シールド線は、ただ“ノイズを防ぐ線”と思われがちですが、実は使い方を誤ると音の質そのものに影響します。
特に高域が失われる現象──今回はその仕組みを、問題を通してわかりやすく解説します。
2025年問題ステップⅡ問題4
対話講義(Q&A)|
タカミックス
先生、シールドってギターの線ですよね?
でもこれ、高域が減るって書いてありますけど、ケーブルで音が変わるんですか?
サウンド先生
いい質問だね、タカミックス君。
そう、シールド線ってノイズを防ぐために使うケーブルなんだけど、使い方を間違えると音の“高いところ”が削れることがあるんだ。
タカミックス
へぇ……でもなんでそんなことに?ケーブルなんてただの線ですよね?
サウンド先生
実はね、ケーブルの中には「静電容量」という性質があるんだ。
ざっくり言うと、ケーブルの長さが長いほど“電気をためこむ”量が増える。
で、そのケーブルに機器の出力が高い抵抗を持っていると……この2つが組み合わさって、高い音ほど流れにくくなるんだ。
タカミックス
ん?抵抗?高い?……ちょっとよくわからないです。
サウンド先生
つまりこういうこと。
“信号を出す側”──たとえばギター本体の出力とか、エフェクターの出力──が「弱い(高インピーダンス)」と、ケーブルが持つ“ため込みクセ(静電容量)”の影響を受けやすい。
結果として、高い音(高周波数)が減ってこもった音になるんだ。
タカミックス
なるほど、ケーブルの“ため込みクセ”で高い音が減るのは分かりましたけど……
先生、なんで“高音域”なんですか?低音は影響を受けないんですか?
サウンド先生
いい質問だね。
高音域っていうのは“変化が速い”信号なんだ。波が細かくて、上下の動きが短い間に何度も起きる。
ところが、静電容量があると「いったん電気をためてから出す」動きをするから、その速い変化に追いつけないんだよ。
つまり、低音みたいにゆっくり動く信号はためてる間にちゃんと出せるけど、高音みたいに速い動きは「まだ出し切る前に次が来る」。
その結果、細かい変化が削られて、高音域だけが減って聞こえる──これが“こもり”の正体なんだ
タカミックス
なるほど。あと、ちょっと気になったんですけど……
“押し出す力が弱い”のに“高インピーダンス”って言うんですか?
「高い」って聞くと、なんか強そうに感じるんですけど。
サウンド先生
いいところに気づいたね。
たしかに言葉の印象とは逆なんだけど、“インピーダンスが高い”=信号が流れにくい、つまり押し出す力が弱いって意味なんだ。
タカミックス
なるほど……“高い”って言っても、壁が高いイメージなんですね。
だから流れにくい=弱い、ってことか。
サウンド先生
その通り。
インピーダンスは「どれだけ流れを妨げるか」の数値だから、高い=弱い/低い=強いで覚えるといい。
なので出力は“押し出す力が弱いタイプ(高インピーダンス)”だから、シールドの“ため込みクセ(静電容量)”に引っ張られて、高い音が削れるだね。
タカミックス
なるほど〜
じゃあ、そうならないようにするにはどうすればいいんです?
サウンド先生
簡単な方法は3つ。
- ケーブルを短くする
- 低静電容量タイプを選ぶ
- バッファーやDIを挟んで信号を強くする
これで高域の減衰をかなり防げるんだ。
タカミックス
へぇ〜、ケーブルってただの線じゃないんですね。
サウンド先生
そう。音を運ぶ“回路の一部”なんだよ。
だから使い方ひとつで、音は良くも悪くも変わる──それが今回の問題の本質なんだ。
他の選択肢について
① 受け側が高い → ×
受け側が高い=軽い負荷で、信号を引っ張らない。
だから高域はむしろ落ちにくい方向。
問題が言う「高域が減る」とは逆の条件。
② 銅の純度が低い → ×
導体が劣化して音がくすむことはあるが、それは“経年変化や接触不良”の話。
静電容量やインピーダンスの問題とは別。
③ 静電容量が小さい → ×
小さいことは良いこと。高域は落ちにくくなる。
高域が減衰するのは逆で、静電容量が“大きい”場合。
まとめ
- シールド線には、電気をためこむ静電容量という性質がある。
- 静電容量が大きいほど、高い周波数の信号が通りにくくなる。
- 機器の出力インピーダンスが高い場合、この影響が強く現れ、高域が減衰しやすくなる。
- 一方で、入力インピーダンスが高い場合は信号を重く引っ張らないため、高域減衰の要因にはなりにくい。
- 高域の損失を防ぐには、ケーブルを短くする・静電容量の小さいシールドを使う・低インピーダンス出力の機器を用いるとよい。
過去問出題年
検証中(今後追記予定)
