音楽用語は、意味だけを見ると何となく分かった気になりやすいものです。ですが、実際には似た雰囲気の言葉が多く、音を切るのか、弓で弾くのか、指ではじくのか、滑らかに移るのかを区別できないと混乱しやすくなります。
今回のテーマも、言葉の印象だけで選ぶと迷いやすい用語です。特に、短く切る奏法や、弓と指の違いを表す語と混同すると、正解から外れやすくなります。まずはポルタメントが何をする奏法なのかを、感覚と意味の両方から整理することが大切です。
それでは、まず問題を解いてみましょう
目次
過去問|2024年ステップⅣ 第2問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2024年 ステップⅣ 第2問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
このテーマは定番なので、考え方ごと押さえておくと応用が利きます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
ポルタメント=ある音から別の音へ滑らかに移動する奏法
※音をなめらかにつなぐ
本回の学習ゴール
・ポルタメントがどのような奏法か説明できる
・弓で弾く奏法や指ではじく奏法、音を短く切る奏法と区別できる
・音の移り方を表す音楽用語として理解できる
対話講義(Q&A)|ポルタメントとは何か
タカミックス
ポルタメントって、名前だけ聞くと意味が全然分からないです。何をする奏法なんですか。
サウンド先生
まず結論から言うと、ある音から別の音へ、滑らかに移動するように結ぶ奏法です。
タカミックス
滑らかに移動するというのは、音を一回切って次の音を出すのとは違うんですね。
サウンド先生
その通りです。音を切って並べるのではなく、前の音から次の音へつながりを感じさせながら移っていくのがポイントです。
タカミックス
では、弓で弾くとか、指ではじくとかとは別の話なんですか。
サウンド先生
はい。それらは主にどう発音するかの違いです。一方でポルタメントは、音から音へどう移るかを表す言葉です。ここを分けて考えると整理しやすくなります。
タカミックス
なるほど。発音の方法ではなく、音の移行のしかたを表しているわけですね。
サウンド先生
その理解で大丈夫です。つまり、ポルタメントは「ある音から別の音へ、なめらかにつながるように移る奏法」と考えれば答えにたどり着けます。
詳しい解説|なぜその答えになるのか
結論から言うと、ポルタメント(Portamento)は、ある音から別の音へ滑らかに移動するように結ぶ奏法です。
この問題では、選択肢の中で「音の移り方」を説明しているものを選べば正解にたどり着けます。ポルタメントは、弓を使うか指ではじくかといった発音方法ではなく、前の音から次の音へどうつなぐかを表す用語です。
ここで大事なのは、「滑らかに移動する」という部分です。たとえば、二つの音をはっきり区切って順番に出すのではなく、一つ目の音から二つ目の音へ連続感を持たせて移っていくイメージです。だから、短く切る奏法とは性質が正反対ですし、弓や指のような発音手段とも分類が違います。
問題文の正解選択肢にある「歩き方」「身のこなし」という原意も、理解の助けになります。つまりポルタメントは、単に音を出すだけでなく、次の音へどのように運ぶかに重点がある言葉です。音そのものよりも、音と音の間の移り方に注目した用語だと考えると整理しやすくなります。
初心者が引っかかりやすいのは、「音楽用語は全部、弾き方の種類なのではないか」とまとめて考えてしまうことです。ですが実際には、音楽用語にはいくつかの層があります。
一つは、弓で弾く、指ではじくのような発音方法。
もう一つは、短く切る、なめらかにつなぐのような音の処理やつなぎ方です。
ポルタメントは後者に入ります。
少し補足すると、似た印象の語としてグリッサンド(Glissando)が挙がることがあります。どちらも滑るような動きを連想させますが、ポルタメントは「音をなめらかに運ぶ感覚」に重心があり、文脈によってはより表情的なつながりとして扱われます。まずは細かい差異を詰めるよりも、「ポルタメントは音の移行のしかたを示す語」と押さえるのが先です。
他の選択肢が誤りな理由
- 本来は「つまむ」「つねる」などの意味を持つ語で、擦弦楽器を弓ではなく指で弾いて発音する奏法を指す。右手で弓を使って音を出しながら、左手で別の弦を指ではじく奏法もある。
これはピツィカート(Pizzicato)の説明です。弦を指ではじいて発音する奏法であり、音から音へ滑らかに移動する意味ではありません。
- 指ではじく奏法に対して、弓で演奏することを示したいときに使う語である。語そのものにも「弓」という意味がある。
これはアルコ(Arco)の説明です。ピツィカートのあとに「弓に戻る」ことを示す場面で使われます。これも発音方法を示す語で、音の移行のしかたを表すものではありません。
- 音を短く切り、次の音とのあいだに空間を作る演奏技法である。器楽だけでなく歌にも用いられる。本来の意味は「切り離された」「分離した」である。
これはスタッカート(Staccato)の説明です。ポルタメントがなめらかにつなぐ方向の語であるのに対し、こちらは音を切って分離させる方向の語です。
現場と作品理解へのつながり
ポルタメントを理解すると、演奏のニュアンスを言葉で捉えやすくなります。たとえば歌や弦楽器の演奏を聴いたときに、ただ音程が変わっているのではなく、どう移っているかに耳が向くようになります。これは表現の聴き取りに直結します。
また、同じ二つの音でも、はっきり切って出せば印象は硬くなり、滑らかに運べば感情の流れが強くなります。つまり、ポルタメントは単なる用語暗記ではなく、演奏の表情を理解する入り口になります。
録音物を聴くときも、この視点があると、歌手や奏者がどの場面で音をまっすぐ当て、どの場面で少し滑らかに運んでいるかに気づきやすくなります。そこから、ジャンルごとの歌い回しや、時代ごとの演奏スタイルの違いも見えやすくなります。
制作やディレクションの現場でも、「そこは切って」「そこは滑らかに持っていって」といった指示は珍しくありません。ポルタメントの理解は、楽譜の読解だけでなく、表現意図の共有にもつながる基礎知識です。
