全体の音の大きさは分かっていても、それを帯域ごとに見たらどうなるのかとなると、急に手が止まりやすいです。特に、全体レベルとバンドごとのレベルを同じ感覚で扱ってしまうと、計算の入口でつまずきます。
このテーマで大事なのは、デシベルをそのまま本数で割るのではない、という点です。ここを取り違えると、見た目はそれっぽくても答えにたどり着けません。
今回は、全体のレベルを複数の帯域に均等配分して考えるとき、1本あたりがどれくらいになるのかを整理します。
それでは、まず問題を解いてみましょう。
目次
過去問|2024年ステップⅢ 第25問
今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2024年 ステップⅢ 第25問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
このテーマは定番なので、考え方ごと押さえておくと応用が利きます。
問題=答え|暗記用ワンフレーズ
31本に等分した1バンドあたりのレベル=71dB
※全体86dBより約15dB低い
本回の学習ゴール
・オールパスレベルとバンドレベルの関係を説明できる
・31本に等分したときの最短計算を再現できる
・dBをそのまま本数で割らない理由を説明できる
対話講義(Q&A)|1/3オクターブバンドレベルとは何か
タカミックス
先生、今回は1/3オクターブバンドレベルの問題ですね。
前回、オクターブバンドやオールパスレベルについては学びましたが、まず確認してもいいですか?
サウンド先生
もちろん。
まずオクターブバンドは、周波数をオクターブ単位で区切った帯域のことだったね。
タカミックス
はい。
音楽でいう1オクターブ上は周波数が2倍になるので、音響でも周波数をその関係で区切って見る、という話でした。
サウンド先生
その通り。
そして、今回出てくる1/3オクターブバンドは、1オクターブをさらに3つに分けた帯域だったね。
タカミックス
前回より細かく周波数帯域を見る方法、という理解でよさそうですね。
あと、「バンドレベル」という言葉も出ていますが、これはオクターブバンドや1/3オクターブバンドと結びついた言葉として考えればいいですか?
サウンド先生
そう考えていい。
バンドレベルは、特定の周波数帯域、つまりバンドごとに含まれる音のレベルのことだよ。
タカミックス
つまり、1/3オクターブバンドレベルなら、1/3オクターブごとに分けた各帯域のレベル、ということですね。
サウンド先生
その通り。
この問題では、20Hz~20kHzを31本の1/3オクターブバンドに分けて、それぞれの帯域に含まれるレベルを考えている。
タカミックス
では、オールパスレベルも確認したいです。
サウンド先生
オールパスレベルは、特定の帯域だけに分けず、対象となる周波数範囲全体を通した合計レベルのことだね。
今回なら、20Hz~20kHz全体をまとめたレベルが86dBということになる。
タカミックス
つまり、オールパスレベル86dBは全体のレベル。
1/3オクターブバンドレベルは、31本に分けた各帯域のレベル。
そう整理すればよいですか?
サウンド先生
それでいい。
ただし今回のポイントは、31本の各バンドに含まれるエネルギーが等しいと仮定しているところだね。
タカミックス
各バンドのエネルギーが等しいということは、全体のエネルギーを31本で均等に分ける、ということですね。
サウンド先生
そう。
ただし、ここで86dBを31で割ってはいけない。
タカミックス
dBは普通の数値のように割り算できない、という話ですね。
サウンド先生
その通り。
dBはエネルギーの比を対数で表した値だから、エネルギーを31等分する場合は、対数の形で考える必要がある。
タカミックス
では、1バンドあたりのレベルはどう求めますか?
サウンド先生
31本の等しいエネルギーを合計すると、1本分よりも10log10 31だけレベルが大きくなる。
逆に、全体の86dBから1本分を求めるなら、86dBから10log10 31を引けばいい。
タカミックス
10log10 31は約14.9dB。
なので、86dB−14.9dB=約71.1dBですね。
サウンド先生
そう。
したがって、1バンドあたりのレベルはおよそ71dBになる。
タカミックス
なるほど。
この問題では「1/3オクターブバンドが31本」「各バンドのエネルギーが等しい」「オールパスレベルが86dB」という条件を見ればいいですね。
サウンド先生
そこが判断ポイントだね。
この3つがそろったら、全体レベルから10log10 本数を引く問題だと考えればいい。
詳しい解説|なぜその答えになるのか
結論から言うと、正解は71dBです。
最短の解き方は、全体レベルから31本に分けたときのレベル差を引くことです。
全体レベル=各バンドのレベル+10log₁₀(31)
したがって、
各バンドのレベル=86−10log₁₀(31)
となります。
ここで、
10log₁₀(31)≒14.9dB
なので、
86−14.9≒71.1dB
です。
したがって、選択肢では71dBが正解になります。
この問題の芯は、dBをそのまま31で割らないことです。
デシベルは比を対数で表した値なので、普通の数量のように単純平均では扱えません。今回やっているのは、「全体のエネルギーが31本の帯域に等しく分かれたとき、1本あたりは全体より何dB低くなるか」を求める計算です。
ここで、オールパスレベルとバンドレベルの違いも整理しておきます。
オールパスレベルは、すべての帯域をまとめた全体のレベルです。
それに対してバンドレベルは、各帯域ごとのレベルです。
したがって、全体を複数の帯域に分けるなら、1本あたりのレベルは全体より低くなるのが自然です。
暗算のコツとしては、31を32と近似して考える方法があります。
32=2⁵なので、
10log₁₀(32)≒15dB
と見てよく、
86−15=71dB前後
とすぐに当たりをつけられます。試験本番では、この近似がかなり役立ちます。
初心者がやりがちなミスは、86を31でそのまま割ってしまうことです。
でもそれをやると、dBという対数値の性質を無視してしまいます。
このタイプの問題では、「何本に分けるか」から**10log₁₀(N)**を引く、と覚えておく方が実戦的です。
他の選択肢が誤りな理由
- 68dB
86dBから18dB下がった値です。31本に等分したときの差としては下がりすぎです。
- 74dB
86dBから12dBしか下がっていません。31本に等分するなら、もう少し大きく下がる必要があります。
- 86dB
これは全体レベルそのものです。全体を31本に分けた1本あたりのレベルが、全体と同じになることはありません。
実務・DTMへの応用
実務では、全体のレベルだけ見ていても、どの帯域にどれだけエネルギーが分布しているかは分かりません。帯域ごとに見たときのレベルという考え方を持っていると、「全体として大きい音」なのか、「特定の帯域だけが強い音」なのかを区別しやすくなります。
DTMでも同じです。スペクトラム表示やアナライザーを見るとき、全体のラウドさと帯域ごとの強さは別物です。たとえばミックスで低域が出すぎているのか、中域が薄いのかを判断するとき、全体レベルだけ見ても答えは出ません。
この問題の考え方を押さえておくと、「全体のdB」と「帯域ごとのdB」を同じ感覚で扱わずに済みます。
また、今回のような計算感覚は、イコライザーで一部帯域を持ち上げたり削ったりしたときの見え方を理解する助けにもなります。数値をただ眺めるだけではなく、「これは全体の話なのか、帯域の話なのか」を切り分けて考えられるようになるのが大きいです。
結論の整理
2024年 ステップⅢ 第25問の正解
71dB
一言まとめ
31本に等分した1バンドあたりのレベルは全体86dBより約15dB低い
