、利用できるアプリや作業環境が大きく異なることです。
ここでは、その違いをアプリの利用という観点から考えてみます。
例えば、MacBook Proであれば、Mac版Logic Proを利用した本格的な音楽制作など、パソコンならではの作業環境を利用できます。
一方、iPhone Duoに搭載されているiOSでは、Mac版Logic Proを使用することはできません。
これは音楽制作に限った話ではありません。iPhone Duoは折りたたみ式の大画面を備えていますが、画面が大きくなったからといって、MacBook Proと同じアプリを利用できるわけではないのです。
つまり、両製品は価格こそ近いものの、元々の製品としての役割が異なるのです。
そのため、iPhone Duoの大画面に魅力を感じたとしても、MacBook Proと同じような作業ができるわけではありません。
しかし、製品としての役割が異なるとはいえ、iPhone Duoの364,800円(税込)からという価格が、非常に高額であることに変わりはありません。
iPhoneとiPadを別々に購入する場合との違い
ここまでは、iPhone DuoとMacBook Proの用途の違いについて考えてきました。
では、同じApple製品でも、iPhoneとiPadを別々に購入する場合はどうでしょうか。
iPhoneとiPadを別々に購入すれば、それぞれのOSに対応したアプリを利用でき、用途に応じて2台を使い分けることができます。
なぜならiPhone DuoはiOSを搭載しているため、iPad版Logic Proのように、iPad OSのみでしか利用できないアプリもあるからです。
iPhone Duoは大画面になったからといって、iPadの機能をすべて代替できるわけではないのです。たしかにiPadOSもMacOSに対応している訳ではありませんが、それでもiOSよりは動作環境の幅は広く取られています。

それでは、実際に購入価格を比較してみましょう。
| 購入する製品 | 税込価格 |
|---|---|
| iPhone Duo(256GB) | 364,800円 |
| iPhone 18 Pro+iPad mini | 319,600円 |
| iPhone 18 Pro+11インチiPad Air | 349,600円 |
上記のように、iPhoneとiPadを別々に購入しても、iPhone Duoより安く購入できます。
つまり、iPhone Duoの364,800円という価格を考えるうえで重要なのは、iPhoneとiPadの両方の機能を備えているかどうかではありません。2台の端末を持ち歩くことなく、1台のスマートフォンで大画面を利用できるという利便性に、どれだけの価値を感じるかということなのです。
iPhone Duoは今後、安くなるのか?
ここまで、iPhone Duoが高額になる理由や、MacBook Pro、iPhoneとiPadを別々に購入する場合との違いについて考察してきました。
こうして比較すると、iPhone Duoの魅力は、単に大きな画面を搭載していることではなく、必要なときだけ画面を広げられるという、これまでのiPhoneにはなかった利便性にあることが分かります。
しかし、その利便性のために364,800円(税込)以上を支払うとなると、やはり簡単には購入を決断できません。
では、今後iPhone Duoの製造技術が進歩し、普及が進めば、現在よりも安価なモデルが登場する可能性はあるのでしょうか。
次回からは、過去の携帯音楽プレーヤーやカメラなどの価格と技術の変遷を振り返りながら、iPhone Duoの価格が今後どう変化するのかを考察していきます。