ここでは、映画館のような大空間で感じる「サラウンドに包まれる感覚」をテーマに扱います。前の問題で出てきたディフューズサラウンドは、Lss/Rssチャンネルにピンポイントな定位を持たせるダイレクトサラウンドとは違い、空間全体から音が降りそそぐような印象を作る再生方式でした。
サウンドレコーディング技術認定試験では、このディフューズサラウンドが「どんな点に優れているか」を、たった一語で言い当てられるかどうかが問われます。映画館のサラウンドを思い出しながら、「あの感覚」をちゃんと用語で説明できるようにしていきましょう。それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅢ 第24問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第24問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
ディフューズサラウンドが得意とするサラウンドの性質=包まれ感
※映画館のように音場全体から包み込まれるアンビエンス(空気感)表現
対話講義(Q&A)|ディフューズサラウンドと包まれ感
タカミックス
先生、この問題って「映画館みたいなディフューズサラウンド」って書いてありますけど……(24)ってどれが正解なんですか?
選択肢がちょっと変なのも混ざってて迷います。
サウンド先生
まず大事なのは、「ディフューズ(拡散)」って単語の方向性だね。
ディフューズサラウンドは、音を一点に立てて“そこから鳴ってる”と感じさせる方式じゃない。
タカミックス
つまり、方向や位置をピンポイントで当てさせる感じではない?
サウンド先生
そう。むしろ方向感の輪郭をぼかして、空間として包むのが得意。
だから映画館の例が出てきた時点で、狙ってるのは「包み込まれる感じ」だ。
タカミックス
アンビエンスって「空気感」って意味ですよね?
なので、そのアンビエンスをを出すのに向いてる、ってことですね。
サウンド先生
その通り。アンビエンスは“背景の空気”だから、個々の音が分離して前に出るより、場として一体化して広がった方が自然になる。
じゃあ選択肢を見よう。
タカミックス
「分離感」って、オーディオだとよく褒め言葉で聞きますけど……これは違う?
サウンド先生
ここがひっかけ。言葉としてはよく使うけど、ディフューズの狙いは分離じゃなく拡散と一体化。
「孤独感」「幽体感」は、そもそもサラウンド方式の説明語として一般的じゃない。
タカミックス
じゃあ結論は……。
サウンド先生
(24)に入るのは 包まれ感。
ディフューズサラウンド=包まれ感が強く、アンビエンス表現に向く──これをセットで覚えればOK。
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅢ 第24問の正解
包まれ感
一言まとめ
映画館のディフューズサラウンドは、観客を音場全体で包み込む「包まれ感」に優れた再生方式
なぜその答えになるのか(メカニズム)
この問題は、「映画館のようなディフューズサラウンド環境が、サラウンド再生としてどんな性質に優れているか」を、用語として言い当てられるかを問うています。映画館のサラウンドは、特定のスピーカーにピンポイントで音像を立てるよりも、壁面に分散配置された多数のスピーカーを使って、客席全体を音場で包み込むことを重視します。
したがって、ディフューズサラウンドの良さを表す言葉として最も適切なのは、「孤独感」でも「分離感」でもなく、空間全体に取り囲まれているように感じる「包まれ感」です。「アンビエンス(空気感)の表現に優れている」という問題文の記述も、この包まれ感の性質を指していると捉えると理解しやすくなります。
選択肢の「幽体感」については、ホラー映画にでもひっかけたのでしょうか?完全な引っかけの選択肢で、「幽体感」という言葉は音響も含めた音楽用語にはありません。
そもそもディフューズサラウンドの“ディフューズ(diffuse)”は「拡散する・広がる」という意味です。ここでいう拡散とは、音を特定方向に集中させるのではなく、複数のスピーカーから広く鳴らして、方向感の輪郭をあえてぼかし、空間全体へ広げることを指します。
映画館のような環境では、壁面に多数のサラウンドスピーカーが分散配置され、アンビエンス成分や環境音、残響成分などを再生します。その結果、観客は「どのスピーカーから鳴っているか」を強く意識するより、「後方一帯・側面一帯が鳴っている」と感じやすくなります。
このとき得られるのが「包まれ感」です。たとえば次のような特徴として現れます。
- 座る位置が変わっても、全体として似たサラウンド感が得られやすい
- 特定方向の音源というより、「空間全体の空気」が鳴っているように感じる
- アンビエンス、残響、環境音が自然に溶け合い、映像と一体になった没入感につながる
一方、ダイレクトサラウンドのように特定スピーカーへピンポイント定位を強く与える方式は、「どの方向から何が鳴っているか」を明瞭に示すのが得意ですが、そのぶん包まれ感よりも分離感が前に出やすくなります。
以上より、問題文が「映画館のようなディフューズサラウンド再生」「アンビエンスなどの表現に優れている」と説明している以上、ここで問われているのは「拡散されたサラウンドによる没入感=包まれ感」であり、「孤独感」「分離感」「幽体感」は当てはまりません。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
- 孤独感
音響的な用語としては不適切であり、映画館のサラウンドに求められるイメージとも明らかに逆方向です。観客を音場に包み込むことを目的としたディフューズサラウンドとは結び付きません。
- 分離感
分離感という言葉自体はオーディオの世界で一般的ですが、これは主に「各楽器や音がくっきりと聞き分けられるか」「チャンネル同士がしっかり分かれているか」といった意味で使われます。ディフューズサラウンドは、個々の音を分離させるよりも、空間として一体化させる方向に振っているため、ここで求められる性質とは逆方向です。
- 幽体感
何を意図して選択肢に入れたのかわかりません。完全なひっかけ用語です。
実務・DTMへの応用
この「ディフューズサラウンド=包まれ感(アンビエンス/空気感)」という考え方は、映画館の方式そのものをDTMで再現するというより、音楽のミックスで“奥行き”や“空気感”を設計する発想として応用できます。多くの音楽制作はステレオ前提ですが、狙いは同じで、「音を一点に立てる」より「空間として広げる」方向に寄せると包まれ感が作りやすくなります。
具体的には、ボーカルやリードなど“前に立てたい音”は輪郭を保って分離させ、アンビエンス成分は拡散させて背景に回す、という役割分担をはっきりさせます。たとえばリバーブやルーム成分を1つのバスにまとめ、複数トラックから少しずつ送って「同じ空気を共有させる」と、音が点ではなく面として広がりやすくなります。さらに返し側の低域を整理し、方向感の輪郭が立ちすぎない設定に寄せると、主役を邪魔せずに“空気感”だけを足せます。
逆に、定位をはっきり見せたいフレーズや効果音はダイレクト寄りに処理してアンビエンスとは別レイヤーに置くと、主役がぼけずに背景だけが包む構図になります。つまりDTMでは、「分離して見せたい音はダイレクト寄り」「空間として包みたい成分はディフューズ寄り」と考えて処理を分けるのが、ディフューズサラウンドの狙いを音楽制作に落とし込む最短ルートです。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
