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AM放送に学ぶリミッター運用術②:AM放送のダイナミックレンジと数値感覚|2025年過去問解説ステップⅢ-3

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今回扱うのは、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第3問】、ラヴェル(Maurice Ravel)作曲「ボレロ」とAM放送のダイナミックレンジに関する問題です。クラシックの代表的な名曲を、かなりレンジの狭いAM放送の枠の中にどう収めるか──という「実務寄りの感覚」が問われています。

この問題の本質は、「曲そのもののダイナミックレンジ」と「メディアとしてのAM放送の実用ダイナミックレンジ」を切り分けて考えられるかどうかです。読み終えた頃には、AM放送のレンジ感を具体的なdB値でイメージできるようになり、「ボレロ」以外の音源でも放送・配信用にどの程度まで圧縮すべきか、感覚を持って判断できるようになるはずです。

それでは問題を解いてみましょう!

過去問|2025年 ステップⅢ 第3問

今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第3問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。

問Ⅲ-3:ラベル作曲「ボレロ」はダイナミックレンジの大きい曲として、エンジニアの能力が試される代表的な曲である。この曲のダイナミックレンジは 100dB を超えるとされるが、ダイナミックレンジ(3)の AM 放送に合わせる必要がある。この(3)に入る最も適切な数値を、次の中から1つ選びなさい。

問題=答え|暗記用ワンフレーズ

ボレロをAM放送に合わせるダイナミックレンジ=50dB
※AM放送の実用レンジは約50dB

対話講義(Q&A)|ボレロとAM放送のダイナミックレンジ

サウンド先生
ところでタカミックス君、ラベル作曲『ボレロ』って、ちゃんと最初から最後まで聴いたことはあるかね?

タカミックス
名前は有名だから知ってるんですけど、“通してじっくり”はあんまりないですね……。

サウンド先生
今回のテーマは、“ボレロみたいにダイナミックレンジが広い曲を、AM放送という器にどう収めるか”なんだ。
一度イメージをつかんでおくと理解が早いから、一回聴いてみよう。
最初はスネアのピアニッシッシモ (ppp)、最後はオーケストラ総動員のフォルティッシッシモ(fff)まで、音量がじわじわ積み上がっていく感じを意識してね。

タカミックス
はい、確かに『小さく始まって最後に大爆発する曲』でした。

サウンド先生
曲も指揮者のテンポによって変わるけど、おおよその時間は15分前後と聴きやすい曲なんだよ。

タカミックス
で、本題のこの問題なんですけど……この曲のダイナミックレンジは 100dB を超えるとありますよね?

サウンド先生
うん、『最初はピアニッシッシモで超小さく始まって、最後はオーケストラ総動員でフォルティッシッシモまで上がりきる』という、いかにもレンジ広い曲だね。

タカミックス
で、選択肢が『30 / 50 / 80 / 100dB』なんですけど、問題文に引っ張られて100dBを選びたくなっちゃうんですよね……。

サウンド先生
そこがこの問題の罠なんだよ。『ボレロ本来のダイナミックレンジ』と『AM放送としてのダイナミックレンジ』を混ぜて考えたら負け。問題文にはちゃんと『ダイナミックレンジの大きい曲だけど、ダイナミックレンジ(3)のAM放送に合わせる必要がある』と書いてある。

タカミックス
あ、つまり『曲のレンジをそのまま100dBで流す』話じゃなくて、『AM放送という器の幅』の話なんですね。

サウンド先生
そうそう。AM放送の実用ダイナミックレンジって、受信時に乗る雑音(ノイズフロア)や受信環境を考えると、だいたい50dB前後とされる。だから試験としては『AM放送 ≒ 50dB』とセットで覚えるのが正解。

タカミックス
じゃあ、30dBはさすがに狭すぎる、80dBや100dBは広すぎてAMじゃ無理──って感じですか?

サウンド先生
その通り。30dBだと『さすがに音楽として潰しすぎ』、80〜100dBは『CDやハイレゾ、シアターサウンドの世界』に近い。AMラジオでそんなレンジを実現できるわけがないよね。

タカミックス
ということは、この問題は『AM放送の実用レンジを何dBで覚えるか』という知識問題で、答えは50dB一択と。

サウンド先生
うん。ボレロ側は100dB超えでも、放送側は50dBの枠に押し込む。その『圧縮してもそれなりにダイナミクス感を残す工夫』がエンジニアの腕の見せどころだよ。

タカミックス
なるほど……。『曲のレンジ』と『メディアのレンジ』を混同しない、ですね。試験では『AM放送=約50dB』で覚えておきます!

詳しい解説

一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここからは、対話講義で掴んだイメージを“用語と仕組み”で裏付けるパートとして、基礎は押さえた前提で少し技術寄りに整理していきましょう。

結論の整理

2025年 ステップⅢ 第3問の正解
ボレロをAM放送に合わせるダイナミックレンジは「50dB」

一言まとめ
AM放送の実用ダイナミックレンジは「およそ50dB」とセットで暗記する

なぜその答えになるのか(メカニズム)

まず「ダイナミックレンジ」とは、最も小さい有効信号レベル(ノイズフロア=受信時のサーっという雑音の底)から、最も大きい歪みなしの信号レベルまでの幅をdBで表したものです。
クラシックのオーケストラ曲、とくにラヴェル作曲「ボレロ」のように、静かに始まって最後に向けて長い時間をかけて音量が上がり続ける曲は、実演ベースで見ると100dB近いレンジになることもあります。ピアニッシッシモで始まり、ひたすら盛り上がって最後に大爆発──という構造だからです。

しかし、AM放送というメディア側には現実的な制約があります。

  • 搬送波の変調度には上限があり、オーバーすれば過変調による歪みや他チャンネルへの妨害が発生する
  • 受信側のラジオは小型スピーカーや簡易アンプが多く、再生できるレンジがそもそも広くない
  • 受信環境(屋外・車内・ノイズの多い室内など)で、あまりに小さな音は環境ノイズに埋もれてしまう

このため、放送用の音声処理チェーンでは

  • マルチバンドコンプレッサー(帯域ごとに暴れを抑える)
  • リミッター(ピーク事故の“最後の壁”)
  • AGC(平均レベルを自動で追従させる)

などを駆使して、曲本来のレンジを「AM放送で実用になる範囲」に押し込めます。その「実用レンジ」が、おおよそ50dBとされるわけです。

試験問題はそこを「ダイナミックレンジ(3)のAM放送に合わせる必要がある」と書いているので、「AM放送=50dB」がすっと出せれば勝ちです。ボレロのレンジが100dB超であっても、放送の器は50dBしかない──だから答えは50dB、という流れになります。

他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由

  • 30dB
    30dBというレンジは、電話音声やかなり強く圧縮されたBGMに近いイメージです。
    AM放送は決してハイファイ(高音質・高忠実度)ではありませんが、それでも音楽番組で30dB程度しかレンジがないと「常にペタッと張り付いた不自然な音」になります。
    試験的にも「さすがに狭すぎる」値として外すべき選択肢です。
  • 80dB
    80dBは、CDクオリティにかなり近いダイナミックレンジで、きちんとしたリスニング環境を前提にした値です。
    AMの帯域制限・ノイズ・受信環境を考えると、実用上のレンジはおよそ50dB前後に収まるため、80dBものレンジを確保するのは現実的ではありません。
    「ちょっと広すぎる値」として、放送用の実情から外れていると判断できます。
  • 100dB
    これはむしろ「ボレロ本来のダイナミックレンジ」に対応する数字で、コンサートホールやハイエンド録音メディアの世界の話です。
    問題文は「ダイナミックレンジの大きい曲だが、AM放送に合わせる」と言っているので、「曲のレンジそのもの」を指す100dBは明らかに文脈違いです。
    「ボレロ=100dB」という知識があると逆に引っかかる、典型的なひっかけ選択肢になっています。

実務・DTMへの応用

この問題は「AMラジオの話だから自分には関係ない」と切り捨てるのはもったいないです。DTMや宅録でも、「コンテンツのレンジ」と「再生環境のレンジ」を合わせるという考え方は、配信・放送にかなり共通するからです。

例えば、YouTubeや配信プラットフォーム用にミックスするときも、

スマホの内蔵スピーカー
ノイズの多い通勤電車内
小音量でのBGM再生

など、実際の再生環境はレンジが狭いことが多いです。そういう環境に向けて、極端にレンジの広い音源をそのまま出すと、静かな部分がほぼ聞こえなくなります。

一方で、機械的にレンジを狭くしすぎると、今度は曲が平板になってつまらない。だからこそ、

リミッターでピークを抑えつつ、全体の聴感を整える
サビだけ少しレンジを広げて「盛り上がり感」を出す
ポッドキャストやトーク番組では、逆にレンジをかなり狭くして「常に聞き取りやすくする」

といった「用途に応じたレンジ設計」が重要になります。

今回の「AM放送は実用上レンジが限られる」という感覚は、

ラジオ向けジングルやBGMを作るとき
車載ラジオで鳴らされる前提の音作りをするとき

にも役立ちます。「どんな再生環境の器にこの音を入れるのか?」を常に意識しておくと、ミックスの判断がブレにくくなります。

過去問出題年・関連リンク

出題年度:現在調査中(後日追記予定)

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