アナログテープレコーダー(Analog Tape Recorder)の問題では、「録音バイアス(Recording Bias)を変えると、どの帯域の再生特性がどう変化するのか」が頻出テーマです。この記事では、2025年ステップⅡ 第18問を題材に、「バイアスを深くしていったときに、どの帯域から“じわじわ”悪くなるのか」という感覚をつかんでいきます。
読み終えたときには、「録音バイアス量を増やしていったときに、まずどの帯域の特性が落ち始めるのか」を、グラフなしでも頭の中でイメージできるようになるはずです。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅡ 第18問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅡ 第18問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
「録音バイアスを深くしていくと徐々に落ちていく帯域」=「高域」
※深すぎバイアス=高域から先に落ちる
対話講義(Q&A)|録音バイアスと高域が落ちる理由
タカミックス
先生、アナログテープレコーダーの録音バイアス(Recording Bias)って、深くしていくと音が「良くなる」イメージがあるんですが、この問題では「ある帯域の再生特性が徐々に低下する」って書いてあって混乱します。
サウンド先生
いいところに気づいたね。録音バイアスは、浅すぎても深すぎてもダメで、「ちょうどいいポイント」を超えると、むしろ音が崩れていくんだ。
タカミックス
選択肢は「低域・高域・歪率・音量」でしたよね。どれもそれっぽく見えますけど…。
サウンド先生
まずイメージとして、バイアスを浅いところから少しずつ深くしていくとどうなるかを考えよう。
最初は歪(ひず)みが減って音もクリアになり、高域も伸びていく。でも、あるところを境に、今度は高域が「少しずつ」落ち始める。
タカミックス
つまり、「徐々に低下していく」のは高域ってことですか?
サウンド先生
そう。録音バイアスが深くなると、テープ上で高域成分がちゃんと記録されにくくなっていく。だから高域再生特性が、なだらかに下がっていくイメージになるんだ。
タカミックス
じゃあ「歪率」はどう絡むんですか? 選択肢にありましたよね。
サウンド先生
歪率(Distortion)は、バイアスが浅すぎるときに大きくて、適正付近でぐっと下がる。そして、必要以上に深くしすぎると、別の問題として「急激に悪化」するフェーズが出てくる。
今回の問題文は「徐々に低下していく帯域はどこ?」と聞いているから、「段階的に落ちる高域」が正解になる。
タカミックス
なるほど。「徐々に落ちる」フェーズでは高域、「極端に悪化する」フェーズでは別の特性、というふうに問題が分かれて出る、ってことですね。
サウンド先生
その通り。この問題では、録音バイアスを深くしていったときの「最初の副作用」として、高域特性がなだらかに悪くなっていくイメージを押さえておけばOKだよ。
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここでは、答えにたどり着くまでの考え方を整理しながら、似たテーマの問題にも応用できるようにしていきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅡ 第18問の正解
録音バイアスを深くしていくと、まず「高域」の再生特性が徐々に低下していく。
一言まとめ
録音バイアスが深くなりすぎたときは、高域から先にじわじわ落ちていく、と覚えておく。
なぜその答えになるのか(メカニズム)
録音バイアスは、テープの磁性体を「よりリニアに」使うための高周波成分ですが、その量を増やすほど常に良くなるわけではありません。磁化の動作点が適正から外れると、特に高周波成分の記録効率が下がり、高域の再生特性がロールオフしていきます。
高域成分は波長が短いため、テープ上での記録条件に敏感です。録音バイアスが過剰になると、
- 高域の磁化が十分に残らず、結果として再生時のレベルが下がる
- テープ速度やヘッドギャップ幅などとの組み合わせで、特に高域から先に影響が出やすい
といった理由から、「徐々に低下していく帯域」として高域を選ぶのが筋の通った解釈になります。
録音バイアス(Recording Bias)とは何か
アナログテープ録音では、オーディオ信号そのままをテープに印加すると、磁性体の磁化特性が非線形なために歪が多くなります。
そこで、人間には聞こえない高周波成分(録音バイアス)を加えて、磁化の動作点を「なるべく直線的になる領域」に押し上げることで、結果としてオーディオ信号をより素直に録音できるようにします。
ざっくりいうと
- バイアスが浅い:歪(Distortion)が多い、高域もまだ十分に伸びきらない
- バイアスを深くしていく:歪が減り、高域も伸びてきて音が整ってくる
- さらに深くしすぎる:今度は高域の再生特性が少しずつ落ち始める
という「山型カーブ」のような挙動になります。
高域特性が「徐々に」低下するイメージ
録音バイアスを適正値よりも少し深くしていくと、テープ上での高域成分の記録効率が下がっていき、高域のレベルが徐々にロールオフしていきます。
ここで押さえたいポイントは
- いきなりドンと落ちるのではなく、なだらかに高域から先に削られていく
- 低域側はこの段階ではそこまで大きく変化しない
- 「バイアスを深くしすぎるとまず高域が犠牲になる」と覚えると分かりやすい
という流れです。
問題文の「録音バイアス量を深くしていくと、ある帯域の再生特性が徐々に低下していく」という表現は、まさにこの「高域ロールオフがじわじわ進む」状態を言い換えたものだと捉えるとスッキリします。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
- 低域
- 低域は波長が長く、ヘッドやテープ条件の影響を受けにくい帯域です。
- 録音バイアスを多少深くしても、「徐々に低下」といった明確な変化の主役にはなりにくく、この問題の文脈には合いません。
- 歪率
- 歪率(Distortion)は、バイアスが浅いときに大きく、適正付近でぐっと下がり、その後の「深すぎゾーン」で別の形で悪化していきます。
- しかし問題文は「ある帯域の再生特性が徐々に低下」と、周波数帯域の話をしているので、量的な歪ではなく「帯域特性」を答えるべきです。
- 音量
- 全体の音量もバイアス量の変化で多少の影響は受けますが、「ある帯域の再生特性が徐々に低下」という表現とはズレがあります。
- 音量は帯域に限定された話ではないため、この設問のキーワードとは噛み合いません。
実務・DTMへの応用
DTM環境では、実機のアナログテープレコーダーを使わなくても、テープシミュレーター系プラグインに「Bias」パラメータが付いていることがあります。
- Bias を少しずつ深くしていくと
- あるポイントまでは「ハイファイ寄り」に整っていく
- そこから先は、高域が少しずつ丸く、暗くなっていく
という挙動を耳で確認しておくと、この問題のイメージが一気にクリアになります。
実務的には
- バキッとした高域が欲しいときは、Bias を深くしすぎない
- あえて高域を丸くして「ヴィンテージ感」を出したいときは、Bias を少し深めにして耳でチェックする
といった調整が役立ちます。サウンドレコーディング技術認定試験の他の問題(録音バイアス関連、テープの高域特性関連)ともリンクして出題されやすいテーマなので、「深すぎバイアス=高域が先に落ちる」という感覚をDTMで体験しておくと、試験でも迷いにくくなります。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
