この回では、「テンポ180のとき付点8分音符は何msecになるか?」という、一見すると単純な計算問題を通して、BPMと拍の長さの関係を整理していきます。テンポと拍の長さを行き来できるようになると、ディレイタイムやLFO周期を「耳任せ」ではなく、狙ったリズムにぴったり合わせて設定できるようになります。
こういう計算ができるようになると、制作やミックスの現場で「なんとなく合ってる」から一歩進んで、「この曲のノリに対して最適な値」を自分で決められるようになります。付点は“元の長さ×1.5”という比率で整理できるので、msec変換もスムーズです。この回で、テンポ180と付点8分音符の関係をきちんと押さえておきましょう。
目次
過去問|2025年 ステップⅣ 第8問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅣ 第8問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
テンポとmsec換算の基本式=4分音符1拍は60000÷BPM(msec)
※付点8分は「4分音符の3/4」を掛ける
対話講義(Q&A)|テンポと付点8分音符のmsec換算
タカミックス
先生、まず問題文の「テンポ180の場合、付点8分音符は何msecでしょうか。」ってやつ、そこから理解できていません…。
サウンド先生
OK、問題文を順番にほどこう。
まず「テンポ180」って、何を指してのテンポかな?
タカミックス
え〜と、BPMですよね?
サウンド先生
そう、BPMだ。じゃあ、BPMの定義って何だい?
タカミックス
定義ですか?
速さっていうのは分かるんですけど……
サウンド先生
BPMとは「1分間に4分音符が何回あるか」って意味だよ。
タカミックス
1分間に…4分音符が何回…?
サウンド先生
……タカミックス君、もしかしてさ。
「4分音符」って言われた瞬間に、「4分音符=だいたい●秒」みたいに、秒数を固定でイメージしちゃってないかい?
タカミックス
え、してます……
4分音符って聞くと、勝手に「0コンマ何秒くらい?」って決めたくなっちゃいます。
サウンド先生
それ、感覚としては自然だし、よく分かる。
でもね、4分音符の“秒数”はテンポで毎回変わるんだ。
4分音符は「1拍」っていう単位で、秒数は固定じゃない。
タカミックス
1拍?
サウンド先生
そう、4分音符“1拍”は60000÷BPM(=テンポ)なんだ。
タカミックス
混乱しまくりが更に混乱しています。4分音符、1拍、BPMは分かりましたが、60000ってどっから出てきた数字なんですか?
サウンド先生
60000という数字はね、1分は60秒だ。
タカミックス
はい。そこまでは分かります。
サウンド先生
で、その1分をミリ秒に置き換えたのが60000ミリセコンド(msec)になる訳だ。
ミリセコンドは「1秒の1000分の1」だ。
その「1秒=1000msec」だから、60秒×1000=60000msec。
この60000は「1分をミリ秒に直した数字」ってだけなんだ。
タカミックス
なんでわざわざミリ秒にするんですか? 秒でよくないですか?
サウンド先生
ミリセコンドにした方が調整が現実的なんだ。
「10msec遅らせる」「20msec短くする」みたいに、音のノリを詰める単位として扱いやすい。
タカミックス
なるほど…60000って、そういう意味なんですね。
でも、次に4分音符1個が何msecかを出すために、60000をテンポの180で割るんですよね?
でも割り算が…
私のEl Capitan級の演算力を誇る頭脳でも割り切れない複雑怪奇な応用を必要とする計算ですよね?
サウンド先生
そう、割り切れない。
だから“だいたい”でいい。
60000÷180は、約333msec。
タカミックス
まず4分音符から導き出すんですね。
サウンド先生
そう。次に付点8分だけど、まず「8分音符」って4分の半分だよね。
だから8分音符は、4分音符333msecの半分で、約166.5msec。
タカミックス
そして付点の「半分を足す」訳ですね。
サウンド先生
そう。付点は「元の長さ+その半分」。
だから付点8分は、8分音符166.5msecに、その半分83.25msecを足す。
タカミックス
166.5+83.25…
サウンド先生
ここは、ざっくりでOK。
166.5をだいたい167、83.25をだいたい83と見て、
167+83=約250msec。
タカミックス
最初の「60000÷180」で心が折れてただけで、順番にやると着地は素直なんですね。
サウンド先生
そういうこと。まとめるとこう。
- テンポ180の4分音符:60000÷180≒333msec
- 8分音符:その半分で≒166msec
- 付点8分:8分+その半分で≒250msec
タカミックス
分かりました!
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅣ 第8問の正解
250msec
一言まとめ
テンポ180では4分音符約333msecの3/4=付点8分音符が約250msecになる
なぜその答えになるのか(メカニズム)
この問題は、「BPMから4分音符の長さをmsecで計算し、さらに付点8分音符の比率を掛けて正しい値を導けるか」が問われています。テンポ180のとき、4分音符は60000msec÷180≒333msecとなり、付点8分音符は4分音符の3/4なので、333msec×3/4≒250msecと求められます。選択肢の中でこの値に一致するのは250msecだけです。
まずBPM(Beats Per Minute)とは、「1分間に4分音符が何回鳴るか」を表す指標です。
したがって、BPMが分かれば4分音符1拍の長さは次の式で求められます。
- 4分音符1拍の長さ(msec)=60000÷BPM
テンポ180の場合は、
- 60000÷180≒333.3msec
となり、4分音符が約333msecであることが分かります。
次に、付点8分音符の長さを考えます。
付点8分音符は「8分音符+その半分(16分音符)」なので、8分音符の1.5倍の長さです。拍の比率で考えると、4分音符を1としたときの各音符の長さは次のようになります。
- 4分音符=1
- 8分音符=1/2
- 付点8分音符=1/2+1/4=3/4
つまり、「付点8分音符=4分音符の3/4」とみなせます。
テンポ180の4分音符が約333msecなので、
- 333msec×3/4≒249.75msec
となり、約250msecと丸めた値を用います。この手順さえ押さえておけば、他のテンポや他の音価(例えば付点4分音符、3連符など)も同じロジックで計算できるようになります。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
- 125msec
125msecはテンポ120の16分音符など、より細かい音価に対応する長さとしては登場し得ますが、テンポ180の付点8分音符としては短すぎます。テンポ180での4分音符が約333msecであることを考えると、その3/4は約250msecとなり、125msecは4分音符の約3/8という不自然な比率になってしまいます。
- 375msec
375msecはテンポ160付近での付点8分音符など、別のテンポ設定ではあり得る値ですが、テンポ180の4分音符が333msecであることを前提にすると、「それより長い付点8分音符」というのはあり得ません。付点8分音符は4分音符より短いはずなので、4分音符より長い数値を選ぶのは明らかに不適切です。
- 500msec
500msecはテンポ120での8分音符や、テンポ60での16分音符などに対応し得る値ですが、テンポ180の付点8分音符としては長すぎます。テンポ180での1拍あたりの時間は333msec前後なので、その範囲を大きく超える数値は、この問題の条件と矛盾します。
実務・DTMへの応用
この話が役に立つかどうかは、DTMでどこを触るかで変わります。
ディレイタイムやリバーブのプリディレイ、コンプのアタック/リリースなど、ミリ秒(ms)で時間を設定する場面が多い人には直結します。
一方で、時間系はテンポ同期(Sync)やプリセット中心で進める人にとっては、必須ではありません。
とはいえ、いざ「ノリが合わない」「跳ね方を狙って作りたい」となった時に、BPMとmsecを行き来できると強いです。ここでは、BPM⇄msec換算が効く“典型の使いどころ”をまとめます。
1) ディレイを“リズム楽器”として使える
テンポ同期(1/8Dなど)で済む場面も多いですが、ms指定で追い込みたい場面も出ます。
- テンポ同期がないディレイを使うとき
- Syncはあるけど、わざと数msズラしてグルーヴを作りたいとき
- 付点・三連・細かい音価を、数値で即座に当てたいとき
最初の当たりを数値で置けると、あとはフィルターやフィードバックの“音作り”に集中できます。
2) リバーブのプリディレイで“前後感”をコントロールできる
プリディレイは「原音が出てから残響が来るまでの待ち時間」。
ここがテンポと噛み合うと、声やスネアが潰れにくく、距離感が作りやすいです。
- 歌やスネアの輪郭を残したい→プリディレイを少し長め
- 近い部屋鳴りっぽくしたい→短め
テンポを基準にした値から始めると、迷子になりにくい。
3) コンプレッサー/ゲートの“時間”をテンポ感に寄せられる
アタック/リリースはms指定が基本です。
特に速いテンポほど、適当な値だと「潰れすぎる」「戻りが遅くてポンピングする」などが起きやすい。
- リリースが長すぎて次の音まで戻らない
- 短すぎてバタつく
ここも拍をmsにしておくと、「今いじってる時間が曲のどこに相当するか」を把握できます。
4) LFOやオートメーションの周期を“曲に同期”できる
テンポ同期がないLFO(オートパン/トレモロ/フィルター)でも、周期がmsやHzなら合わせられます。
“なんとなく揺れてる”から、“拍で揺れてる”に変えられるのが実務的に大きい。
5) ステレオの広がり・ダブリング・タイミング補正が速くなる
ダブリング、ADT、マイクのタイムアライメント、ボーカルの手動ダブルなど、
「数十msの差」が効く領域は多いです。
- 10〜30ms:厚み(ダブル感)
- 50〜120ms:スラップ的な距離感
ここにテンポの視点が入ると、「曲に対して長すぎ/短すぎ」を判断しやすくなります。
要するに、BPM⇄msec換算は「試験用の計算」じゃなくて、DTMで“時間を数値で扱う”ための共通言語です。テンポ同期だけで済む人もいるけど、数値で狙いを作りたい人には武器になります。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
