マイクの指向性は「鋭ければ良い」と思われがちだが、実はそう単純ではないのです。
指向性を鋭くしていくと、背面方向にも感度を持つようになり、不要な音を拾ってしまうことがあるからです。
この回では、背面に雑音がある環境で“狙った音だけを正確に収音する”には、どの指向性が最適なのかを確認していきましょう。
2025年問題ステップⅡ問題10
今回の問題はサウンドレコーディング技術認定試験の【2025年 ステップⅡ 第11問】をアレンジして出題しております。この試験では定番テーマの再出題が多く、過去問学習が最短ルートとなっております。
対話講義(Q&A)|狙った音とは?
タカミックス
先生、マイクの指向性について少しずつ理解ができるようになってきました。今回の問題もカーディオイドの方が“狙った音”を拾いやすいんですよね?
サウンド先生
う〜ん、状況次第と言えるが認識はあってるよ。
カーディオイドは真後ろ(180°)の感度が最も低く、背面にノイズ源がある現場で扱いやすく、狙いを外しにくい。
一方、スーパーカーディオイドやハイパーカーディオイドは指向性が鋭いぶん左右(90°付近)からの回り込みに強い。ただし真後ろに小さな感度ローブが生じるため、背面に音源があると拾いやすくなることがある。
つまり「鋭いほど常に有利」ではなく、配置で使い分けるのが本質だ。背面に強いノイズがあるならカーディオイド、左右に他楽器が迫るならスーパーカーディオイド/ハイパーカーディオイドが有効になる。
タカミックス
なるほど…。じゃあ“鋭いほど有利”ではなく、配置次第なんですね。
ヌル点とは
サウンド先生
その通り。──ところでタカミックス君、ヌル点については分かっているかな?
タカミックス
いえ、わかりません。
サウンド先生
では説明しよう。ヌル点はマイク指向性を理解するうえで極めて重要だ。
要点は3つだけ覚えればいい。
- 定義
ヌル点=感度が最小になる角度。ここに“混入させたくない音源”が来ると最も拾いにくくなる。 - 代表的な角度(目安)
- カーディオイド:180°(真後ろ)
- スーパーカーディオイド:約125°(左右後方)
- ハイパーカーディオイド:約110°(左右後方やや前寄り)
- 現場での当て方
- 真後ろ(180°)にドラムやモニタースピーカー → カーディオイドで対処(180°が最小感度)。
- 左右後方(約110〜130°)にギターアンプや客席のざわめき → スーパー/ハイパーを選び、その角度のヌルを向ける。
- シンガーがよく動く/背面が静か → オフ軸変化が小さいカーディオイド寄りが安定。
タカミックス
つまり「どの指向性が強いか」じゃなくて「ヌルを何に向けるか」で決める、と。
サウンド先生
その理解でいい。補足すると──
- スーパー/ハイパーは“後ろを切るマイク”ではない。真後ろはむしろ上がりがちで、その代わりに左右後方にヌルが来る。
- 「背面がうるさい」ならカーディオイド、「斜め後ろがうるさい」ならスーパー/ハイパー。これが現場の最短手順だ。
タカミックス
腹落ちしました。ヌル点の位置で選ぶ──覚えます!
まとめ
- 「鋭いほど常に有利」は誤り。配置に応じて使い分けるのが本質。
- カーディオイド:真後ろ(180°)が最小感度。背面にノイズ源がある現場で安定。
- スーパーカーディオイド/ハイパーカーディオイド:左右(90°付近)からの漏れ込みに強いが、真後ろに小さな感度ローブが出るため背面音源は拾いやすくなる。
ヌル点のまとめ
- 定義:感度が最小になる角度。ここに「混入させたくない音源」を向けると最も拾いにくい。
- 代表角度(目安):
カーディオイド:180°(真後ろ)
スーパーカーディオイド:約125°(左右後方)
ハイパーカーディオイド:約110°(左右後方寄り) - 実務での当て方:
背面180°にドラム/モニター → カーディオイドのヌルを背面へ
左右後方110–130°にギターアンプ/客席ざわめき → スーパー/ハイパーのヌルを該当方向へ
注意点:スーパー/ハイパーは“後ろを切るマイク”ではない。真後ろは上がりがちで、代わりに左右後方にヌルが来る。
過去問出題年
検証中(今後追記予定)
