この記事では、サウンドレコーディング技術認定試験 2025年ステップⅡ・問Ⅱ-21を扱います。テーマは「BTL(ブリッジ・タイド・ロード)接続でパワーアンプの出力が理論上どれくらい増えるのか」です。
パワーアンプまわりの問題は、電力(W)、電圧(V)、インピーダンス(Ω)の関係を式として理解しているかどうかで、正解率が大きく変わります。特にBTL接続のような「電圧は2倍だけど、電力は何倍?」というパターンは、一度きちんと整理しておくと他の問題でもそのまま応用できます。
この記事を読み終えるころには、「なぜBTL接続で4倍の出力になるのか」を自分の言葉で説明できるようになり、選択肢の「1倍/3倍/4倍/8倍」のどこでつまずきやすいのかも見抜けるようになります。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅡ 第21問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅡ 第21問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
「BTL接続で理論上得られる出力の倍率」=「4倍」
※電圧2倍→電力4倍
対話講義|BTL接続でパワーを稼ぐ②
タカミックス
先生、BTL接続って「出力が4倍になる」ってよく言われますけど、本当にそんなに増えるんですか? 選択肢を見ると「1倍・3倍・4倍・8倍」とバラバラで、どこで差がつくのかイメージが湧きません。
サウンド先生
ポイントは、BTL(ブリッジ・タイド・ロード)接続が2台のモノラル・パワーアンプをブリッジ動作させているというところなんだ。ブリッジ動作にすると、スピーカーの両端に現れる電圧が2倍になる。
タカミックス
電圧が2倍になるのはなんとなく分かります。上のアンプが「+」側、下のアンプが「−」側みたいに逆向きに振れるからですよね?
サウンド先生
そのとおり。1台のアンプで片側を駆動するときは「0V〜+V」とか「0V〜−V」みたいな片側だけの振れ方だけど、BTL接続では片方が+Vのときにもう片方が−Vになるから、スピーカー両端には「+V −(−V)=2V」と、理論上2倍の電圧がかかる。
タカミックス
なるほど、じゃあ「電圧2倍」ってことまではOKです。でも問題は「出力が何倍か」ですよね。そこが1倍でも3倍でもなく、4倍になる理由がモヤっとしてます。
サウンド先生
ここで出てくるのが、電力の式。スピーカーのインピーダンスをRとすると、電力Pは
で決まる。Rが同じなら、**電圧Vが2倍になると、電力は「2倍」ではなく「2倍の2乗=4倍」**になる。これが選択肢「4倍」が正解になる理由だね。
タカミックス
あ、電力はVに比例じゃなくてVの2乗に比例なんですね。だから電圧が2倍なら、電力は4倍。
サウンド先生
そういうこと。
タカミックス
じゃあ他の選択肢はどう見ればいいんですか?
サウンド先生
ざっくり言うと、
- 「1倍」:BTLの意味をまったく理解していないパターン
- 「3倍」:なんとなく「2乗までは行かないでしょ」と中途半端に考えたパターン
- 「8倍」:電圧と電流の両方が2倍になってしまうようなイメージで、行き過ぎなパターン
という感じだね。試験としては「電力がV²/Rで決まる」という物理の基本を押さえているかどうかを見ている。
タカミックス
なるほど……
BTL接続=「電圧2倍 → 電力4倍」と覚えておけば、選択肢を見た瞬間に「4倍」に飛びつけるわけですね。
サウンド先生
そう。大事なのは、「電圧2倍→電力4倍」というV²のイメージをセットで覚えること。これさえ頭に入っていれば、類題が出ても同じノリで解けるよ。
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここでは、答えにたどり着くまでの考え方を整理しながら、似たテーマの問題にも応用できるようにしていきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅡ 第21問の正解
BTL(Bridge Tied Load)接続では、理論上の出力は1台駆動の4倍になる。
一言まとめ
電圧が2倍になれば、同じインピーダンスに対する電力は4倍になる。
なぜその答えになるのか(メカニズム)
まずBTL(ブリッジ・タイド・ロード)接続は、2台のモノラル・パワーアンプで1本のスピーカーをはさみ込む接続方法です。片側のアンプ出力をプラス端子に、もう片側をマイナス端子に接続し、両方のアンプを逆位相で駆動します。
1台のアンプでスピーカーを駆動する場合、
- スピーカーの一端はアンプ出力
- もう一端はグランド(0V)
という構成で、スピーカー両端にかかる電圧は「0V〜±V」程度です。
一方BTL接続では、
- 上のアンプ:+V
- 下のアンプ:−V
のように逆位相で振るので、スピーカーの両端には
- 「+V −(−V)=2V」
という2倍の電圧が印加されます。
ここで、スピーカーのインピーダンスをRとすると、電力Pは
で決まるので、
となり、
つまり、電圧が2倍になると、電力は4倍になるという関係が成り立ちます。
試験がこの問題でチェックしているのは、
- 「BTL接続=電圧2倍」
- 「電力はVではなくV²に比例する」
という2点です。どちらか片方だけの理解だと、「2倍」や「3倍」「8倍」などに引っかかってしまいます。
また、実務的には「各アンプが見る負荷インピーダンス」や「最大電流・発熱・電源容量」などの制約から、“理論上”は4倍でも、実際にはそこまで出せないことも多い、という注意点も押さえておくと理解が深まります。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
1 倍
BTL接続で電圧が2倍になるという前提を無視している選択肢です。電力がV²/Rに比例することを考えれば、電圧2倍で同じ負荷なら、出力が1倍のままということはあり得ません。BTL接続の意味を理解していないときに選びがちな誤答です。
3 倍
「2倍と4倍の間くらいかな?」という感覚的な中間値で選びがちな数字ですが、物理的な根拠がありません。電力がVに比例すると勘違いして「1.5倍くらいかな?」といった曖昧なイメージで選んでしまうと、この3倍を選ぶ可能性が高くなります。試験的には「V²の関係」を意識していない受験生をふるい落とすための数字です。
8 倍
こちらは逆に、「電圧も電流も2倍になるから、2×2×2で8倍!」のような行き過ぎたイメージから来る誤答です。実際には負荷インピーダンスやアンプの電源電圧・最大電流・発熱などの制約があるため、そんなに都合よく電流まで2倍にはできません。試験の文脈では「理論上得られる出力」と言っているので、素直に電圧2倍→電力4倍と考えるのが正解です。
実務・DTMへの応用
BTL接続の考え方は、PAシステムやパワーアンプ設計でよく出てきます。例えば、
- サブウーファー用にパワーアンプをBTL接続して、同じアンプ2台でより大きな出力を得る
- アンプの仕様書に「BTLモード時 ○○W(8Ω)」と書かれている場合、電圧が2倍になる前提で定格が決まっている
といった場面です。
DTMで普段使うアクティブ・モニタースピーカーの内部アンプも、機種によってはBTL構成を採用していることがあります。ユーザー側は意識しないことが多いですが、
- 出力が4倍になればそのぶんスピーカーへの負担も増える
- 対応インピーダンス以下のスピーカーは絶対につながない
といった注意点につながる考え方です。
サウンドレコーディング試験では、今回のような「BTL接続と出力の倍率」だけでなく、
- スピーカーのインピーダンスと出力の関係
- パワーアンプの定格と実効出力(RMS)
- ブリッジ接続時の注意事項(最小負荷インピーダンスなど)
といった周辺テーマもよく絡んできます。「電力=V²/R」という基本式を軸に、関連する問題をまとめて整理しておくと、実務でも試験でも役に立つはずです。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
