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アナログMTRで学ぶ多トラック録音術②:ストリングス&ブラスのトラック運用とサブミックス|2025年過去問解説ステップⅢ-7

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今回扱うのは「オーバーダビング(重ね録り)」です。

リズムを先に録って土台を作り、その再生を聴きながらストリングス、ブラス、コーラス、ヴォーカルを順番に追加していく──この流れは、テープ式の16トラックレコーダーの時代から、現代の録音現場でも普通に行われている制作手順です。
ただしテープ式16トラックレコーダーが主流だった時代はトラック数が有限だったぶん、「どのパートに何トラック割り当てるか」「どの順番で埋めていくか」という設計が、今よりずっとシビアに求められました。

この記事では、オーバーダビングを「録音済みの土台を聴きながら、別トラックに後から追加していく」という手順として整理します。
読み終える頃には、テープ式だった16トラックの割り当てイメージとあわせて、現代のダブルやハモり追加まで含めた“オーバーダビングの考え方”を、迷わず説明できるようになるはずです。

それでは問題を解いてみましょう!

過去問|2025年 ステップⅢ 第7問

今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第7問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。

問Ⅲ-7:アナログ(テープ式) 16トラックレコーダーでリズムセクションを約8トラックに録音したあと、ストリングスやブラスセクションにそれぞれ2トラックを割り当てて(7)を行い、最後にコーラスやヴォーカルなどを加えて16トラックを埋めていく手法がとられた。 このときの(7)に入る最も適切な語句を、次の中から1つ選びなさい。

問題=答え|暗記用ワンフレーズ

録音済みの土台に、空きトラックへ別パートを追加録音=オーバーダビング
※土台の上に重ね録り(別トラックに追加)

対話講義(Q&A)|16トラックMTRとオーバーダビング

タカミックス
先生、今回の問題なんですけど──16トラックレコーダーで、リズムセクションをまず8トラックくらい録って、そのあとストリングスやブラスに2トラックずつ割り当てて録音していくって話ですよね。
これって選択肢の「オーバーダビング」でいいんですよね?

サウンド先生
合ってる。正解はオーバーダビングだね。
ただ、ここは誤解が出やすいから前提をそろえておくよ。この問題はアナログであるテープ式16トラックレコーダー時代の運用を想定している。

意味としてのオーバーダビング自体は、昔も今も同じだ。「録音済みを聴きながら、後から演奏を追加していく」ってこと。

ただし現代のDAWは非破壊だから、テイクやトラックを増やしても元に戻せるし、後から整理もしやすい。
一方テープのMTRはトラック数が有限で、同じトラックに録れば基本は上書きになる。だから当時は、空きトラックのやりくりや録る順番の設計が今よりシビアだったんだ。

タカミックス
わかりました。
けど先生、シビアであったことは分かりましたが、それって「普通の録音」と何が違うんですか?
“オーバー”ダビングなんて、わざわざオーバーを付ける意味があったのですか?

サウンド先生
いい質問だね。
まず「普通の録音」って言い方が、実は2通りの意味で使われる。
ひとつは同録(同時録音/一発録り)。その場で同時に演奏してまとめて録るやり方。
もうひとつはマルチトラック録音。ドラム、ベース、ギター、歌を別トラックに分けて録る方式で、同時に録る場合もあれば、後から録る場合もある。

タカミックス君の言っていた”普通の録音”とはマルチトラック録音のことでは?

タカミックス
はい、僕が言ってたのはマルチトラック録音のことです。

サウンド先生
そのタカミックス君が考えていたマルチトラック録音でも同時録音でも、これら二つは“録音方式”を表している用語だ。
そして、この録音済みのトラックを再生しながら、後から別トラックに演奏を追加していく──この「後から足す」部分を切り出して呼んでいるのがオーバーダビングなんだよ。
“over”も「上書きして消す」じゃなくて、土台の上に“重ねる”というニュアンスなんだよ。

タカミックス
なるほど……僕、オーバーダビングって「既にある音の上からさらに音を重ね録りする」イメージが強かったんです。
でも実際は、重ねる音は“同じトラックに足す”んじゃなくて、空いている別トラックに追加で録るんですね。

サウンド先生
そう。既に録った土台を聴きながら、別トラックを順番に埋めていく。それがオーバーダビングなんだよ。

タカミックス
オーバーダビングとはリズムを先に8トラックで固めて、ストリングスとブラスを足して、最後にコーラスやヴォーカルまで入れて16トラックを埋める、と。

サウンド先生
その通り。しかも重要なのは、これはまだミックスダウンじゃないってことだ。
ミックスダウンは録り終えた素材をまとめる工程だけど、問題文は「最後にコーラスやヴォーカルなどを加えて16トラックを埋めていく」と言っている。つまり、今まさに追加録音している最中。だから(7)はオーバーダビングになる。

タカミックス
了解です。
「オーバーダビング=録音済みを聴きながら後から足す」ですね。

サウンド先生
その通り。問題文に「先に土台を録って、その上に別パートを追加していく」と書いてあったら、反射的にオーバーダビングが出てくるようにしておこう。

詳しい解説

一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。

結論の整理

2025年 ステップⅢ 第7問の正解
オーバーダビング

一言まとめ
リズムを先に録って、その上にストリングスやブラス、コーラス、ヴォーカルを後から重ねる多重録音手法がオーバーダビング。

なぜその答えになるのか(メカニズム)

16トラックレコーダーが主流だった時代は、今のDAWのようにトラックを無制限に増やせる前提ではなく、「限られた16トラックをどう配分するか」が録音設計の核でした。今回の問題文でも、まずリズムセクションだけで約8トラックを確保し、そこを土台にしてストリングス、ブラス、コーラス、ヴォーカルを順に追加していき、最終的に16トラックを使い切る流れが示されています。

ここで行われている作業は、すでに録音済みのトラック(リズム)を再生しながら、新しいパートを別トラックに録音して積み重ねていく多重録音です。これがオーバーダビング(Overdubbing)の定義であり、キーワードは「後から別パートを重ね録りしていく」という発想そのものになります。

オーバーダビングでは、どのパートを先に録って、どれを後から足すかの優先順位も重要です。テンポやグルーヴの基準になるドラム/ベースなどを先に固め、その上にハーモニー楽器(ピアノ、ギター、ストリングス、ブラスなど)を載せ、最後にコーラスやリード・ヴォーカルを重ねる──この“録音の流れ”をイメージできると、問題文の意図が読み取りやすくなります。

問題文の手順を整理すると、

  • リズムセクションを約8トラックに録音
  • その後、ストリングスとブラスにそれぞれ2トラックを割り当てて(7)=オーバーダビングを行う
  • 最後にコーラスやヴォーカルを加えて16トラックを埋める
    という段取りです。この時点はミックスダウンではなく、あくまで録音作業の途中段階で「新しいパートを追加で録っている最中」だから、判断はミックスではなくオーバーダビングになります。

さらに、演奏をパートごとに分解して録っておくことで、ミスの修正やバランス調整に柔軟に対応できるのもオーバーダビングの大きな利点です。トラックが分かれていれば、後から各パートに対してEQ/コンプレッション/パンニングなどを個別に調整できます。一発録り(同録)とは対照的なアプローチであり、マルチトラックレコーダーが制作現場にもたらした代表的なメリットと言えます。

他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由

  • 同録
    同録は、複数のパートを「同時に」録音する手法です。
    オーケストラの一発録音や、バンドのライブ一発録りのような状況を指すことが多く、「リズムだけ先に8トラック使って録音し、その後ストリングスやブラスを足していく」という今回のフローとは明らかに異なります。
    同時ではなく「順番に重ねる」ので、同録は不適切です。
  • 外録
    外録は、スタジオの外での録音、ロケーション録音のような意味合いが強い用語です。
    問題文の焦点は「どこで録るか」ではなく、「どのような手順・手法でトラックを使っていくか」にあります。
    16トラックレコーダーのトラック割り当てと録音手順の話なので、「外録」という概念とは噛み合いません。
  • ミックスダウン
    ミックスダウンは、録り終えた複数トラックのレベルやパン、エフェクトを調整して、最終的なステレオ2トラックなどにまとめる工程です。
    つまり「録音後の作業」であり、「ストリングスやブラスに2トラックを割り当てて録音し、最後にコーラスやヴォーカルを加えて16トラックを埋める」という録音途中の状況とはフェーズが違います。
    この段階で行っているのは録音の継続=オーバーダビングなので、ミックスダウンは不正解となります。

実務・DTMへの応用

現代のDAWでも、オーバーダビングの考え方はそのまま活きています。
ドラムとベースを先にクリックと一緒に録って、そのあとリズムギターやピアノ、ストリングスの音源、ブラスの打ち込み、最後にリード・ヴォーカルやコーラスを重ねていく……というワークフローは、多くの宅録・スタジオでごく当たり前に使われています。

トラック数に余裕のある環境では意識しにくいですが、サウンドレコーディング技術認定試験では「トラックをどういう順番で、どんな役割で埋めていくか」が問われることが多いです。
例えば、
・まず“グルーヴの基準”になるリズムセクションを録る
・その上にハーモニーやパッド的な役割のストリングスやブラスをオーバーダビングする
・最後に主役であるヴォーカルやソロ楽器を録る
という、音楽的・技術的に自然な流れをイメージできているかどうかが、正解にたどり着くカギになります。

DTMで自分の曲を作るときも、「どのパートを先に録ると後が楽か」「どこまでを同録にして、どこからをオーバーダビングにするか」を意識しておくと、編集やミックスの自由度が大きく変わります。
今回の問題をきっかけに、「オーバーダビング=単にトラックを増やす操作」ではなく、「録音の設計思想そのもの」として捉え直しておくと良いでしょう。

過去問出題年・関連リンク

出題年度:現在調査中(後日追記予定)

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