この記事では、サウンドレコーディング技術認定試験 2025年ステップⅡ・問Ⅱ-23を扱います。テーマは「3ウェイモニタースピーカーを複数台のパワーアンプで駆動するとき、なぜ同じ型番のアンプを使い、さらにウーファーだけBTL接続にするのか」です。
この問題の本質は、「出力」や「音圧」ではなく、ツィーター・スコーカー・ウーファーそれぞれの音質のキャラクターを揃えることがモニターとしてどれだけ重要かを理解しているかどうか、という点にあります。読み終えるころには、3ウェイ駆動のアンプ構成を見たときに「何を揃えたい設計なのか」を言語化できるようになるはずです。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅡ 第23問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅡ 第23問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
3ウェイ駆動で同型アンプを使う狙い = 音質のキャラクター
※ツィーターからウーファーまで質感を統一
対話講義(Q&A)|3ウェイスピーカーとBTLの音質キャラクター
タカミックス
先生、この問題なんですけど──3ウェイのモニターを2台のステレオパワーアンプで駆動して、ツィーターとスコーカーは普通にステレオ、ウーファーだけBTL接続にしてますよね。
選択肢を見ると「出力」「音圧」「位相」「音質のキャラクター」ってあって、BTLって出力が増えるイメージが強いから、つい「出力」とか「音圧」を選びたくなるんですが……。
サウンド先生
その直感は半分合ってて、半分ズレてるね。確かにBTL(Bridge Tied Load)接続は、同じ電源電圧でもウーファーにかけられる電圧を増やせるから、出力的な余裕を持たせる目的はある。
でもこの問題文をよく読むと、「1台目のステレオパワーアンプのL/Rチャンネルをツィーターとスコーカー用」「同じ型番のもう1台をBTL接続してウーファー用」とわざわざ書いてあるだろう? ここがポイントで、全部の帯域を同じ型番のアンプで揃えているんだ。
タカミックス
あ、なるほど。違うメーカーとか違うグレードのアンプを混ぜてないんですね。
サウンド先生
そう。3ウェイで帯域を分けると、各ユニットに別々のアンプを割り当てる「マルチアンプ駆動」になるけど、そのときにアンプの音質的なクセがバラバラだと、ツィーターとウーファーで質感がぜんぜん違うスピーカーになってしまう。
そこで、「ツィーター+スコーカー用」と「ウーファー用」を同じ型番のアンプで揃えることで、ひとつのスピーカーとしての音質のキャラクターをなるべく統一しようとしているわけ。ウーファーはどうしても必要な出力が大きいから、同じアンプをBTLで使ってパワーを稼ぎつつ、キャラクターは揃える──これが設計思想だね。
タカミックス
つまり、「出力」とか「音圧」が揃うというより、帯域ごとの“音の質感”が揃いやすくなる、って読み取らないといけないわけですね。
サウンド先生
その通り。だから、この問題の正解は「音質のキャラクター」。BTL接続はあくまでウーファー側のパワー不足を同じアンプでカバーするための手段であって、「何を揃えたいか」と問われたら音質的なキャラクターにフォーカスするのが正解になるんだ。
詳しい解説
ここから「内容理解モード」。数式・グラフ・図解・DTM例など、しっかり書くセクション。
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここでは、答えにたどり着くまでの考え方を整理しながら、似たテーマの問題にも応用できるようにしていきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅡ 第23問の正解
3ウェイスピーカーを同型アンプで駆動する狙いは「音質のキャラクター」を揃えること
一言まとめ
各帯域の音質キャラクターが揃うと、違和感の少ないフラットなモニター環境が作れる
なぜその答えになるのか(メカニズム)
3ウェイのモニタースピーカーは、一般的にツィーター(高域)、スコーカー(中域)、ウーファー(低域)に帯域を分割して駆動します。アクティブなマルチアンプ方式では、それぞれのユニットに別々のパワーアンプが割り当てられます。
このとき問題になるのが、アンプごとの音質のキャラクターの違いです。
- アンプごとに周波数特性のクセや歪み方、トランジェントの出方、ダンピングファクターなどが異なる
- 高域はスッキリしているのに、低域だけ妙にモヤっとしている
- 中高域だけ妙に「硬い」質感で、低域は柔らかく太い
こういった状態になると、モニターとしての「一体感」が損なわれ、ミックスの判断が不安定になります。
そこでこの問題の構成では、
- 1台目のステレオパワーアンプ
- L:ツィーター
- R:スコーカー
- 同じ型番の2台目のステレオパワーアンプ
- L+RをBTL接続してウーファーをドライブ
という形を取ることで、すべての帯域を同じ型番のアンプファミリーで揃えつつ、ウーファーだけはBTLで必要な出力を確保しています。
ここで揃えたいものは、「出力」や「音圧」ではなく、アンプが音に与えるトーンの傾向=音質のキャラクターです。
- 同じ設計思想・部品構成のアンプなら、帯域が違っても歪み方や質感は似通う
- その結果、3つのユニットが「別々の音」ではなく、「ひとつのスピーカー」として感じられる
この狙いを読み取れるかどうかが、この問題のキモになります。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
出力
- BTL接続を使うことで、ウーファー側の出力余裕を増やすのは事実
- しかし問題文は「各ユニット間で(23)が無理なく揃えられる」と書いている
- ウーファーだけBTLにしている時点で、出力そのものはむしろ「揃える」というより「必要に応じて増やしている」側
- したがって、「出力」が揃うことをメリットとするのは文脈に合わない
音圧
- 音圧レベルは、
- 各ユニットの能率(dB/W/m)
- クロスオーバーの設定
- アッテネーターやゲイン設定
などで細かく追い込むものであり、「同じ型番のアンプを使う」こと自体は直接要件ではない
- むしろウーファーは低域を担当するため、大きな振幅を必要とし、他帯域より大きな出力余裕を求められる
- よって、「各ユニット間で音圧が自然と揃う」という読みは不適切
位相
- 位相特性は主に
- クロスオーバーフィルターの設計(スロープ、カットオフ周波数、フィルタータイプ)
- 物理的なユニット配置(距離、バッフル形状)
で決まる要素が大きい
- 同じ型番のアンプを使うことは、位相を「極端にずらさない」意味で悪くはないが、問題文が強調しているのはそこではない
- 「BTL接続にする/同じ型番を使う」という話から、位相よりも音色の統一を読ませる問題になっている
以上から、「出力」「音圧」「位相」はどれも完全にゼロではない要素を含むものの、この問題文の意図として最も適切なのは「音質のキャラクター」と判断できます。
実務・DTMへの応用
実務レベルでは、大規模なスタジオやPAシステムの設計で「帯域ごとに別アンプを使う」ことは日常的にあります。その際、プロの現場でも
- メーカーやシリーズをそろえる
- どうしても混在させるときは、ミッド〜ハイだけ同シリーズで揃える
といった「音質のキャラクター」を合わせる工夫がよく行われます。
DTM環境でも、たとえば
- メインモニターとサブウーファーを別メーカーにしたら、低域だけやたらモコモコして判断しづらくなった
- サブウーファーだけ妙に遅れているように感じる(アンプ/DSP処理のキャラクター差)
といった経験をすることがあります。このとき、
- 同一シリーズのサブウーファーに買い替える
- アンプやDSPをシリーズで揃える
- ルームEQやディレイ補正で「キャラクター」と「タイミング」を追い込む
といった対応をすることで、「一体感のあるモニター」が手に入ります。
試験勉強としては、
- BTL接続=出力アップだけで覚えない
- 「同型アンプでそろえる → 音質のキャラクターの統一」という視点もセットで覚える
この2点を意識しておくと、BTL絡みの別問題(出力倍率・実効運用値など)とのつながりも整理しやすくなるはずです。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
