今回のテーマは、デジタル録音の「時間のものさし」──サンプリング周波数とクロックのズレが音質に与える影響です。アナログ録音ではテープスピードの狂いが「再生速度」と「音程」に影響しましたが、デジタル録音でも本質的に同じ問題がクロックのズレとして起こります。
収録と再生でサンプリング周波数の基準がズレると、音は「何となく違う」では済まないレベルで変化します。この問題では、その中でも特に押さえるべきポイントが問われています。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅢ 第15問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第15問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
サンプリング周波数のズレによる変化=音程
※時間のものさしが狂うとピッチも一緒に動く
対話講義(Q&A)|クロックズレで音程が変わる理由
タカミックス
先生、この問題なんですけど……「デジタル録音では一定のサンプリング周波数(時間間隔)でデータ化するための基準が不可欠」ってありますよね。
で、「収録時と再生時で基準となる時間が違うと、収録された音の長さや(15)が変化する」って……(15)が音程って、直感的にピンとこなくて。
サウンド先生
そこがこの問題の核心だね。まず前提として、デジタル録音って「音を一定間隔で刻んで記録する」方式だろ?
その“刻む間隔”を決めてるのが、サンプリング周波数=時間のものさしなんだ。
タカミックス
時間のものさし……って、録音中は1秒をちゃんと1秒として数えてますよ、みたいな?
サウンド先生
そう。録音時は「1秒の中に何回サンプルを取るか」を決めて、それを基準に音を並べて保存する。
ところが再生時の“1秒”が別の速さで進んでしまうと、保存されているサンプル列を本来の速度じゃない速度で読み出すことになる。
タカミックス
読み出す速度が変わると……長さが変わるのは分かるんですけど、なんで音程まで変わるんですか?
サウンド先生
いい反応。ここで感覚としては、クロックって“Hzみたいなもの”だと思っていい。
タカミックス
Hzみたいなもの……?
サウンド先生
Hzは「1秒あたりの振動回数」だよね。振動回数が多いほど音程は高く、少ないほど低い。
で、再生側の時間の進みが速いと、同じデータでも短い時間で全部を読み終える。
つまり波形がギュッと詰まって、見かけの振動回数が増える。だから音程が上がる。
逆に時間の進みが遅いと、波形が伸びて振動回数が減るから、音程が下がる。
タカミックス
あ、じゃあ「テンポが変わる」のと「音程が変わる」って、同じ現象の別の見え方みたいな感じなんですね。
サウンド先生
そうそう。もっと正確に言うと、これは「テンポ」だけの話じゃなくて、波形そのものが時間方向に伸び縮みする話。
波形が伸び縮みすれば、周期(=1回振動するのにかかる時間)も変わる。
周期が変わるってことは、周波数が変わる。周波数が変わるってことは、音程が変わる。
タカミックス
なるほど……「時間のものさし」がズレると、全部がズレるんですね。
サウンド先生
そこで暗記用ワンフレーズをここで使おうか。
「サンプリング周波数のズレによる変化=音程」
※時間のものさしが狂うとピッチも一緒に動く
これが、この問題の答えを一発で引っ張り出すための軸になる。
タカミックス
たしかに、時間が狂ったら周波数も狂う──って言われると、音程が変わるのは必然ですね。
実際の現場だと、どういう時に起きるんですか?
サウンド先生
例えば、外部クロックに同期して録ったのに、再生時は別のクロック基準で動かしてしまったとか、機器間の同期が外れて録音・再生が別基準になったとかだね。
要するに「収録時のサンプリング周波数」と「再生時のサンプリング周波数」が一致してない状態。
その瞬間、音は伸び縮みして、同時に音程も動く。
タカミックス
よし、腹落ちしました。
(15)は音程。時間のものさしがズレたら、ピッチも一緒にズレる……ですね。
サウンド先生
それでOK。ここを押さえると、この手の問題は迷わなくなるよ。
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅢ 第15問の正解
音程
一言まとめ
デジタル録音ではクロックのズレがあると、音の長さと一緒に音程まで変化してしまうため、収録と再生で同じ時間基準を共有することが絶対条件になる。
なぜその答えになるのか(メカニズム)
デジタル録音では、サンプリング周波数が「時間のものさし」になります。録音時と再生時でこの基準が一致していないと、保存されている波形を本来と違う速度で読み出すことになり、結果として音が“速回し/スロー再生”されます。
音が速く再生されれば波形は時間方向に圧縮され、周波数(=音程)は上がります。逆に遅く再生されれば波形は伸び、周波数(=音程)は下がります。
これはアナログMTRでテープスピードを変えると音程が変わるのと同じで、デジタルでも時間軸が伸び縮みすればピッチも一緒に動きます。つまり、「サンプリング周波数のズレによる変化=音程」、「時間のものさしが狂うとピッチも一緒に動く」ということです。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
- リズムパターン
クロックのズレによって再生時間全体が伸び縮みすると、曲全体のテンポが変化したように感じられることはあります。しかし、リズムパターンそのもの──どこにキックが来て、どこにスネアが来るかという「配置」──は変わりません。時間スケールが一様に伸び縮みするだけなので、「リズムパターンが変化する」と言ってしまうのは少し的外れです。
- 楽器
サンプリング周波数やクロックは、波形の時間軸を決めているだけで、音色の「種類」そのものを変えるものではありません。ギターはギターのまま、ピアノはピアノのままです。クロックのズレで「楽器」そのものが別のものに変わることはなく、この選択肢は明らかに不適切です。
- 和声
複数のパートを別々のクロックで処理してしまった場合、相対的な音程関係が崩れて「和声が濁る」現象は起こり得ます。しかし、この問題文では「収録された音の長さや(15)が変化してしまう」と、一つの音の基本的な属性として聞く文脈になっています。その場合、まず押さえるべきなのは「音程」という個々の音の高さであり、「和声」は複数音の関係性に関する派生的な結果です。したがって、優先して選ぶべき答えではありません。
実務・DTMへの応用
この問題の「時間のものさし(サンプリング周波数/クロック)」のズレは、実務では「音程が勝手に変わる事故」として出ます。テンポだけが変わるのではなく、波形が時間方向に伸び縮みするので、周波数も一緒に変化し、結果としてピッチが動きます。つまり、サンプリング周波数のズレによる変化=音程、時間のものさしが狂うとピッチも一緒に動く──これをそのまま現場の合言葉として持っておくのが一番効きます。
具体的には、外部機器をデジタル接続して録った素材を後で再生したらピッチが合わない、プロジェクトのサンプルレートと素材の前提が噛み合っていなくて再生が上ずる/下がる、同期が取れていない状態で録れてしまい「録音はできたのに後で合わない」といった形で現れます。こういうとき、耳の違和感だけで判断すると遅いので、録った直後に基準音(チューナーで確認できる音、サイン波、鍵盤のAなど)でピッチを即チェックする、既存トラックとユニゾンで重ねてうねりが出ないかを見る、といった“早期発見の型”を持っておくと被害が広がりません。ピッチがズレると同時に尺や発音タイミングもズレがちなので、音程と長さの両方をセットで疑うのがコツです。
予防の基本は単純で、プロジェクトのサンプルレートを最初に決めて固定し、デジタル接続を使うならクロックの主従関係を曖昧にしないことです。素材の受け渡しではサンプルレートを明記する癖をつけるだけで、後工程の誤読が激減します。もし事故が起きた場合も、最初に疑うべきはピッチ補正ではなく「読み取り条件」です。ズレた時間のものさしで再生しているだけなら、正しい条件で変換し直すことで音程と長さが一緒に正規化されます。逆に、録音段階で同期が崩れていたなら、忖度なしに言うと再録が最短です。ピッチだけ直しても、タイミングの違和感や音質面のダメージが残ることがあるからです。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
