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録音技術の黎明をたどる④:真空管発明と録音革命|2025年過去問解説ステップⅣ-21

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この回では、電気マイク登場以前の古い録音方式である「ラッパ吹込み(アコースティック録音)」について、実際にどのくらいの周波数帯域しか記録できなかったのかを整理します。ここで言う「ラッパ」は比喩的な呼び名で、楽器としてのラッパ(トランペット等)を録音する話ではありません。

また「アコースティック」と付くからといって、アコースティックギターを録る方式という意味でもなく、音を電気信号に変換せず、ホーン→振動板→針の機械系で原盤へ直接刻み込む録音方法を指します。大きなホーンに向かって演奏者が“吹き込む”あのスタイルは、見た目のインパクトに反して、音質面ではかなり厳しい制約を抱えていました。

ここで確認したいのは、「この録音方式では、実際にどの程度の周波数帯域までしか記録できなかったのか?」、そして 「音量やバランスの調整は、どんな手段に頼らざるを得なかったのか?」 という点です。

この問いを起点に、電気録音へ移行したことで何が劇的に変わったのかも、イメージで掴んでおきましょう。

過去問|2025年 ステップⅣ 第21問

今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅣ 第21問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。

問Ⅳ-21:初期のアコースティック録音では、大きいラッパに向かって吹き込む「ラッパ吹込み」方法が用いられていた。録音可能な周波数帯域は(21)に限られ、音量を自由に調整できなかったため、録音技師の経験と勘に大きく依存していた。 このときの周波数帯域(21)として、最も適切なものを次の中から1つ選びなさい。

問題=答え|暗記用ワンフレーズ

アコースティック録音ラッパ吹込みの周波数帯域=300Hz~3kHz
※電話並みの中域だけ(低音と高音はほぼ削られる)

対話講義(Q&A)|ラッパ吹込みと周波数帯域

サウンド先生
まず問題文にある「アコースティック録音」や「ラッパ吹込み」についてだ。マイクもアンプも使わず、音の振動を、そのまま振動板→針で原盤に刻んでいた録音方法がアコースティック録音だ。そして「ラッパ吹込み」とは、トランペットみたいな“ラッパ”の音を録る話じゃない。ここでのラッパは録音用のホーン(集音口)のこだと。

このラッパ吹き込みというのは商業録音の主流としては1925年ごろまで使われて、そこからマイクを使う電気録音が一気に置き換わっていったんだよ。

タカミックス
へぇ〜、それは知りませんでした。

サウンド先生
で、この方式は音(空気の振動)をラッパで集めて、ダイアフラム(薄い膜)を物理的に揺らし、その揺れを針の動きに変えて、ワックスなどに溝として刻む方式なんだ。なので非常にアナログな方式であるため録音においては低域も高域も伸びない

だから帯域が狭い、という前提になってしまうんだ。

タカミックス
とは言え、選択肢を見ても正解がわかりません。

サウンド先生
まぁ、それはそうだろうね。
先に答えなんだが、正解は300Hz~3kHzだ。

タカミックス
300Hz~3kHzだけだとピンと来ないです。これって現実にどの辺の音域なんですか?

サウンド先生
ざっくり言うと、300Hzはピアノで言えば「真ん中あたり(ド真ん中より少し下〜真ん中)」の帯域からで、3kHzはかなり高い方。つまり“中域だけは残る”って感じだね。

タカミックス
うーん……「真ん中あたり」と言われても、まだ具体的なイメージが出にくいですね。

サウンド先生
OK、じゃあ日常音で説明するよ。いちばん近いのは駅のアナウンスだと思っていい。

タカミックス
駅のアナウンス、ですか?

サウンド先生
そう。駅のアナウンスって、音楽として気持ちよく鳴らす目的じゃなくて、「言葉を聞き取らせる」のが目的だよね。だから音はだいたい中域が前に出て、低域と高域は控えめになる。

タカミックス
確かに、たまに音楽が流れる時もありますが重低音は感じませんね。

サウンド先生
アコースティック録音の300Hz~3kHzって、ざっくり言うと「駅のアナウンスみたいに会話が成立する帯域が中心」なんだ。
なので、ここより下に多い迫力の土台(低域)と、ここより上に多い空気感やきらめき(高域)が削れやすい。タカミックス君が言うように音楽が流れても重低音までは感じないんだよ。

タカミックス
数字だけだった帯域が、駅のアナウンスのイメージに置き換わったので一気に分かりやすくなりました。

サウンド先生
この300Hz~3kHzという正解と合わせて「1925年ごろまで主流だった古い方式」って時代感もセットで押さえておこう。

詳しい解説

一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。

結論の整理

2025年 ステップⅣ 第21問の正解 
300Hz~3kHz

一言まとめ 
初期アコースティック録音のラッパ吹込みは、電話並みの狭い中域(300Hz~3kHz)しか実用的に録れず、録音技師の経験と勘に大きく依存していた。

なぜその答えになるのか(メカニズム)

アコースティック録音では、音のエネルギーをラッパで集めてダイアフラム(マイク/スピーカーの振動板)に伝え、その機械的な動きを針に伝えて盤に溝として刻んでいました。電気的な増幅が一切ないため、物理的に扱いやすい帯域だけが相対的に強く残り、それ以外の低域・高域は大きく削られてしまいます。

低域(20Hz~数百Hz)は、音のエネルギーとしては大きいものの、ラッパと機械系の慣性や構造上の制約のため、細かい変化をそのまま溝に刻むのが難しく、ノイズや歪みの原因にもなりやすい領域です。高域(数kHz以上)は、今度はラッパやダイアグラムの構造的な限界で伝わりにくく、結果としてロールオフしてしまいます。

そのため、初期アコースティック録音で比較的素直に伝わりやすかった帯域は、声の明瞭度に関わる中域、ざっくり 300Hz~3kHz 前後の範囲でした。電話の音質が同程度の帯域に設計されているのも、「人の声の情報を最低限確保する帯域」に割り切っているからであり、ラッパ吹込みの録音も同様に「声の情報は分かるが、音楽としてはかなり帯域が削られている」状態だったとイメージすれば理解しやすくなります。

他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由

  • 20Hz~10kHz
    人間の可聴帯域にかなり近い広いレンジをカバーしており、現代のオーディオ機器や電気録音以降の録音システムをイメージさせる数値です。アコースティック録音時代のラッパ吹込みでここまでの帯域をカバーできていたと考えるのは非現実的であり、歴史的な技術水準とも一致しません。
  • 30Hz~20kHz
    ほぼ「現代ハイファイ」の理想的な帯域で、CDやハイレゾの世界観に近い数字です。初期アコースティック録音どころか、アナログ・テープ録音やCD登場以降のレベルを前提にした帯域であり、ラッパ吹込みの説明としては明らかに過大です。
  • 3kHz~20kHz
    高域側に偏った帯域設定で、低域のほとんどを切り捨てている数字になっています。ラッパ吹込みでは低域も確かに弱いものの、人間の声や楽器の基音を支える 300Hz〜数kHzあたりが中心となるため、「3kHzから上だけ」という設定は現実の帯域感と合いません。試験としては、「中域のみ」「電話並み」というイメージに最も近い 300Hz~3kHzを選ぶべきであり、この選択肢は不適切です。

音楽制作の一歩踏み込んだ基礎知識

1925年ごろを境に、商業録音の主役は「ラッパ吹込み(機械録音)」から「マイクを使う電気録音」へと置き換わった。ここで重要なのは、単に録音機材が新しくなったという話ではなく、音を記録する仕組みそのものが変わったという点である。

ラッパ吹込みは、録音用ホーン(ラッパ)で集めた空気の振動を、振動板に伝え、その動きを針で原盤に直接刻む方式だ。マイクもアンプも存在しないため、音は最初から最後まで「空気の振動を物理的に刻む」だけで完結していました。この方式が抱える限界は明確で、針や振動板を動かせる範囲には物理的な上限があり、特に低域と高域が録れにくい点です。低域は振幅が大きくなりやすく、安定して刻もうとすると溝の振れが過大になって破綻しやすかった。一方で高域は振動が細かすぎて、針先や機構の慣性、摩擦、材質の制約によって再現しきれず潰れやすくなっていました。結果として残りやすいのは、会話の明瞭度に直結する中域で、音の印象は「言葉は聞き取れるが、痩せて硬い」方向に寄っていたのです。

これに対して電気録音では、空気の振動をまずマイクで電気信号に変換し、必要なレベルまで増幅し、カッターヘッド(刻むための駆動部)を動かして原盤に刻むようになっています。ここでの決定的な違いは、刻む前に電気的に信号を整えられることです。機械録音では針を直接動かすしかなかったが、電気録音では、増幅によって「刻める大きさ」に持ち上げ、さらに帯域のバランスを取りながら刻めるようになりました。これにより、従来は削れやすかった低域の土台や、高域の空気感・きらめきが入りやすくなり、録音は一気に「音楽として成立しやすいレンジ」を取り戻していったのです。

この構造転換を知識として持っておくと、古い録音を聴いたときに「なぜこう聴こえるのか」が腑に落ちる。中域が前に出て、低音が薄く、高域が伸びないのは“古いから”ではなく、“刻み方が物理直結だから”だと分かるでしょう。逆に1925年以降の録音が、音のレンジや表現の自由度を急に獲得していくのも、「マイクの発明」という単発の出来事ではなく、電気で信号を扱えるようになった結果だと理解できようになります。

過去問出題年・関連リンク

出題年度:現在調査中(後日追記予定)

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