サウンドレコーディング技術認定試験対策講座を開始—過去問×対話形式で原則5日ごと更新!今の「分からない」を次の更新で「分かる」に変えよう!

AM放送に学ぶリミッター運用術①:ペアマイク収音と放送マスターのリミッター|2025年過去問解説ステップⅢ-2

  • URLをコピーしました!

今回扱うのは、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第2問】の問題です。
テーマはAM放送における「過変調(Overmodulation)」と、その防止のために放送マスターで使われるリミッター運用です。

放送現場では「できるだけ大きく、でも絶対に行きすぎない」レベル調整が求められます。この問題では、送信機器の保護や他チャンネルへの妨害防止と関係するキーワードを正しく選べるかどうかがポイントです。

この記事を読み終えるころには、AM放送でなぜ強烈なリミッターが必要になるのか、そして「過変調」という言葉のイメージがハッキリつかめるはずです。

それでは問題を解いてみましょう!

過去問|2025年 ステップⅢ 第2問

今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅢ 第2問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。

この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。

問Ⅲ-2:AM 放送では、(2)による送信機器保護、他チャンネルへの妨害防止などの理由から、VU メーターで −2VU から 10:1~20:1 のリミッターが放送マスターで使用される。このときの(2)に入る最も適切な語句を、次の中から1つ選びなさい。

問題=答え|暗記用ワンフレーズ

AM放送でリミッターを使う主な理由=過変調の防止
※過変調は送信機保護&他チャンネルへの妨害の元

対話講義(Q&A)|AM放送と過変調

タカミックス
サウンド先生、正直に言うと……もう最初から分かってないです。
「VUメーター」とか「−2VU」とか、「10:1~20:1のリミッター」とか、言葉が全部むずいです。
あと「送信機器保護」って、何がどう危ない話なんですか?

サウンド先生
OK。じゃあ最初からいこう。今日はこの3つが分かれば十分だ。

1つ目──VU
2つ目──リミッター
3つ目──送信機器保護(他チャンネルへの妨害防止)

順番にいくよ。

タカミックス
お願いします。VUって、そもそも何ですか?

サウンド先生
VUはね、ざっくり言うと「音量感の目安」を見るメーターだ。
瞬間的な「ドン!」より、「少し聴いたときにどれくらい大きく感じるか」を見やすい。

タカミックス
ってことは、瞬間的に跳ねた音は見逃しやすいんですか?

サウンド先生
そう。だから放送では、VUで全体の目安を作りつつ、最後は別の仕組みで“飛び出し”を止める。
それが2つ目のリミッターだ。

タカミックス
リミッターって、何をする機械なんです?

サウンド先生
リミッターは「ここから上には行かせない」ための安全装置。
急に音が大きくなっても、上に突き抜けるのを止める。

タカミックス
問題文の「10:1~20:1」って、何がどう凄いんです?

サウンド先生
数字が大きいほど、止める力が強い。
たとえば10:1なら、入力が大きくなっても出力はほとんど増えないように押さえつける。
20:1はさらに強くて、ほぼ天井に貼り付けるイメージだ。

タカミックス
なるほど……。じゃあ「−2VU」って何ですか?

サウンド先生
これは「リミッターが動き始める目安の位置」だと思っていい。
放送では0VUを上限の目安として扱うことが多い。
でも0VUギリギリまで自由にさせると、急なピークで事故が起きやすい。
だから0VUより手前の−2VUあたりから先に安全装置を働かせる。前倒しの保険だ。

タカミックス
で、最後の「送信機器保護」ってやつが一番ピンと来ないです。
音がちょっと割れるくらいじゃないんですか?

サウンド先生
AM放送では、それで済まない。ここが3つ目の核心だ。
AMは、電波の“揺れ方”で音を乗せる。
そこで音が大きすぎると、揺れ方が限界を超えて波の形がつぶれる。これが過変調(Overmodulation)だ。

タカミックス
波の形がつぶれると、何がまずいんです?
ギターでいうところのディストーションみたいなものじゃないんですか?

サウンド先生
発想は近い。どっちも“歪み”ではある。
でもギターのディストーションは、音作りとして意図的に歪ませるものだよね。

AMの過変調はそれと違って、伝送のルールを超えて壊れた歪みなんだ。
音が汚くなるだけならまだしも、過変調になると──

まず、電波の成分が本来の範囲からはみ出して、隣のチャンネルに迷惑をかける
それに送信機の出力段に無理がかかって、機器を痛める方向に行く

だから問題文に「他チャンネルへの妨害防止」「送信機器保護」って書いてある。
“音色の歪み”じゃなくて、“放送事故の歪み”を止める話なんだよ。

タカミックス
ということは……
リミッターを強くかける理由は、音を良くするためじゃなくて、事故を防ぐためで、
その事故っていうのが「過変調」なんですね。

サウンド先生
そう。まとめるとこうだ。
AM放送は、音が行きすぎると過変調になって、送信機にも周りにも被害が出る。
だから放送マスターでは、−2VUあたりから高い比率のリミッターでガチッと止める。

タカミックス
(2)は「過変調」──これで決まりですね。

詳しい解説

一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここでは、答えにたどり着くまでの考え方を整理しながら、似たテーマの問題にも応用できるようにしていきましょう。

結論の整理

2025年 ステップⅢ 第2問の正解
過変調

一言まとめ
AM放送では過変調を防ぐために、VU基準と高比率リミッターでピークをガチガチに抑える。

なぜその答えになるのか(メカニズム)

AM放送は、キャリア波(電波)の振幅を、音声信号に応じて変化させる方式です。
このとき「変調度」が100%を超えると、包絡線(電波の“山の形”)がつぶれてしまい、結果として次のような状態になります。

音としては強い歪みが発生する
周波数成分が広がり、隣接チャンネルへ電波がはみ出しやすくなる

これが過変調です。

イメージとしては、本来は振幅の範囲内で動くはずの“山の形”が、限界を超えて押しつぶされてしまう状態です。
送信機の最終段はすでに高電力で動作しているため、そこにさらに無理な変調を押し込むと、

素子の定格を超える
発熱やストレスが増える

といった点からも、機器保護の観点で絶対に避けたい状況になります。

そこで放送マスターでは、

オペレーターの基準として VUメーター −2VU くらいを天井にし
それでも突発的にオーバーしてしまう部分を、10:1〜20:1 というかなり強烈なリミッターで潰す

という二重の安全策をとります。

実質的には、「あるレベル以上はほぼそれ以上上がらない」状態を作って、過変調に到達しないよう安全マージンを確保しているわけです。

この問題文に出てくる

送信機器保護
他チャンネルへの妨害防止
高比率リミッター

というキーワードは、すべて「過変調を未然に防ぐ」ための仕組みとしてセットで押さえておくと筋が通ります。

他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由

  • 変圧
    電圧レベルを変える行為そのものを指す言葉で、「トランスで昇圧/降圧する」などの意味合い。
    送信機保護や他チャンネルへの妨害防止と直接ひもづく用語ではないので、この文脈のキーワードとしては不適切。
  • 減衰
    単純に「レベルを下げる」イメージの言葉。
    放送マスターで全体レベルを安全側に設定すること自体は「減衰」に近い発想ではあるが、問題文が問うているのは「どんな現象を防ぐためか」という現象名
    「減衰」は現象名というより操作イメージなので、この中で最も適切とは言えない。
  • 減変調
    変調度が低く、十分に振幅変化が行われていない状態をイメージさせる言葉。
    これはどちらかというと「音が小さい・元気がない」「放送として物足りない」という方向の問題であり、送信機を壊したり、他チャンネルに迷惑をかける方向とは逆。
    問題文は「保護」「妨害防止」と危険側の抑制をテーマにしているので、こちらは的外れ。

実務・DTMへの応用

この問題はAM放送の話ですが、DTMerや演奏する人が自分で音をまとめる場面でも、教訓は2つあります。

  • 「歪み=音量感」と勘違いして突っ込み過ぎないこと。歪ませただけで迫力が増えたように感じても、最終的な処理(マスター段)で潰れて逆に痩せることがあります。
  • 「平均の音量感」と「ピーク」を分けて考えること。平均を整えつつ、ピークは別枠で安全に止める。

この2つの発想だけ押さえれば十分です。

過去問出題年・関連リンク

出題年度:現在調査中(後日追記予定)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!