今回扱うのは、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第10問】、シンセサイザーとクラシック音楽が交差する「歴史モノ」の問題です。
アナログ・シンセサイザー全盛期に、冨田勲がドビュッシーの名曲を丸ごとシンセで作り上げ、世界中のレコード制作者を驚かせた──というエピソードを題材にしています。
この問題をきちんと押さえると、単なる「有名曲クイズ」にとどまらず、「なぜこの作品が音響史・レコーディング史の中で特別扱いされるのか」という文脈までセットで頭に入ります。シンセ音源でクラシックをリメイクするときのサウンドメイク発想にも直結する内容なので、試験対策とDTMの両方で使える知識として身につけていきましょう。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅢ 第10問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第10問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
冨田勲が全編シンセで制作したドビュッシー作品=月の光
※シンセ版ドビュッシーを発表し世界中を驚かせた
対話講義(Q&A)|シンセでよみがえるクラシック
タカミックス
先生、この問題なんですけど──正直、自分は分かりません。
冨田勲って名前は聞いたことある程度で、「1974年にドビュッシーの何をシンセで丸ごと作ったか?」って言われても、選択肢を見ても判断材料がないです。
サウンド先生
それでOK。むしろ普通だよ。
この問題は「知っているかどうか」で差がつきやすい“歴史系”だから、知らない人が悩んでも答えは出にくい。
タカミックス
ですよね…。じゃあ、どうやって解けばいいんですか?
サウンド先生
問題文の条件をまとめる。
「1974年」「冨田勲」「ドビュッシー」「全編シンセサイザーで制作したアルバム」「世界的に反響」──このセットで有名な固有名詞が 『月の光』 なんだ。
タカミックス
あ、曲名としてはめちゃくちゃ有名なやつですね。ピアノ曲のイメージが強いですけど。
サウンド先生
そう。その「ピアノ曲として有名なクラシック」を、当時のシンセで全編やり切った、という点が衝撃だった。
シンセが今ほど身近じゃない時代に、音色設計や多重録音も含めて“作品として成立”させてみせたから、レコード制作者たちに強い印象を残した。
タカミックス
なるほど……だからこの問題は、音響理論より「レコーディング史・シンセ史の代表作」を知ってるか、って話なんですね。
サウンド先生
その通り。
この“1974年の象徴的な一本”という条件が「月の光」を指している、と覚えてしまっていい。
タカミックス
了解です。「1974年/冨田勲/ドビュッシー/全編シンセ=月の光」ってセットで覚えます!
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅢ 第10問の正解
月の光
一言まとめ
シンセサイザーで全編制作された冨田勲のドビュッシー作品は「月の光」。
なぜその答えになるのか(メカニズム)
この問題は、「冨田勲が何をしたか」という事実そのものを問う“歴史系”の設問です。
1970年代前半、まだシンセサイザーが現在のように身近な存在ではなかった時代に、冨田勲はモーグやアープ・シンセサイザー(ARP Synthesizer)を用いて、クラシックの名曲を全編シンセだけで構成したアルバムを制作しました。その代表例として出題されているのが、ドビュッシーの「月の光」です。
ポイントは以下の3つです。
1つめは、「ドビュッシー作品で、一般的な知名度が非常に高い曲」であること。
「月の光」はピアノ曲としても、オーケストラ編曲としても広く親しまれており、クラシック入門レベルでもよく登場します。そのため、クラシックとシンセサイザーをつなぐ象徴的な題材として取り上げやすい楽曲です。
2つめは、「シンセサイザーが“ただの新しい楽器”ではなく、音楽制作の可能性を拡張するツールであることを示した」作品であること。
弦楽器や木管楽器のニュアンスをシンセで再構築し、残響やフィルター、モジュレーションを駆使して、従来のオーケストレーションとは違うサウンドスケープを作り上げた点が、レコード制作者たちに強いインパクトを与えました。
3つめは、「世界的に“シンセでここまでできる”という可能性を提示し、電子音楽の表現力を一段押し広げた」こと。
当時のシンセは、今のように手軽に多声音やリアルなアンサンブル表現ができる時代ではありません。それでも冨田勲は、音色設計・多重録音・空間演出まで含めて“作品としての説得力”を作り切り、クラシックを素材にしながら「電子音で音楽を構築する」という発想を、世界レベルで強く印象づけました。
これらを踏まえると、「1974年/冨田勲/ドビュッシー/全編シンセサイザー」という条件から自然に導かれる答えが「月の光」となります。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
- 牧神の午後への前奏曲
「牧神の午後への前奏曲」は、管弦楽曲として非常に有名で、確かにドビュッシーらしい印象的な曲です。
こちらも冨田勲がカバーしていますが、1975年発表の「火の鳥」での作品となっており、1974年の作品ではありません。
- ノクターン
「ノクターン(夜想曲)」というタイトル自体は、ショパンをはじめ多くの作曲家が用いる一般的な名称です。ドビュッシーにも管弦楽曲《夜想曲(Nocturnes)》があります。
また冨田勲も、後年この《夜想曲》第1曲「雲(Nuages)」をシンセで制作しています。
ただし重要なのは、1974年に発表された当時のドビュッシー作品集(いわゆる『月の光』/『Snowflakes Are Dancing』)には、《夜想曲》は収録されていなかった という点です。
2012年の『月の光 Ultimate Edition』で新制作曲として《夜想曲》第1曲「雲(Nuages)」が追加されたため、情報が混ざると混乱しやすいポイントになります。よって今回の設問(1974年)では、「月の光」を優先して選ぶのが正解です。
- アルルの女
「アルルの女」はビゼー(Bizet)の作品であり、そもそもドビュッシーの曲ではありません。
作曲者の段階でこの問題文と矛盾しているため、最も早い段階で除外すべき選択肢です。「作曲者が誰か」をチェックする癖をつけておくと、こうした選択肢は瞬時に切れるようになります。
実務・DTMへの応用
実務やDTMの観点で見ると、この問題は「シンセサイザーとクラシックの距離感」を考える良いきっかけになります。冨田勲が行ったのは、オーケストラを“置き換える”発想というより、シンセならではの音色設計(エンベロープ/フィルター/モジュレーション)で、クラシックを別の音楽として“翻訳”し直すアプローチでした。
DTMでクラシック風・映画音楽風のトラックを作るときも同じで、生楽器の完全再現に寄せすぎず、「シンセの質感で再構築する」ほうが作品として強くなります。たとえば弦・木管・金管をレイヤーで組み、アタックとリリースを少しずつずらして“空気”を作り、残響やパンニング、ゆっくりしたモジュレーションの動きで現代的なサウンドスケープに仕立てる──こういう発想が、そのまま応用できます。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
