この記事では、サウンドレコーディング技術認定試験 2025年ステップⅡ・問Ⅱ-20を扱います。
テーマは「BTL(Bridge Tied Load)接続で、2台のモノラル・パワーアンプをどうやって“逆位相”で動かすのか」です。
BTL接続は、スピーカーを挟んで上下2つのアンプが“正反対の方向に振れる”ことで、大きな出力を取り出すための重要な回路構成です。その前提として、「下側のアンプの入力信号をどうやって反転させているのか」をイメージできているかどうかが、この問題の本質です。
この記事を読み終えるころには、BTL接続で位相を反転させる役割の回路がハッキリと言えるようになり、次の問Ⅱ-21(出力が何倍になるか)とあわせて、BTL関連の問題に強くなれるはずです。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅡ 第20問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅡ 第20問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
「BTL接続で下側アンプに挟む回路」=「位相反転回路」
※下側だけ反転させて“逆位相ブリッジ”
対話講義|BTL接続でパワーを稼ぐ①
タカミックス
先生、BTL接続って「2台のモノラル・パワーアンプを使ってパワーを稼ぐ」っていうのは分かるんですけど、問題文にある
「上側はそのまま入力、下側は何かを通して逆位相にする」
っていうところがモヤっとしてまして……。
サウンド先生
いいところに目をつけてるね。BTLの“キモ”は、スピーカーの両端に逆位相の信号を与えることなんだ。片方の端子がプラスに振れたとき、もう片方はマイナスに振れる──この状態をどうやって作るか、という話になる。
タカミックス
つまり、「下側のアンプの入力だけ何かして、上と逆向きに振らせる」ってことですよね?
選択肢を見ると、トランス、コンデンサー、位相反転回路、同位相回路……うーん、どれも回路っぽい名前なので迷います。
サウンド先生
まず整理しよう。問題文はこう言っているよね。
上側のアンプにはそのまま信号を入力し、下側のアンプには(20)を通して信号を入れて上下の出力を逆位相にします。
ここでやりたいのは「逆位相にする」こと。つまり、入力信号のプラスとマイナスをひっくり返すことだ。
タカミックス
となると、「同位相回路」は逆ですね。
“同位相”って書いてある時点で「逆にはなってないだろ」とツッコめます。
サウンド先生
その通り。じゃあ、「コンデンサー」は何をする部品?
タカミックス
DCカットとか、カップリングとか、周波数によってインピーダンスが変わるとか……ですかね。
“位相が多少回る”イメージはありますけど、「きっちり180度反転させるためのもの」というより、周波数特性とセットの話っぽいです。
サウンド先生
そうそう。コンデンサーは周波数によって位相をずらすことはあっても、ここで言っている「上下を逆相(180度)にしてブリッジ駆動する」ためのメイン機能とは言えない。
じゃあトランスは?
タカミックス
トランスも巻き方しだいで位相が反転したりしますよね。でも、問題の言い回しからすると「BTL接続用の一般的な回路ブロックの名前」を聞かれている気がします。トランスって“部品名”であって、“反転専用回路”の名前ではない…。
サウンド先生
その感覚でOK。教科書的にも、BTLで上下アンプの出力を逆相にするために使うのは、**位相反転回路(インバーター)**と教えるのが普通だね。
つまり、この問題で問われている答えは──?
タカミックス
「位相反転回路」ですね。
上側アンプはそのまま入力、下側アンプには位相反転回路を通した信号を入れて、スピーカーを“両端から”逆向きにドライブする、と。
サウンド先生
ばっちり。次の問Ⅱ-21の「出力が理論上何倍になるか」という問題も、この「上下が逆位相で振れている」という前提を押さえておくと、スッと理解できるようになるよ。
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここでは、答えにたどり着くまでの考え方を整理しながら、似たテーマの問題にも応用できるようにしていきましょう。
結論の整理
2025年 ステップⅡ 第20問の正解
位相反転回路
一言まとめ
BTL接続では、下側アンプの入力に位相反転回路を挟んで上下の出力を逆位相にする
なぜその答えになるのか(メカニズム)
BTL(Bridge Tied Load)接続は、1台のアンプでスピーカーを「片側だけ」駆動するのではなく、2台のアンプの出力端子の間にスピーカーを挟んで駆動する構成です。
- 上側アンプの出力:+V 方向に振れる
- 下側アンプの出力:同じタイミングで -V 方向に振れる
というように、上下が正反対の極性(逆位相)で動くことで、スピーカー両端にかかる電圧差は「ほぼ2V」になります。
(この結果、「電圧2倍 → 電力4倍」という話が、次の問Ⅱ-21のテーマになります。)
逆位相状態を作るために必要なのが、**位相反転回路(インバーター)**です。
- 上側アンプ:入力信号をそのまま受ける(非反転)
- 下側アンプ:入力信号を位相反転回路に通してから受ける(反転)
これにより、下側アンプは上側アンプと逆極性で出力するようになり、スピーカー両端には「上下で正反対に振れる波形」がかかります。
イメージとしては
- 元の信号:上側アンプにそのまま
- その“裏返し版”:下側アンプに入力
という構図です。DTMでいうところの「波形を上下反転して逆位相のトラックを作る」のを、アナログ回路でやっているイメージを持つと分かりやすいでしょう。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
トランス
トランス(変圧器)は、巻き方によって位相が反転して見える場合もありますが、教科書的には
- 電圧の昇圧・降圧
- インピーダンスマッチング
- 絶縁
といった用途で説明されることが多く、「BTL接続のための逆位相生成回路」として直接名指しされることは少ないです。
この問題は「BTL接続で上下を逆位相にする回路ブロック名」を聞いているので、トランスは正解としては不適切です。
コンデンサー
コンデンサーは
- DC成分をカットする(カップリング)
- フィルタ回路を構成する
- 周波数によってインピーダンスや位相を変える
といった働きはしますが、ここで問われているのは「きちんと 180度反転させて逆位相にするための回路名」です。
コンデンサー単体はあくまで“部品”であって、「BTL接続の逆位相を作るための代表的な回路ブロック名」とは言えません。
位相反転回路
位相反転回路(インバーター)は、入力信号の極性をきっちり反転させるための回路です。
オペアンプの反転増幅回路のように、入力をマイナス端子に入れて出力を反転させる構成は、「位相反転回路」の代表例です。
この回路を下側アンプの前段に入れることで、「上側=元の信号」「下側=反転された信号」という関係が成立し、BTLの条件である**ブリッジ駆動(逆位相駆動)**が実現します。
したがって、この選択肢が正解となります。
同位相回路
「同位相回路」という表現自体が、一般的なオーディオ回路の名称としては不自然ですし、問題文の「上下の出力を逆位相にします」という目的とも真っ向から矛盾します。
名前の時点で「逆位相の条件を満たしていない」と判断できるため、消去法でも真っ先に外せる選択肢です。
実務・DTMへの応用
BTL接続や位相反転の考え方は、DTMや実務の現場でも意外と身近なところで関係してきます。
- パワーアンプや小型PA機器の仕様を読むとき
「BTL出力:○○W」と書いてある場合、「あ、これは内部で位相反転回路を使って、2つのパワー段を逆位相でブリッジしているんだな」とイメージできるようになります。
その上で、スピーカーのインピーダンス指定(BTL時は4Ω以上など)がなぜ厳しく書かれるのかも、理解しやすくなります。
- DTMでの“逆相トリック”とのつながり
ミックスの現場では、ベースを2トラックに分けて片方を歪ませ、もう片方をクリーンにしてブレンドしたり、センターキャンセルでボーカルだけ抜いたりと、位相操作をよく使います。
そのとき、「波形を反転させる=位相反転回路でやっていることと同じ」という意識があると、機材のマニュアルに出てくる“INV(Invert)”ボタンなどの意味もスッと入ってきます。
- この問題と問Ⅱ-21のセット学習
実務では「BTLで出力4倍」という言い回しだけが独り歩きしがちですが、本来その裏には- 下側アンプの入力を位相反転回路で反転(今回の問Ⅱ-20)上下の出力が逆位相で振れるので、スピーカー両端の電圧差が2倍になり、結果として電力は4倍(問Ⅱ-21)
過去問でもこのように連続した問題として出されることがあるので、「位相反転回路」と「出力4倍」のセットで覚えておくと、得点源になります。
過去問出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
