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デジタル音声の圧縮と伝送量⑤:マスキング効果を使った音声圧縮の考え方|2024年過去問解説 ステップⅢ-21

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前回は、ロッシー圧縮が「元の信号を完全な形では復元できない圧縮方式」であることを整理しました。今回はその続きとして、では実際に何を手がかりに音声情報を減らしているのか、その代表的な考え方を押さえる回です。

このテーマで大事なのは、「単に音を雑に削っている」のではない、という点です。人間の耳がどう聞こえるかという性質を利用して、聞こえにくくなっている成分を見つけているわけです。

ここを理解すると、ロッシー圧縮がなぜ高い圧縮率を実現しやすいのかも見えやすくなります。それでは、まず問題を解いてみましょう。

過去問|2024年ステップⅢ 第21問

今回の問題は、サウンドレコーディング技術認定試験【2024年 ステップⅢ 第21問】をベースに、学習用として一部アレンジして出題しています。
このテーマは定番なので、考え方ごと押さえておくと応用が利きます。

問Ⅲ-21:音声のロッシー圧縮では、人間の聴覚特性を利用して、ほかの音に隠れて聞こえにくくなった成分を削除することがあります。 このような現象を(21)効果という。 (21)に入る適切な語句を答えなさい。

問題=答え|暗記用ワンフレーズ

ほかの音に隠れて聞こえにくくなる現象=マスキング
※強い音が弱い音を隠す

本回の学習ゴール

・マスキングを一言で定義できる
・ロッシー圧縮で使われる理由を説明できる
・単なる音量差ではなく、聴覚上の隠れ方だと理解できる

対話講義(Q&A)|マスキング効果とは何か

タカミックス
前回、ロッシー圧縮では人が聞き取りにくい成分を削る、という話が出ましたよね。今回の問題は、その「ほかの音に隠れて聞こえにくくなる現象」の名前を答える感じですか?

サウンド先生
その通りです。今回は、強い音があることで別の音が聞こえにくくなる現象を整理しましょう。この現象をマスキング(Masking)と呼びます。

タカミックス
なるほど。「隠す」という感じですね。

サウンド先生
はい。たとえば大きな音の近くに小さな音があると、小さな音のほうが耳に届いていても、実際にはかなり分かりにくくなることがあります。これがマスキングです。

タカミックス
ということは、音として存在していても、聞こえにくいなら圧縮で削る候補になりやすいわけですね。

サウンド先生
そうです。ロッシー圧縮では、こうした聴覚上の性質を利用して、目立ちにくい成分を減らしてデータ量を小さくします。

タカミックス
単純に「小さい音だから消す」というより、「強い音に隠れて聞き取りにくいから削る」という考え方なんですね。

サウンド先生
その理解で大丈夫です。つまりこう考えれば答えにたどり着けます。

詳しい解説|なぜその答えになるのか

結論から言うと、ほかの音に隠れて聞こえにくくなる現象はマスキングです。

まず最短で整理すると、

  • 強い音がある
  • その近くの弱い音が聞こえにくくなる
  • この現象をマスキングという

という流れです。

ここで大事なのは、マスキングが「音が物理的に消える現象」ではないことです。音そのものは存在していても、人間の耳には別の音に隠れて知覚しにくくなる、という聴覚上の現象です。

たとえば、ある帯域で強い音が鳴っていると、その近くの帯域にある弱い音は聞き取りにくくなります。すると、その弱い音の情報を多少減らしても、聴感上は大きな違いが出にくい場合があります。ロッシー圧縮は、この性質を利用してデータ量を削減します。

つまり、ロッシー圧縮の発想は「全部をそのまま保存する」のではなく、「人が聞き取りにくい部分は減らしても全体として成り立ちやすい」という点にあります。その代表的な根拠の一つがマスキングです。

ここで混同しやすいのは、「単に音量が小さい音」と「ほかの音に隠れて聞こえにくい音」は同じではない、という点です。小さい音でも単独なら聞こえることがあります。しかし強い音と同時に鳴ると、急に目立たなくなることがあります。この“隠れ方”が重要です。

中級者向けに補足すると、マスキングには周波数方向で起こるものだけでなく、時間方向で考えるものもあります。つまり、ある強い音の直前や直後で別の音が知覚しにくくなるケースもあります。音声圧縮では、こうした聴覚特性を総合的に利用して情報量を減らしていきます。

他の選択肢が誤りな理由

  • ダイエット
    音声圧縮や聴覚現象の正式な用語ではありません。意味としても不適切です。
  • メタボ
    これも音響や信号処理の用語ではありません。問題文の内容とは無関係です。
  • マスター
    音楽制作では別の意味を持つ言葉ですが、強い音に隠れて聞こえにくくなる現象の名称ではありません。

実務・DTMへの応用

この知識は、圧縮音源の考え方を理解するうえで役立つだけでなく、ミックスにもつながります。たとえば、似た帯域の音が重なると、一方が他方を隠してしまい、思ったより聞こえなくなることがあります。これも、実感としてはマスキングに近い現象として捉えると理解しやすいです。

ミックスで「音は入っているのに存在感が出ない」と感じるとき、単純にフェーダーを上げるだけでは解決しないことがあります。帯域の整理やアレンジの見直しが必要になるのは、音同士がぶつかって隠れ合っているからです。

初心者がやりがちなのは、聞こえない音があるとすぐ音量不足だと判断してしまうことです。しかし実際には、音量よりも先に「別の音に隠れていないか」を見るべき場面が多くあります。
この視点があると、EQの使い方やパート配置の考え方もかなり変わってきます。

また、この回は前回のロッシー圧縮の理解を一段深める内容でもあります。ロッシー圧縮は、ただ乱暴に削っているのではなく、人間の聴覚特性に基づいて削っている。その代表例がマスキングだと押さえておくと、圧縮方式の仕組みがぐっと理解しやすくなります。

結論の整理

2024年 ステップⅢ 第21問の正解
マスキング

一言まとめ
強い音に隠れて別の音が聞こえにくくなる現象がマスキング

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