今回のテーマは、アナログMTR時代の「超低域の扱い」です。現代のDAW環境に慣れていると、つい「超低域はEQのハイパス・フィルターでカットするもの」という感覚になりがちですが、アナログMTR全盛期には、そもそも機器の特性として超低域が自然に減衰していた、という前提があります。
この問題では、「なぜアナログMTR時代には超低域が大きな問題になりにくかったのか」という背景を押さえつつ、デジタル時代のEQ運用との違いまでイメージできるようになることを目指します。アナログの特性を理解しておくと、「なぜ今のミックスでは、昔以上にハイパスの設計が重要なのか」が腑に落ちやすくなります。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅢ 第12問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第12問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
アナログMTR時代のサブソニック(超低域)=減衰
※機器とテープの性質でサブソニック(超低域)が自然に落ちる
対話講義(Q&A)|アナログMTRと超低域の減衰
サウンド先生
じゃあタカミックス君。まずはストレートに聞くよ。(12)に入る語句、どれが一番しっくりくる?
タカミックス
うーん……「ゼロに」は言い過ぎな気がします。完全にゼロになることってあります?
「増加」は逆っぽいし……「中和」もよく分からないです。
残るのは「減衰」ですが、これが正解なんですか?
サウンド先生
正解は 「減衰」 だね。
ポイントは「アナログMTRで録っていた時代は、超低域が“残りやすい”どころか、むしろ“自然に弱くなりやすい”側に寄っていた」ということ。
タカミックス
でも、今ってミックスの最初にハイパスで超低域を整理するじゃないですか。
昔も同じように、EQで切ってたんですか?
サウンド先生
そこがこの問題の肝。
もちろん昔もEQは使うけど、現代のDAWほど「録音からミックスまでずっと広帯域でフラット」じゃない。
アナログMTRは、録音・再生の途中にいろんな回路や部品が挟まるから、結果として超低域は通りにくくなる傾向がある。
タカミックス
いろんな部品って、具体的には何ですか?
サウンド先生
代表例を挙げると、トランス、カップリング・コンデンサー、アンプ回路、それからテープヘッドやテープそのもの。
どれも“理屈の上では”帯域を制限する要因になり得る。
だから超低域は、何もしなくてもじわっと落ちていきやすい。
タカミックス
なるほど……。じゃあ昔は「超低域が暴れてミックスが重くなる」みたいなことは起きにくかったってことですか?
サウンド先生
起きにくかった、が正確だね。ゼロじゃない。
ただ、現代のDAWは良くも悪くも低い帯域まで残る。
だから、昔は機器側が勝手にやってくれていた“整理”を、今は自分で設計してやる必要が出てきた。
タカミックス
つまり、この問題文の「問題にはならなかった」は、「勝手に減衰してたから、致命的なトラブルになりにくかった」って意味なんですね。
サウンド先生
そういうこと。
そして試験としては、その現象を表す語が「減衰」かどうか、そこを問うている。
タカミックス
了解です。
「アナログMTR時代は超低域が減衰しやすかった」──これが暗記ポイントですね。
サウンド先生
その通り!
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅢ 第12問の正解
アナログMTRではサブソニック(超低域)が自然に減衰していた
一言まとめ
デジタル録音では超低域がほぼそのまま記録されるため、アナログ時代以上にハイパスで意識的に管理する必要がある。
なぜその答えになるのか(メカニズム)
この問題が言いたいのは、アナログMTRと現代のデジタル録音では「超低域に対する振る舞い」が根本的に違う、という点です。
アナログMTRの録音・再生チェーンには、入力段のトランスやカップリング・コンデンサー、アンプ回路、テープヘッド、再生側のイコライゼーション回路など、信号が通る要素が多数直列に存在します。これらは理想的にフラットではなく、実際には少しずつ高域・低域を削る方向に働きます。特に超低域は、DC成分である0Hz(直流、中心のズレ)の遮断(カップリング・コンデンサー)やトランスの特性によって、ハイパス的に自然減衰しやすくなります。
さらにテープヘッドは物理的なギャップを持つ磁気ヘッドのため、極端に低い周波数のように「変化が遅すぎる成分」は記録・再生の効率が落ち、結果的にレベルが下がりやすい構造です。テープ自体の磁気特性も含め、測定上は可聴帯域をカバーしていても、サブソニックに近い帯域は“残りにくい”方向の誤差を持ちます。
一方、現代のデジタル録音は、マイクプリからA/D、DAW内部処理まで広帯域でフラットであることが前提です。つまり、アナログでは目立ちにくかった超低域の揺れや不要な低周波ノイズも、加工しない限りそのまま記録されやすい。だからこそデジタル時代では、意図しない超低域をハイパスで整理する運用が重要になります。
以上より、アナログMTRでは構造上「超低域が出にくい/残りにくい」ため、超低域が原因でミックスやマスタリングが破綻しにくかった──この状況を端的に言い換えたのが「超低域の特性は減衰しているので問題にはなりにくかった」という表現であり、そこから答えが導けます。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
- 増加
増加は、アナログMTRの実際の挙動と逆の意味になります。もし超低域が増加していたなら、アナログ時代の方が低域の扱いに苦労していたはずで、問題文の「問題にはならなかった」という記述と矛盾します。
- 中和
中和は、オーディオ特性を表す用語として一般的ではありません。化学反応などでは使われますが、周波数特性の状態を「中和している」と表現することはまずありません。この点からも不自然です。
- ゼロ
ゼロは、現実的ではない極端な表現です。どんな録音系でも完全にゼロになることはなく、特にアナログ機器は物理的な制約から「ある程度減る」ことはあっても、完全にゼロにはなりません。したがって、「アナログMTRの超低域特性」を説明する選択肢としては不適切です。
実務・DTMへの応用
DTM環境では、オーディオインターフェースやプラグインEQの特性が非常にフラットで、マイクやライン入力から入ってきた超低域がほぼそのまま記録されます。キックやベース以外にも、ボーカルのポップノイズ、スタンドの揺れ、空調や建物の揺れなど、アナログ時代よりも多くの要素が超低域として「見える化」されてしまう状態です。
このため、現代のミックスでは「アナログ時代に機材が勝手にやってくれていた減衰」を、自分でEQのハイパスやローカットで設計し直す必要があります。例えば、ミックスバスやマスターバスには20〜30Hz付近にゆるやかなハイパスを入れておき、個別トラックのボーカルやギターにはもっと高い周波数からハイパスを設定して、不要な揺れやモコモコした成分を整理していく、という考え方です。
ここを理解しておくと、「なぜローカットが効くのか」「なぜ低域が濁るのか」が整理できます。
アナログは自然に減衰しやすかった一方、デジタルは不要な超低域も残りやすいので、意図してHPFで管理する──この考え方が軸になります。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
