この記事では、サウンドレコーディング技術認定試験 2025年ステップⅡ・問Ⅱ-16を扱います。
テーマは「ディケイ・タイム(Decay Time)だけでは作りきれない“広い空間の距離感”を、プレ・ディレイ(Pre Delay)でどうコントロールするか」です。
同じ残響時間でも、「すぐにリバーブが立ち上がる音」と「少し間をおいてから広がる音」とでは、受け取る“距離感”がまったく変わります。この違いを耳でイメージできるようになると、試験問題だけでなく、実際のDTMやミックスで「ホールっぽさ」「大聖堂っぽさ」を狙って作れるようになります。
それでは問題を解いてみましょう!
目次
過去問|2025年 ステップⅡ 第16問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2025年 ステップⅡ 第16問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
この試験は「定番テーマ」が形を変えて何度も出題される傾向が強く、過去問を押さえることが合格への最短ルートと言えます。
暗記用ワンフレーズ
ホールや大聖堂レベルの広い空間を作るときDecayとセットで伸ばすパラメータ=プレ・ディレイ(Pre Delay)
※原音から残響が立ち上がるまでの“間”
対話講義(Q&A)|Pre Delayで「距離感」を作る
タカミックス
先生、この問題って「実際に広い空間の印象を作るには、Decay Time を長くするだけじゃ足りないよ」って言ってますよね。
ディケイ・タイムを伸ばしたら十分ホールっぽくなる気がするんですけど…まだ何か足りないんですか?
サウンド先生
いいところに気づいたね。ディケイ・タイムを伸ばすと「いつまでも響いている感じ」は出るんだけど、「遠くの大きなホールにいる感じ」までは作り切れないんだ。
そこで効いてくるのがプレ・ディレイ(Pre Delay)なんだよ。
タカミックス
プレ・ディレイって、「原音が鳴ってからリバーブが出てくるまでの時間」でしたっけ?
サウンド先生
その通り。プレ・ディレイを長めにすると、こういうイメージになる。
- まずドライ音が「バンッ」と目の前で鳴る
- 少し“間”があってから、「どわーん」とホール全体が鳴り出す
この「間」が、人間の耳には「音源がかなり遠くにある」「空間が大きい」として知覚されやすいんだ。
タカミックス
じゃあ、選択肢を順番に見ていくと…
Early Reflection
Pre Delay
Decay Time
Room Size
この中で、「原音が入力されてから残響が立ち上がるまでの時間」を表しているのがプレ・ディレイなんですね。
サウンド先生
そう。アーリー・リフレクション(Early Reflection)は「最初に返ってくる反射音」そのものの話で、時間というより「どのくらいのレベルでどんな位置から返ってくるか」のパラメータとして扱われることが多い。
ディケイ・タイムは、タカミックス君も知っている通り「リバーブがどれくらいの時間で消えていくか」。この問題文では、すでに「Decay Time を長く設定するだけでなく」と書いてあるから、ここでは正解にはなりにくい。
タカミックス
ルーム・サイズ(Room Size)は「空間の大きさ」だから、これは広さ・密度っぽい話ですよね?
サウンド先生
そうだね。ルーム・サイズを大きくすると、反射までの経路が長くなったり、アーリー・リフレクションの間隔や密度が変わったりして「空間の広さ感」に関わってくる。
ただ、今回の問題文が聞いているのは「原音が入力されてから残響が立ち上がるまでの時間」で、これはまさにプレ・ディレイの定義そのもの。
タカミックス
なるほど。「広い空間=Decay Timeを伸ばす」まではわかってたけど、「ホールの“距離感”はPre Delayで作る」っていう一歩先の話なんですね。
サウンド先生
その理解でOK。
この問題の本質は「広い空間を作るとき、ディケイ・タイムとプレ・ディレイをセットでイメージできるかどうか」なんだ。プレ・ディレイを意識できるようになると、リバーブ設定の解像度が一段上がるよ。
詳しい解説
一問ずつ正解を覚えることも大事ですが、「なぜその選択肢を選ぶのか」という筋道を理解しておくと、別パターンの問題にも強くなります。
ここでは、答えにたどり着くまでの考え方を整理しながら、似たテーマの問題にも応用できるようにしていきましょう。
Pre Delayとは何か
プレ・ディレイは、「ドライ音が鳴ってから、リバーブ成分が聞こえ始めるまでの時間」を指します。
イメージとしては、次のような波形です。
- 時刻0秒:スネアが「ドン」と鳴る(ドライ音)
- 時刻0.03秒:ようやく残響が「ふわっ」と立ち上がり始める
この0.03秒(30ms)がプレ・ディレイに相当します。
人間の耳は、「直接音」と「最初の反射・残響」がどれくらい時間差を持って届くかで“距離感”を判断しています。時間差が短いと「近い」「小さい部屋」、時間差が長いと「遠い」「大きな空間」と感じやすくなります。
なぜDecay Timeだけでは足りないのか
ディケイ・タイムは、「リバーブがどのくらいの時間をかけて消えていくか」を決めるパラメータです。
ディケイ・タイムを長くすると、「響きが長く尾を引く」「音がなかなか消えない」という印象になりますが、以下のような限界があります。
- プレ・ディレイがゼロに近いと、音が鳴った瞬間からリバーブがべったり乗る
- 結果として、「近いところで鳴ってるのに、やたらと長く響いている」ような、不自然なサウンドになりやすい
ホールや大聖堂のような空間では、
- まず直接音が届く
- 壁・天井・客席などに反射して、少し遅れて残響が立ち上がる
という時間構造になっています。
その「少し遅れて」の部分を、プレ・ディレイで再現している、と捉えると理解しやすくなります。
「広い空間の印象」をどう作るか
広い空間の印象を作るときは、ざっくり次の組み合わせで考えると筋が通ります。
- ディケイ・タイム:どれくらい長く響くか(尾の長さ)
- プレ・ディレイ:どれくらい“間”を空けてから響きが始まるか(距離感)
同じ2.5秒のディケイ・タイムでも、
- プレ・ディレイ 0ms → 音を出した瞬間からモワッと響き始める
- プレ・ディレイ 30〜40ms → 直音がはっきり聞こえたあと、「少ししてから」ホール全体が鳴り出す
後者の方が、明らかに「大きな空間」「少し離れた場所で鳴っている」印象になります。
他の選択肢が誤り(または優先度が低い)理由
Early Reflection(アーリー・リフレクション)
アーリー・リフレクションは、最初期の反射音そのものを指します。
パラメータとしては、
- レベル(どれくらいの音量で返ってくるか)
- パン/位置
- 反射パターン
などを調整することが多く、「原音が入力されてから残響が立ち上がるまでの時間」という、プレ・ディレイ固有の定義とは異なります。
「間の長さ」そのものではないので、この問題文の定義には合致しません。
Decay Time(ディケイ・タイム)
ディケイ・タイムは、「リバーブがどれくらいの時間をかけて減衰するか」を表すパラメータです。
問題文にはすでに「Decay Time を長く設定するだけでなく」と書かれており、「それ以外に必要なパラメータは何か?」という問い方になっています。
したがって、選択肢として挙がっていても、文脈上ここを選ぶのは不自然です。
Room Size(ルーム・サイズ)
ルーム・サイズは、仮想空間の大きさや、反射音の密度感に関わるパラメータです。
広い空間の印象には確かに関係しますが、試験がここでピンポイントに問いたいのは、
- 原音
- 一定の“間”
- その後に立ち上がる残響
という「時間構造」です。
この構造を直接コントロールするのはプレ・ディレイであり、ルーム・サイズはあくまで補助的な空間感のパラメータに留まります。
結論の整理
2025年 ステップⅡ 第16問の正解
Pre Delay
一言まとめ
広い空間の印象を作るときは、ディケイ・タイムだけでなく、原音から残響が立ち上がるまでの“間”=プレ・ディレイを長めに取ることで、遠く離れた大きなホールや大聖堂にいる感覚を強く演出できる。
実務・DTMへの応用
DTMやミックスでホール系リバーブを使うとき、プレ・ディレイを「とりあえず0ms」のままにしていると、音が前に出にくく、ただ「モワッと長いリバーブ」が付いただけの状態になりがちです。
例えば、スネアやボーカルで広い空間を狙う場合は、次のような考え方が現実的です。
- 小さめのホール感:プレ・ディレイ 10〜20ms 前後
- 大きめホール〜大聖堂感:プレ・ディレイ 25〜40ms 前後
プレ・ディレイを少し長めにすると、直音がくっきり聞こえたあとにリバーブが広がるので、
- 音の輪郭は保ちつつ
- 空間だけを大きく、遠くに感じさせる
というバランスを取りやすくなります。
逆に、プレ・ディレイを長くしすぎると、
- ドライ音とリバーブが完全に別物に聞こえてしまう
- 「あとから謎の反響がついてくる」ような不自然なサウンドになる
といった失敗も起きます。
試験対策としては、「広い空間=Decay Timeとプレ・ディレイをセットで考える」という発想を持っておけば、同じテーマの別問題(問Ⅱ-13〜15あたりのリバーブ問題)にも横断的に対応しやすくなります。
課題出題年・関連リンク
出題年度:現在調査中(後日追記予定)
